金沢市南部上辰巳地域(黒壁玄武岩・七曲層・砂子坂層)
2002年11月29日(金):担当 陰地章仁

 午後から地学実験があるため,それまでの予定で金沢市南部の上辰巳へ行った.陰地章仁の車で現地へ向かう.末町から温泉で有名な「滝亭」の近くをとおって上辰巳の現場に到着した.犀川にかかる橋が道路工事中でとおることができなかったため,橋のたもとに車を置き対岸に見える露頭へ歩いて向かう.凝灰岩らしい白っぽい地層が大きく傾いているのが遠目にもわかる.


 できたばかりの真新しい橋を渡り,その橋の横を滑り降りて川岸の露頭へ向かった.犀川の水はふだんより多いようだ.

 最初の露頭には人工的なトンネルが造られていた.そのちょっと奥では白色凝灰岩あるいは凝灰質砂岩が北西へ50度ほど傾斜していた.

 近づいてみると凝灰質泥岩と凝灰質砂岩との互層だった.泥岩はかなり緻密だ.一方の砂岩は比較的やわらかく,斜交葉理のような堆積構造が見うけられた.

 砂岩と泥岩との境界にはコンボルート層理の発達も認められる.凝灰質砂岩の葉理を形成しているのは白色軽石の薄い密集層だった.

 泥岩は頁岩とよんでもいいほどの固さだ.白色凝灰岩と呼んでもよさそうな緻密なものもある.

 川岸にも同じような互層が露出している.遠くに道路工事の現場が見える.山肌が大きく削り取られたところによい露頭ができているようだ.

 やってきた道を引き返し,橋の下をくぐって次の露頭へ向かった.このあたりの川岸にもときおり地層が露出している.

 橋をくぐって50メートルほど進んだところの道路際にも小さな露頭があった.最初の露頭から200メートルも離れていないのに,ここでは緻密な凝灰質泥岩が北へわずかに傾いているだけだった.

 それから川岸の露頭へと降り立った.やはり北へ向かって緩く傾斜しているのみ.この露頭の上流側では地層のきれいな斷面をみることができた.白色軽石がみごとな葉理を形成していた.

 この露頭には格子状の節理が発達していた.地層の表面には大きな生痕がたくさん見つかる.

 道路をさらに歩いていくと川岸にいくつかの露頭があった.このあたりで道路から川岸に降りることにする.

 川岸に沿って地層がほぼ連続している.途中には小さな滝があった.凝灰質泥岩と凝灰質砂岩との互層はここでも緩く傾斜しているのみだった.

 川岸の道路沿いをひととおり歩いたあとで車へ戻る.久しぶりの好天だった.水もそれほど冷たくない.道路工事にともなって新しくできた大露頭が遠く見えていた. 

 続いて車を走らせて上辰巳へ向かった.地学実験の2回目の野外実習で毎学期訪れるところだ.いつもの空き地近くに車を置き,見慣れた大斜交層理を見ながら犀川へ向かう.

 辰巳用水の取水口をとおり,犀川にかかる堰を横切って対岸へわたる.

 川に沿って走る古い道路にまずあがった.犀川にかかる橋が撤去されたため,すっかり荒れ果てた道路に沿って凝灰角礫岩が露出している.

 それほど明瞭とはいえないながらも凝灰質泥岩が凝灰角礫岩などと互層している.このあたりは砂子坂層になるという.

 そして頭上高くに張り出してみえるところが七曲層だとのこと.砂子坂層と七曲層との境界は対岸にみることができた.しかし増水した犀川のために対岸へわたることはできなかった.

 遠くに滝がみえてきた.道路をそれて滝壺へと向かう.

 滝壺は崩落してきた岩石で埋め尽くされていた.滝壺の両側に露出していたのは固くて緻密な暗青色の泥岩だった.

 いけるところまで崖を登ってみた.上から落ちてくる水しぶきが冷たい.上のほうでみつかったのもやはり同じ暗青色泥岩だった.

 滝壺から離れて道路に戻った.しばらく歩くと黒壁玄武岩の大露頭がみえてくる.かつては採石場だったというところだ.橋がまだあったころは地学実験で毎回訪れていたところでもある.午前中の日当たりのおかげで放射状になった柱状節理がみごとだった.大露頭の左手には砂子坂層との接触境界もみえる.しかし岩石の崩落が激しくて近づけないと陰地はいう.

 大露頭の対岸にも砂子坂層と七曲層との境界がみえていたがここでも川を渡ることができなかった.あきらめてやってきた道を引き返す.途中の対岸には両層を貫く岩体がある.幅は7〜8メートルといったところだろうか.上の白いあたりまで達しているようだとは陰地の説.肉眼ではたしかにそのようにみえる.

 堰をわたって辰巳用水の取水口へと引き返す.

 取水口のすぐ手前にある地層を切り取って作られた階段を上っていく.足下も左右もすべて露頭だ.ここにも軽石を多量に含む凝灰質砂岩が露出していた.そしてここで今日のフィ−ルドをおしまいにして大学へ戻った.

  • Camera: Casio G.Bros GV-10 and Fuji WorkRecord 28
  • Lens: Casio Lens 4.6mm f.2.8 and Fujinon 28mm f.3.5