金沢市北東部地代地域(大桑層・高窪層)
2002年11月12日(木):担当 星野恵一

 明け方には雷鳴がとどろき渡るような天候だったが,午前7時ころにもなると雨もやんできた.ちょっと迷ったが思い切って4年生の星野が担当する金沢市北東部のフィ−ルドにでかけることにした.角間キャンパスから二股をとおって国道304号を左へ.途中で北へ曲がって深谷温泉前をとおり地代町付近の路上に車を停めた.新興住宅地らしいしゃれた住宅が並んでいる.その合間には畑もある.この畑の裏手の小道を沢へと下っていった.


 ゴルフボールの散らばる小道を下りきったところで笹が一面に茂る沢に入った.

 沢をちょっと下ったところに最初の露頭があった.沢の底にあったのは黄白色のやわらかい粗粒凝灰岩だ.しかしそのずっと上にも同じ凝灰岩があった.上下の境界は見えないもののほぼ水平のようだ.沢の底で見つかったものは転石らしい.

 沢をさらに下っていくと青灰色ないし灰白色の泥質岩が露出するようになった.

 クマザサの茂る沢は滑りやすくて歩きにくい.今朝までの雨で落ち葉がすっかり濡れているためになおさら歩きにくかった.

 やわらかい地層でできているせいか沢は狭くて小さな滝も多かった.崖をつたったり滝をかわしたりしながら沢を降りていく.その途中に露出しているのはほとんどが泥質岩だった.表面が濡れているためにとても滑りやすい.

 沢をさらに下ったところにも,最初に見たものとほぼ同じ岩相の凝灰岩があった.黄白色の粗粒凝灰岩で最上部にはわりと堅い細粒凝灰岩がある.この凝灰岩は斜面の反対側に向かって傾斜していた.地辷りによってこの位置まで滑落してきたものだろう.

 かなり高い滝があったため右側へ大きく迂回して谷底へ降りようと試みた.この下りはかなりスリリングなものだった.落ち葉が堆積した斜面には足場も手がかりもほとんどなかった.ところどころに露出する濡れた泥岩は滑りやすく,厚い落ち葉の層をうっかり踏もうものならずるりと滑る.はるか下には急崖になった沢の底が見えている.誰も滑落しなかったのが不思議なほどだ.下から見上げるとたいしたことはないのだが・・・.ようやくの思いで沢の底にたどり着いた.

 沢の底には青灰色の泥質岩が露出していた.川の水による浸食をうけつづけているせいかとても鮮やかな色をしている.

 沢をちょっと下るとまた滝が出現した.これをかわしてふたたび沢の底へと降りてみたら,そこに露出していたのも同じ泥質岩だった.

 せっかく降りてきたので滝のあたりも叩いてみる.そこも同じ泥質岩だった.層準によって泥岩だったり砂質泥岩だったりするが,この沢は凝灰岩の層準をのぞいては泥質岩がほとんどのようだ.

 星野の希望で沢をさらに下っていった.途中の露頭には平行葉理らしきものが残っているものもあった.

 沢を下ったところに面白い露頭があった.のっぺりと塊状の層と細かい亀裂が入った層とが互層している.塊状の層が砂質泥岩あるいは泥質砂岩なのに対し,亀裂が入った層は泥岩から構成されていた.地層が形成されるときの圧密の受けぐあいの差によるのだろう.

 そこを最後に沢を上流へと引き返した.足下の砂質泥岩には斜交葉理らしいものの一部が見つかった.真っ白でつるつるの不思議なノジュールも見つかる.

 沢を上流へ向かって歩いていくと大きな滝があった.これはどうやっても登ることができない.思案のあげくに沢をちょっと引き返して左側の斜面をよじ登った.

 これもまたつらい上りだった.めざす沢はどんどん遠くなっていくのにさっきの滝をかわせそうなルートが見つからない.濡れた泥岩もクマザサもどちらもよくすべる.

 斜面はそのうちに竹林にかわった.さっきの沢へ降りるルートを探しているとさらに巨大な滝が見えてきた.下りをあきらめていったん尾根まで上がることにする.

 竹林を抜けるとそこには小さな神社があった.神社で一休みして裏手の沢へ入る.さっきの沢のもっとも上流になるはずだ.

 上流にしては水の量が多かった.河床には青灰色の泥質岩がやはり露出していた.

 最初の滝をなんなくかわして滝壺へ降りた.そこに露出していたのも青灰色の泥質岩だった.

 沢をさらに降りていくと次の滝が出現した.斜面を登るときに遠くに見えていた大きな滝だ.

 この滝はさすがに大きく迂回することにした.その途中で黄白色をした粗粒の凝灰岩が見つかる.さらさらで指先でも掘ることができるほど.表層部のみは風化のためにより黄色っぽい色になっている.

 谷底に降りて滝壺へひきかえすと,そこにはきれいに2層に分かれた凝灰岩が露出していた.これが星野がめざしていたものだという.上の凝灰岩は厚さが30センチほどの白色細粒で片栗粉のような独特の感触がある.一方,下の青灰色で粗粒の凝灰岩は厚さが1メートル近くはあるだろう.直径1センチ程度のよく円磨された軽石を含んでいる.

 細粒凝灰岩の上位にもう一枚の凝灰岩があるのを陰地が見つけた.青灰色細粒の凝灰岩できわめて薄いもの.この凝灰岩を見落としていた星野があわててデータを取り始める.地層全体はほぼ東西走向で南にやや傾斜しているようだ.

 滝壺の凝灰岩を観察し終えたところで沢から出ることにした.右岸側の斜面を一息に登っていく.途中に露出しているのもすべて青灰色の泥質岩だった.沢を登るにつれてだんだん尾根が近づいてくる.朝方の雨がうそのようないい天気になっていた.

 斜面も上のほうになると傾斜も緩くなり,わりと大きな木が立ち並ぶようになった.そのさらに上には植林作業の通路らしい細いながらもちゃんとした道が見つかった.

 黄褐色の砂岩らしいものが遠くに見えていた.2年前にこの近くを調査していた樽見が「ポクポク砂」と呼んでいた大桑層上部だろう.凝灰岩が見つかった谷底からかなり登ってはきたが,こんな近くに大桑層上部があるとすると,この地域では大桑層の中部がきわめて薄いのかもしれない.

 そして尾根へあがって本日の調査はおしまいとなった.

  • Camera: Casio G.Bros GV-10
  • Lens: Casio Lens 4.6mm f.2.8