金沢市大桑町の犀川河原:化石採集・地層観察指導の予備調査

2008年9月23日(火):金沢市大桑町


 9月下旬から10月上旬にかけて化石採集や地層観察の指導がいくつか予定されている.そこで,現地の下見のため大桑町の犀川へでかけた.簡易野球場の駐車場に車をとめて,まず下流側の右岸へ下りる.遠目にも犀川の水位が低いことがわかった.


 水位は最低といってもいいほどに低い.両岸の露頭が広い範囲にわたって離水している.

 ずっと以前に崩落した右岸の露頭がすっかり離水している.左岸ではポットホールが発達する露頭が崩落していた.7月の増水によるものだろうか.


 右岸の露頭は最近の雨や増水で洗われたせいか地層や化石がよくみえてていた.

 水分を含んで暗灰色になった細粒砂岩に白い化石がよくめだつ.

 さらに下流側へ移動してみた.

 ここでも貝化石がすっかり洗い出されていた.


 車で大桑貝殻橋へ移動した.橋をわたって左岸へさらに移動する.

 橋からみおろす犀川は,上流側,下流側ともに河床が広々と離水していた.

 上流側では橋の真下にOPとOVの2枚の凝灰岩がみつかった.ここまで広く露出しているのはひさしぶりのことだ.河道は左岸よりのみに限定されている.

 一方の下流側ではO1凝灰岩がみごとに連続するのがみえた.

 犀川左岸沿いの道路を下流へと歩く.

 民家が現れるあたりで舗装された小径へ足を踏み入れる.

 露頭への近道をさがしてみたが,植生が深くて中学生たちを案内するのはちょっとむずかしそうだった.

 犀川には鮎釣りを楽しむ人々の姿が多い.


 未舗装になった小径をさらにくだって左岸側の露頭に到着する.

 こちら側も雨や増水で露頭が洗われて地層や貝化石がよく観察できるようになっていた.

 右岸側の露頭や崩落をまぬがれたポットホールもよくみることができる.


 ただ,露頭となる細粒砂岩全体が湿り気をおびていて滑りやすい.

 下りてきた小径を引き返す.

 左岸沿いの道路を歩いて上流へ.

 大桑貝殻橋がみえてきた.

 上流側と下流側とをあらためてながめながら右岸へ引き返す.

 そして上流側の河原へと下りた.橋のすぐ下に2枚の凝灰岩が白くみえていた.


 大桑層下部に挟在するこれらの凝灰岩がこれほどまでによくみえるのは珍しい.下位のOV凝灰岩は白色細粒の塊状で主部の厚さは30センチほど.生痕の発達がときおり観察される.

 上位のOP凝灰岩は同じく白色ながらも極細粒で緻密であることを特徴とする.主部の層厚はやはり30cmほどだ.

 凝灰岩の直下には細礫岩がある.上面には複雑な形状の巣穴が発達する.

 凝灰岩の上位には大桑層下部の細礫を含んだ泥質砂岩がある.

 凝灰岩の下位も泥質砂岩あるいは砂質泥岩だが礫はほとんど認められない.そのかわりに植物化石の層がいくつも挟在する.


 上位の大桑層と下位の犀川層の境界がみえてきた.水位が低いおかげで不整合が位置する段差がすっかり離水している.

 不整合面直上にあるいわゆる基底礫層が確認できる.

 段差沿いにはそのほかにも基底礫層が観察できる場所がある.

 犀川層は凝灰質砂岩から構成される.石灰質ノジュールが発達することが特徴だ.

 凝灰質砂岩には植物化石が豊富に含まれる.そのなかには生痕化石が発達するものもある(写真左).


 露頭の下位層準では貝化石が散在するようになる.

 水位が低いおかげで犀川層の露出は広い.これだけの広さがあれば100名くらいは十分に収容できるだろう.

 犀川層から大桑層下部にかけてのようすを改めて確認しながら車へ引き返す.

 


  • Camera: Pentax Optio W30
  • Lense: SMC Pentax Zoom 6.3-18.9mm f.2.6-4.8