海の地質学

2006年度前期:期末試験問題


 VTRで見たとおり2003年7月に海底探査ロボットr2D4が試験潜航に成功した.このロボットの所見は本紙裏面のとおりである.では,本講義をとおして学んできた海洋地質学の知識ならびにこのロボットの所見(1)をよく考えたうえで以下の問に答えよ.

問.この海底探査ロボットの用途は単なる海底の探査・調査にとらわれることなく無限に広いといえる.このロボットには,サイドスキャンソナー(2),インターフェロメトリーソナー(3),CTDO(4),そしてTVカメラなどが搭載されているし,近い将来にはマニュピレーター(5)の搭載も可能となるだろう.すなわちこのロボットは海底のようす(微地形・堆積物・水の流れ)や海水の成分などを広範囲にわたって精密に調べることができるだけでなく,将来的には海底からさまざまなものを持ち帰ること,あるいは海底へさまざまなものを持ち込むことができるようにもなるだろう.では,諸君ならばこのロボットを使って世界のどこの海底(6)を調べてみたいか.どのような観測機器(脚注参照)を使えばどのようなことがわかってくるだろうか.そして,ロボットはどのようなものを持ち帰ってくるだろうか.あるいはどんなものを海底へ持ち込んでみたいか.

 ロボットが撮影してくるであろう海底の写真や作成してくるであろう海底の地図などを推定して描いたうえで,上記の問(どこで,何を使って,どんなことをすれば,どんなものが手に入って,そして,こんなことがわかるだろう)について記述せよ.

 採点にあたっては,貴君らが調査対象に選んだところが個人的な興味の場所であるとともに,学術的,社会的,あるいは開発・保全などの立場・視点からみても有意義であるかどうか(たとえばマネキンバレーを見に行くだけ,というのは不可),そしてこのロボットの性能をきちんと把握しているか(たとえばこのロボットが航行可能なのは水深4000mまで.これを超えた水深へ行ってしまったら不可),などに力点を置く予定である.

  1. 速力3ノットとは毎時約6q.
  2. 海底面から一定の高度を航行することで一定範囲(幅100〜300m)の海底地形を描くソナー.航行するだけで海底の地図ができると思ってよい.条件がよければ底質を知ることも可能である.分解能は海底面上で約30cm. 
  3. 海底面を精密に計測するソナー.精度は約1m.
  4. 海水の塩分濃度や水温,溶存酸素量などを計測するもの.
  5. マジックハンドのように海中でものをつかむことのできる道具.
  6. 具体的な海域名がわからないときには,たとえば「仙台沖約300qの太平洋」と書いてもかまわない.