金沢市北東部竹又地域(大桑層・高窪層)
2002年11月7日(木):担当 細田洋人

 1限目の講義終了後に4年生の細田が担当する金沢市東部の竹又付近のフィ−ルドにでかけた.久しぶりの好天にも恵まれる.国道304号からゴルフ場へと向かう道路へ入り,北陸道沿いの林道へ進入した.そして林道が二またに分かれるあたりに車を置いて,左側の林道に沿ってまず歩く.たいして歩く間もないうちに,植生に覆われた露頭が右側に見えてきた.


 露出していたのは軽石まじりで白色の粗粒凝灰岩だった.厚さは3メートルくらいだろう.これに含まれる軽石は大きいものでは直径が3センチほどもある.凝灰岩の直下には小さな軽石が混じった青灰色の砂質泥岩がある.一方この凝灰岩の最上部には白色でわりと堅い泥質の凝灰岩があった.

 露頭を見終わってから車をとめてある方へと林道をひきかえした.その途中で修士2年の陰地章仁がちょっと足を止める.

 続いて右側の林道に入った.道路の左手に露頭が連続している.道路の方向が地層の走向とほぼ一致しているため,先ほど見たばかりの凝灰岩の延長と思われるものが露出を繰り返していた.

 その一方で,先ほどの凝灰岩とは岩相が明らかに異なるものが見つかった.白色でわりと緻密な凝灰岩だ.

 藪の中ではこれらの凝灰岩と上下の泥質岩との境界面が確認される.そして林道沿いの露頭がとぎれたところで右手の用水路にルートをかえた.

 用水路の途中のちょっとした崖には青灰色の泥質砂岩が露出していた.直径数ミリの白色軽石が目立っている.それにしても11月ともなれば沢の水も冷たい.すでに初雪が降ったとあってはなおさらだ.

 この用水路から右手にのびる沢にはいい露頭が連続していそうだった.しかし今回は先を急ぐこともあってその入り口あたりの露頭を見るにとどめた.黄白色の粗粒凝灰岩がそこには露出していた.

 用水路を覆いつくす竹やぶを抜けると気持ちのいい日光が降り注ぐ.1週間ぶりの晴天だ.つい2日前に初雪が降ったばかりとは思えない.

 竹やぶの次には波鉄板のトンネルがあった.これを全員でくぐりぬける.これでこのルートのアトラクションはおしまいだった.

 トンネルを抜けたところにいい露頭があった.最初に見たものとほぼ同じ岩相の粗粒凝灰岩だ.そこでふたたび林道へ戻ってみたら,道路に沿っていい露頭が続いていた.まず最初に灰白色の泥岩あるいは砂質泥岩がある.風化した表面が黄白色になっているのが特徴的だ.

 この露頭ではたくさんの小断層が見つかった.すべてが正断層だろう.北々西-南々東走向で落差は数十センチといったところだ.層厚10センチ以下の凝灰岩が少なくとも3枚は挟在している.金沢市上涌波付近に分布する大桑層の最下部ととてもよく似た岩相だ.


 その上位には青灰色で軽石にとむ凝灰岩があった.それほど堅くはない.ハンマーの先端で掘り込むことができるほどの堅さだ.

 この凝灰岩の上位には砂岩がある.そして,岩相がいきなり白色の凝灰岩に変わった.両者の境界にはほぼ垂直の断層があった.

 断層右手の凝灰岩は道路に沿って延々と露出していた.層厚は少なくみつもっても10メートル以上はあるだろう.これほど厚い凝灰岩の存在は大桑層下部には知られていない.

 厚い凝灰岩はいつの間にか軽石を多量に含む砂岩に変わっていた.

 林道をのぼりつめたところに砂防ダムがあった.そのダムをかわして植林された斜面をのぼっていく.なんとなく不思議な位置にあるダムだった.

 クマザサの茂る斜面をさらにのぼっていくと,その途中に白色の凝灰岩が露出していた.植生や表土に覆われて上下層との関係はわからない.

 斜面は途中から一面の露頭に変わっていった.細礫まじりの中粒から粗粒の砂岩がずっと露出している.手がかりが少ないために登っていくのに苦労する.

 この斜面沿いの露頭のもっとも上あたりには二枚貝の印象化石があった.細田洋人が指し示しているのがそれだが足場が悪いために写真を撮るのはおろか,近づくことさえままならない.そのすぐ下では陰地章仁が足場を作りながら登ってきていた.

 斜面を登り切った尾根には林道があった.いわゆる”ビクトリーロード”だ.

 その林道を下っていくとすぐに大きな露頭があった.やや風化しているものの灰白色の泥質砂岩だ.露頭面には合弁の二枚貝化石が散在している.模式地のものとは岩相がやや異なるが大桑層の中部と判断できるだろう.

 林道をもう少し歩くとさらさらの黄褐色砂岩が右手にあった.この岩相は大桑層の上部にまちがいない.学生たちが滑り落ちながらも登っていく.この写真の続きは movie で.この動画の撮影でデジタルカメラのメモリがすべてなくなった.


 林道を下ってゆくとまず泥質岩の露頭があり,そのさらに先には厚い凝灰岩が延々と露出している.

 林道を上るときに見たものとほぼ同じ白色の凝灰岩だ.軽石を多量に含んでいる.ここで細田がちょっと足をとめた.

 凝灰岩の下位にはふたたび砂質泥岩があった.不明瞭な層理が見える.きわめて薄い凝灰岩が挟在していた.

 この砂質泥岩からは二枚貝の印象化石が見つかった.

 林道を下りきって国道に出た.国道沿いには山の清水でのどを潤せるような水くみ場が作ってある.そこから東へとやや歩いたところに白色細粒の凝灰岩があった.上下に2枚が確認される.この岩相は高窪層に挟在する釣部凝灰岩に間違いない.

 国道をさらに歩いたところでこんどは沢に入った.シマヘビがいるのにも気づかず細田が先を歩いていく.沢の途中には二枚貝化石が散在する大桑層の中部が露出していた.

 そのさらに奥には上下2層に分かれたOM3凝灰岩も見つかった.これでこの露頭の層準が確定したことになる.国道に戻ってさらに東へ歩いていくと,河床に貝化石層が露出しているのも見えた.この写真でカメラのフィルムもなくなった.

 このあとで短いルートをもう一カ所あるいたが,メモリもフィルムもなかったために記録はなし.午後5時くらいに研究室に戻ってミーティング.

  • Camera: Casio G.Bros GV-10 and Konica 現場監督WB
  • Lens: Casio Lens 4.6mm f.2.8 and Konica Lens 35mm f.2.8
  • Film: Fujicolour Pro400
  • Scanner: Epson FS-1200WINS