小松市北部巡検(担当:冨井康博)
2000年11月11日(水)

 M2の冨井康博の調査地小松市北部地域での3度目の地質巡検.午前8時半に辰口丘陵公園駐車場に集合し冨井の車に乗り換えてすぐに出発した.ときおり雨が降ってくる.

露 頭1:九谷焼窯元会館そばの露頭.最下位に層厚4mほどの平行葉理の発達する緑色凝灰岩がある.


 平行葉理は細粒の軽石と火山灰とで構成されているようだ.火砕流(アッシュサージ)堆積物のようにもみえる.上位に向かって平行葉理は目立たなくなり,かわって液状化痕とも思えるような不規則な構造が観察される.

 その上位では砂岩と泥岩とが不規則に互層している.下位には礫をともなう中〜粗粒砂岩がある.

 中位には平行葉理が発達する泥岩がある.炭化物が密集層を形成している.そして最上位には黄褐色で塊状の中粒砂岩が位置する.

露 頭2:青蓮寺のある工場の敷地内の露頭.庭園の一部となっているようだ.地質図では火山岩(流紋岩?)の分布が記されているらしい.

 しかし,近づいてみると緑色凝灰岩だった.白色の基質中に長石らしい斑晶が散らばっている.おおまかに成層してみえるのは気のせいだろうか.

露 頭3:大野付近の林道沿い.いかにも冨井のフィ−ルドらしく露頭は道路に沿ってぽつりぽつりとあるのみ.この道路沿いにはずっと緑色凝灰岩が露出している.緑がかった白色の基質に白色軽石が散在する.軽石はところによっては密集することがある.

 林道は尾根を切って作られている.この切断面の全面に緑色凝灰岩が露出する.

露 頭4:緑色凝灰岩が露出する林道を抜け,幹線道路を回り込んでさらに入り込んだところに大露頭があった.幹線道路近くには緑色凝灰岩系らしい岩石だが,そのさらに奥の露頭には弱く固結した堆積岩が露出する.

 最下位には厚さ5メートル以上の円礫岩が位置する.個々の礫はよく円磨されているが,それらの中には角礫も混じっている.礫の淘汰はあまりよくない.礫岩中には中〜粗粒砂岩や泥岩が不規則に挟在している.

 礫の配列に覆瓦構造などは認められない.砂岩には平行葉理が発達することが多いようだ.砂岩と上位の礫岩とは明らかな浸食境界で接している.明らかな陸成扇状地の堆積物と判断される.

 冨井の案内で露頭を登った.上位に向かって地層は明瞭に細粒化する.円礫岩の上位には砂岩があり,そのさらに上位には白色の泥岩がある.そして,層厚10センチ程度の円礫岩があってその上位もふたたび上方に細粒化する.

 ここで滑落した.上位の礫岩直上の白色砂岩(凝灰岩?)を見ているときのこと.足場がもろくも崩れ去って5メートルほど下の段差まで滑落した.気を取り直して登りなおしたものの,冨井の説明を聞くときになってまた同じところで滑落.2度目は段差で停まることができず,段差をのり越えて一番下まで滑り落ちてしまった.滑落中に「あーっ!ヘッドー!」と冨井の声が頭上から響いてくる.幸いにも滑落停止姿勢をとることができたため,指をすりむいた程度の怪我と首の軽い捻挫くらいですんだ.しかし,3度目の登攀はいやだった.

露 頭5:軽海付近の道路沿い.雨が降っていたため車内で昼食をとってから露頭へ向かう.この露頭の下位には平行葉理の発達する緑色凝灰岩が露出している.

 緑色凝灰岩の上位には不整合面を挟んで礫をともなう白色の凝灰岩らしきものがあった.

露 頭6:花坂付近の道路沿いの露頭.私道だろうか.一般車両が入れないような障害が入り口付近にあった.この道路沿いの露頭にも緑色凝灰岩が露出する.しかし,きれいに円磨されたチャ−トなどの礫がかなり含まれている.

 その道路からさらに私有地へと入っていく私道沿いにも露頭があった.入り口付近には含礫緑色凝灰岩が露出するものの,そのやや奥にはそれほど固結していない泥岩や砂岩がある.植生のためこれらの関係はつかめない.

露 頭7:東山あたりの加賀産業道路直下の露頭.平行葉理の発達する緑色凝灰岩.角礫を多量に含むところもある.小規模な正断層が全体に発達する.

露 頭8:東山にあるため池周辺の露頭群.最下位に白色粗粒の凝灰岩があり,その上位には暗灰色の泥岩,そして最上位には礫をともなう細〜中粒砂岩あるいは含礫泥質砂岩がある.暗灰色泥岩の層厚が大きく変化することが注目される.

露 頭9:加賀八幡温泉近くの露頭.下位には弱く固結した黄褐色泥岩がある.その上位には弱固結した黄褐色砂岩が位置する.砂岩には平行葉理らしきものの発達が認められる.

 泥岩にも平行葉理が発達しているようだ.泥岩がきわめて脆弱で足場が崩れやすいため,露頭から降りるだけでも苦労させられた.写真左手の赤茶色い部分は陰地が滑落した跡.

 最後の露頭前での記念写真.これが冨井にとっては最後の巡検案内になるはずだ・・・たぶん.

 この巡検で小松市北部一帯にわたって弱固結の堆積岩が分布することが判明した.最上位にある淘汰不良の砂岩がいい鍵層になりそうだ.貝化石は見つからなかったものの,砂岩の下位には扇状地性の粗粒堆積物や植物遺骸に富む泥岩などが位置している.前田の辰口町のフィ−ルドとあわせればこれらの堆積岩類が形成された場は十分に復元できそうだ.堆積年代が不明なのが現時点での最大の問題として残される.

  • Camera: Fuji HD-M Date
  • Lens: Fujinon 38mm f.2.8
  • Film: Fujicolour Super 400
  • Scanner: Epson FS-1200WINS