海の地質学

1998年度前期期末試験問題


問.諸君らは現在,水分子のひとつとなって能登半島北方の日本海々上(北緯38度,東経137度)に浮かんでいる.しかし,今から約8千年前*にはスバールバル諸島北方(北緯85度,東経20度)の北極海表層にいた.それでは,この8千年間に諸君らはどのような旅をしてきたことになるか? その旅の過程で目にしたであろう沿岸の風景や海底地形.体験したであろう水や堆積物のさまざまな流れ,そして目撃したであろう地震・噴火・津波・地殻変動などの諸地学現象について,講義での配布資料などを参考に過去8千年間の旅行記を作成せよ.

 ただし,水分子である諸君らには,通りすがりの海底や陸地などの様子はよく見えるものとする.また,いくら水分子であるにしても,蒸発してしまうと旅行記がきわめてややこしいものとなり収拾がつかなくなる恐れがあるので,蒸発はなるべくしないものとする.なお,解答にあたっては,別配布の解答用紙を使用すること.枚数は制限しない.

*:LGM(約1万8千年前)に最低となった海水準が急激に回復し,氾世界的に海水準が現在より1〜3m高くなった時期(Holocene Optimum:約6千年前)の直前である.Holocene Optimumは,日本では縄文海進あるいは有楽町海進として知られる.