金沢市北東部北千石地域(大桑層・高窪層?)
2002年12月2日(月):担当 星野恵一

 天気予報では晴天のはずだったが朝から雨が降っていた.やむ気配を見せないので今日の巡検を明日へ延期しようと決めたとたんに天気は回復してくる.そこで道路沿いの露頭のみを見るつもりで午前10時半に大学を出発にした.角間キャンパスから二俣をとおって国道304号,そして同359号へ.そして加賀朝日方面へ向かう地方道から細い林道をとおって北千石の砂取り場の露頭に到着した.遠くからでも大きな露頭がよくみえる.ふたたび落ちてきた雨の中を露頭へ向かった.


 近づくにつれて露頭の大きさがよくわかるようになった.上半分が砂岩,そして下半分が泥質岩でできているようにみえる.

 振り返ると複雑に入り組んだこのあたりの谷地形がよくわかる.

 星野の案内で露頭の左手へまず向かった.ここには30度ほど左へ傾斜する凝灰岩が暗灰色の砂質泥岩に挟在していた.いちばん下は中粒から粗粒の凝灰岩で上に向かうにつれて細粒化する.そして薄い砂質泥岩があってそのさらに上には細粒で白色の凝灰岩がある.これらをあわせた厚さは50センチほどだろう.この凝灰岩を大きく切る断層もみつかった.逆断層のようだが高角度だ.

 凝灰岩の上下は暗灰色の砂質泥岩がある.風化のために灰白色になった表面には生痕化石が目立つ.

 それから露頭を大きく回って右手へと移動した.ここにも露頭の左手でみたばかりのものとよく似た凝灰岩があった.やや薄いようだが下半部の中〜粗粒凝灰岩と上位の細粒凝灰岩とから構成されている.しかしここでは向かって右へ傾斜している.同じ露頭なのに右手と左手とで同じ凝灰岩が逆に傾斜するのが星野の困惑の元のようだ.この露頭にも逆断層と思える断層があった.

 この露頭全体が小規模な背斜軸にあるのかと思いつつ露頭の上部を見に行くことにした.星野の話どおりに黄褐色の細粒砂岩がそこにはあった.彼が「ビーチ」というニックネームでよぶ岩相だ.やや泥質を帯びている.同じような凝灰岩を大桑層上部のどこかでみた記憶があるが思い出せない.

 その細粒砂岩に白い凝灰岩が挟在していた.厚さは10センチもないだろう.泥っぽくてべたべたしている.この直下でみた厚い凝灰岩と同じ方向に傾斜していた.

 黄褐色の細粒砂岩は下位に向かうにつれて泥質をより帯びるようになる.泥質砂岩と呼んでもいいほどだ.

 そして露頭の下部では先ほどみたような砂質泥岩かあるいは泥岩にかわる.砂質泥岩の中に二枚貝の印象化石があるのを細田がみつけた.

 露頭に登っているときに雨がだんだんと強くなってきた.遠くの山並みがかすんで見え始める.からだが冷え切ってくる。曇るレンズのために写真がきみょうに白っぽくなる.

 露頭の右手に星野を残したままで左手へと引き返した.そして左手の凝灰岩の位置から彼をみたところでこの逆傾斜の意味がわかった.平面に近いように見えた露頭面だったが,歩きながらよくみてみると大きく湾曲していた.そのためほぼ同じ走向・傾斜の凝灰岩にもかかわらず,見かけ上逆にみえるだけだった.立体的な思考は地質学の基本だがその重要性をあらためて感じさせる露頭だ.

 この露頭全体をとおしてみると,地層はほぼ南北方向に延びていて西に20〜30度ほど傾斜していた.風化した砂質泥岩の表面がまるで微褶曲のような模様を描いていた.

 大露頭から林道をちょっと下ったところにふたつめの露頭があった.大露頭がそれほど遠くない位置にみえる.

 その露頭に近づいてから大露頭を見上げたところ.両者の位置関係がこれでよくわかる.

 この露頭は灰白色の砂質泥岩かあるいは泥岩からできていた.その中ほどのところには中粒から粗粒の白い凝灰岩が挟在している.厚さは約15センチ.降りしきる雨と積もった濡れ落ち葉で表面がよくすべる.この凝灰岩へたどりつくのはなかなか難しい.

 露頭からいったん地表に降りてみると地層の傾斜がよくわかった.

 露頭本体を構成する砂質泥岩のすぐ上には,厚さわずか1メートル程度の黄褐色砂岩がある.両者は整合関係にあるようだ.

 露頭の中ほどに挟在する凝灰岩から星野が走向・傾斜のデータをとってきた.大露頭の凝灰岩とは走向に40度ほどのずれがあるようだ.

 露頭左手の地表付近にもこの凝灰岩の延長部分がみつかった.その走向・傾斜をはかってからこの露頭をあとにした.

 ふたつめの露頭から林道をさらに下ったところに3番目の露頭があった.激しく降り始めた雨のため,目の前に露頭をみながら車の中で待機する.

 雨が小降りになったところで露頭にとりついた.砂質泥岩からできているこの露頭もとてもすべりやすいものだった.2度も滑落した陰地だったが,3度目にはサルのようにこの露頭に駆け上っていった(動画).

 この露頭にも凝灰岩があった.厚さ2メートル以上はあるだろう.厚い凝灰岩は星野のフィ−ルドでは珍しいものだという.下位の砂質泥岩とははっきりとした境界で接している.凝灰岩の下半部は中粒砂大の軽石粒から構成されていた.

 一方,上半部はやや細粒になるようだ.その上にある砂質泥岩との境界は大きく波打っている.上位面の延長を陰地が追跡してくれる.この凝灰岩の走向・傾斜もこれまでみてきたふたつとはやや異なるようだった.

 露頭に生い茂る野バラで手の甲を切りながら道路へ降りた.季節はずれのキウィフルーツが道路際の畑に実っている.そして車で4番目の露頭へ移動した.車を置いたところからその露頭へ歩く途中,これまでにみてきた3つの露頭の位置関係を確認することができた.

 小降りになった雨の中を露頭まで歩く.地辷りでできた露頭だろうとは星野の話.畑の中に舌状につきだした尾根の先端にその露頭はあった.

 ここにも白色細粒の凝灰岩が露出していた.厚さは30センチほど.地辷り面と判断される方向に大きく傾斜している.地形といいこの地質構造といい彼の話にまちがいはないようだ.

 この露頭の位置から大きな砂防ダムを見下ろすことができた.砂防ダムの周囲にも小さな露頭があるのをながめて車へ引き返す.

 途中の二俣で「蓮如だんご」を買って研究室に戻り,それから今日のおさらいのミーティング.

  • Camera: Casio G.Bros GV-10, Konica現場監督WB and Canon PowerShot S20
  • Lens: Casio Lens 4.6mm f.2.8, Konica Lens 35mm f.3.5 and Canon Lens 6.5-13.0mm f.2.9-4.0