金沢市南部山川地域(大桑層?・七曲層・砂子坂層)
2002年11月16日(土):担当 陰地章仁

 午前中のみの予定で金沢市南部の山川(やまご)町へ行った.修士課程2年の陰地章仁のフィ−ルドだ.最初に訪れたのは道路沿いにある大きな土取り場だった.露頭の高さは15メートルくらいはあるだろう.露頭の前の大きくえぐれた地面には黄白色の泥岩が見えていた.黄褐色の細粒砂岩と互層している.


 崖に近づいてみると細粒砂岩を主体としながらも泥岩や礫岩とおおまかに互層しているのがわかった.細粒砂岩は黄褐色の細〜中粒砂からできていて平行葉理が発達している.小さな軽石の粒も含まれている.

 礫岩を構成する礫は砂岩の中にひとつひとつが散在している.よく円磨されたものが多い.陰地の話では火山岩の礫が多いという.長軸が層理面とほぼ並行になっているようだ.露頭のもっとも上のあたりに白い地層が見えていた.近づくことができないので泥岩かと思っていたが,99年にここを調べた堀は凝灰岩と記載していた.

 この露頭からは金沢市街がよく見わたせた.遠くに金沢大学の角間キャンパスが見えている.なぜかキャンパスのあるところにだけ日光がさしている.右手には戸室山から医王山にかけてがよく見えていた.
 
 
 

 土取り場から離れて次の露頭へ行った.ここは新興墓地の中だった.黄白色の細粒砂岩にとても薄い白色泥岩が挟在する.

 その裏側にも露頭があった.ここは先ほどの土取り場の道路をはさんだ反対側にあたる.

 白色の泥岩と黄白色の細粒砂岩とがおおまかに互層するこの露頭では,はっきりとした2枚の断層面が確認された.どちらも正断層のように見える.また,土取り場の地層がほぼ水平なのに対し,この露頭では40度近くも傾斜している.

 続いて車を走らせてすぐ近くの林道に入った.大桑層と卯辰山層との境界が見える露頭があるという.林道の途中で車を止めて歩き始める.久々の青空にオレンジ色の柿の実があざやかに映える.その柿をひとつむしり取って陰地がかぶりついた.ジューシィな渋柿だった.

 林道をちょっと歩いたところにその露頭があった.

 風化が進んで赤褐色になった細粒砂岩だった.白色の泥岩がレンズ状に挟在している.露頭の上のほうには黄白色の細粒砂岩があり,下位の赤褐色砂岩との境界には黒褐色の砂岩があった.大桑層と上位の卯辰山層とを分ける,いわゆる「スコリア砂層」かもしれない.黒色の砂から構成されていて金属光沢を放つ鉱物が散在している.

 林道の入り口付近にまで車をもどし,下位の地層群をみるためそこから歩いて別の林道へ入っていった.林道はじきにとぎれ沢沿いに広がる田畑になる.その田畑の横に最初の露頭があった.

 細かく成層した凝灰質泥岩だった.かなり硬い.砂子坂層だろうか.

 沢を下ってゆくと別の露頭が現れた.成層しているのが遠くからでもよくわかる.
 
 
 なんとなくまぬけ・・・.

 ここにもさっきと同じような硬い凝灰質泥岩が露出していた.しかしその上位には軽石にとむ粗粒の凝灰質砂岩が位置していた.

 もう少し沢を下っていくと,軽石が層をなして挟在する凝灰質砂岩の露頭が見つかった.これは七曲層の岩相とよく一致する.このあたりは野鳥の住みかになっているようだ.斜面の木々にはツグミのような鳥が群れをなし,足下からはヤマドリが飛び立っていった.

 このあたりから沢が狭く急になってきた.小さな滝もある.滝の周囲に露出していたのは硬い凝灰質泥岩だった.

 変な木が立っていた.ツル性のものだろう.隣の木にからみついて締めながら成長しているようだ.東南アジアでは「絞め殺しの木」として有名なものがあるが,同じようなものを日本で見るのは初めてだ.このあたりから河床に露頭が連続するようになってきた.

 灰色の基質に白い凝灰岩の角礫が散在する凝灰角礫岩がある.

 砂子坂層と判断されそうな硬い凝灰質泥岩もある.このような岩石の種類の違いによって沢の段差が形成されているようだ.地層全体としては沢の流れ下る方向とほぼ同じ方向に傾斜していた.

 そして本日最後の露頭があるところへ行ってみたら,思わぬ増水のため水面下になっていた.陰地がうろたえながら沢へと降りていく.

 彼が見せたかった白色凝灰岩は水面直下にかろうじて見えていた.カメラを水中におろして写真を撮ってみたら,鮮やかな白色が暗い水中に浮かび上がった.

 そのやや上流にも別の白色凝灰岩があった.陰地によれば水中のものが上位でこの露頭のものは下位だという.

 引き返すときには沢の中を歩くことにした.表面がでこぼこになった凝灰角礫岩がある.

 もう少し上流には角礫を含む白色の凝灰岩あるいは凝灰質砂岩があり,その直上に玄武岩としか思えないような岩体があった.真っ黒で硬く微細な斑晶のようなものが割った面に散らばっている.しかし,層厚はわずか60センチしかないという.

 沢が開けたところで頭上に奇妙な露頭が見つかった.七曲層の軽石凝灰岩のように見えるのだが,貫入岩らしきものが垂直に入っているのが遠くからでもよくわかる.近づいてみたらその奇妙さがよくわかった.

 周囲の岩石は予想どおりの軽石凝灰岩だった.しかし,貫入岩のように見えたところもまったく同じ岩質だった.固さがやや異なるような気はする.節理面に沿って珪質分かなにかが濃集したのだろうか.作業する小島を陰地が間抜け顔でのぞき込む.

 これで本日のフィ−ルドは終了となった.沢を引き返して林道に戻る.

 竹林を抜けて車を止めてあったところへ戻った.正午をちょっとすぎたところだった.この後,昼食中になって小雨が降り出し,午後にはかなり激しい雨に変わった.今日はついていたようだ.

  • Camera: Casio G.Bros GV-10 and Canon AutoBoy D-5
  • Lens: Casio Lens 4.6mm f.2.8 and Canon Lens 32mm f.3.5