海の地質学

2002年度後期:期末試験問題


問:海の水が完全に透明であって,かつ大気と屈折率に違いがないものとする.すると飛行機の窓から地表を見下ろすときのように,海面にいるだけで直下の海底がよく見えることになる.そして諸君らは今,小舟に乗っている.この小舟には帆や発動機がついていない.簡単な櫂(オール)があるだけだ.短距離の移動は自力で可能だとしても,流れにのって流されるしか長距離を移動する手段はない.食料と真水だけは豊富にある.どんな長期間でも生命の心配はない.現在,金沢市内を流れる犀川の流れに浮かんでいる.小舟はだんだんと海に近づいてきた・・・・.

 それでは,犀川の河口を出発し,海のさまざまな流れ,とくに海流をうまく乗り継ぎながら4年間をかけて世界一周航海のすえに金沢沖まで戻ってきてもらいたい.試験問題は「答案用紙A(罫線付き)に航海の一部始終を旅行記として記述し,答案用紙B(罫線なし)に旅先で見た風景や海底地形などを挿絵として描く」になる.なお,解答にあたっては以下の条件に留意すること.

  1. 航海の期間は4年間(1461日間)とする.多少の過不足はかまわない.この期間内でなるべく多くのところを巡ってくること.
  2. 出発から到着までを時の流れにしたがって順序立てて書くこと.そして,旅の途中で見ることのできた陸地の風景や,舟から見下ろした海底地形のようすなどについて,それらの中からとくに4カ所を選び出してそれぞれの詳細を記述すること.さらにその1カ所については見たものを旅行記の挿絵として描くこと.
  3. すべての海流は毎時5キロで流れているものと仮定する.この速さで赤道上をぐるりと一周すると約330日かかる計算になる.海流以外の流れの速さは講義で示したとおりとする.
  4. 本紙裏面の「世界の海流分布図」を参考にして,どの海流からどの海流にどこで乗り継いだのかを旅行記上に明確に示すこと.「どこで」とはおおまかな位置(たとえば「アラスカ南方」など)でかまわない.手元にある地図などを見て地名を書いてもかまわないが目立つ地名とすることが望ましい.
  5. 舟の上からはどんなに深い海底のようすでも見ることができるものとする.ただし,通常の肉眼で見える範囲内とする(「深海底で蠢く膠着質有孔虫がみえた」などは不可).
  6. 沿岸で波に漂いすぎると時間をくうので,さっさと沖合にでていくこと.陸地にときおり立ち寄ってもかまわない.どんな暴風雨にあっても難破はしない.
  7. 台風やハリケーンなどにはあわないものとするが,1〜2回ならば暴風雨に吹き飛ばされての移動もかまわない.ただし,移動距離は台風などによる吹送作用の範囲内とする.
  8. 旅行記は塚脇が読むことのできる言語(日本語,英語,フランス語,中国語)で書くこと.
  9. 最終的な成績評価(単位の認定)は,この試験の成績,毎回の受講姿勢,および2回のレポートの結果を総合して行う.判定方法や結果の概要については学務係前に掲示する.

旅行記の書き方(途中での例):金沢沖を出発して500日がすぎた.○○海流にのって南へ移動している.はるか遠くに××岬がみえる.するとその向こう側には◇◇市があることになる.カーニバルで有名なところだ.・・・・・・・・・.視線をふと下に向けると海底に△△がみつかった.□□が▽▽となることで海洋地質学ではよく知られる地形だという.海底を■■がゆっくりと移動するのが目にとまった.ここで▲▲海流に乗り換える.(以下略)