金沢市南部高尾地域実習(卯辰山層〜七曲層)
2003年6月7日(土)

 新4年生のフィ−ルド実習に高尾の県教育センター裏の林道へでかけた.かつては地学実験の初日に訪れていたところだ.教育センターへ林道が分かれる三叉路に車をとめ,林道をちょっと引き返して沢に降りた(地図の1).


 ここに露出する卯辰山層は70度ほど傾斜していて下位となる上流側には厚い礫岩がある.一方,下流側には礫岩や砂岩,泥岩が雑然と成層している.

 粗粒砂岩から中礫岩へ,あるいは礫質砂岩から粗粒砂岩へと岩相の変化が著しい.

 学生たちはここで地層の観察を始める.不慣れな手つきで奈津美がハンマーをふるう.

 中粒砂岩には斜交層理が発達している.円礫岩には覆瓦構造が観察される.

 ひととおりの観察を終えたところで沢を抜け出し,つづいて道路沿いにある崖に登った.卯辰山層がここにも露出する(地図の2).

 崖から降りて林道をさらに奥へと向かう.

 林道に沿って脆弱な細粒砂岩がときおり露出する.しかし,土壌や植生に厚くおおわれているため岩相の詳細はわからない.

 林道が左へゆるく曲がるあたりに比較的大きな露頭があった.ここも脆弱な細粒砂岩でできていた.陰地と大植がなぜかしゃがみ込む.

 林道の先が開けたところにちょっとした崖があった.数年前と比べると植生がずっと深くなっている(地図の3).

 竹林の奥の崖には大桑層の青灰色細粒砂岩がある.小さな貝化石の破片がときおり見つかる.朝実が植物の中に潜り込んで露頭をたたく.

 この空き地には蚊が多かった.露頭の観察を早々に済ませて林道へ戻る.林道の右手には97年に吉岡が転落して大けがをした砂防ダムが見えていた.

 林道へ戻ってすぐ左手に露頭があった(地図の4).大桑層だ.地層の傾斜は40度ほどだろうか.上位にはしまりの悪い黄褐色ごく細粒砂岩があり,下位には灰白色の細粒凝灰岩がある.

 黄褐色細粒砂岩には二枚貝や巻貝の印象化石が見つかる.一方,凝灰岩は下位の成層した部分と上位の生物擾乱の発達した部分とからなる.

 そこから林道をさらに100メートルほど歩いたところには青灰色で比較的緻密な泥岩があった.大桑層下部,高窪層,あるいは御峰層.これらのいずれかには間違いないがどれとも判断がつかない.

 さらに200メートルほど歩いて林道が左に曲がったところに風化の著しい泥岩があった’(地図の5).

 風化のために灰褐色になってはいるが,先ほどの露頭と同じ泥岩だろう.さらに林道を歩く.

 同じ泥岩ながらも粗粒砂大の白色軽石に富む層準が見つかった(地図の6).

 層準によっては白色凝灰岩ともいえる.褐色の植物破片がふつうに見つかる.層厚がやけに薄いが下荒屋層だろうか.

 さらに足を進めると,林道に沿って泥岩の露頭が断片的に現れるようになった.

 どの露頭も厚い植生に覆われている.

 砂質をやや帯びた灰白色の泥岩だった.層厚10センチほどの白色凝灰岩が挟在している.

 わりと急な林道の両側斜面はいずれも竹林になっている.

 その斜面の一部が大きく崩壊したところがあった(地図の7).大植が,そして奈津美が登っては転げ落ちてくる.

 この露頭も脆弱な灰白色泥岩からできていた.朝ケ屋層だろうか.崖の中ほどで奈津美が器用に停止して露頭をたたく.

 大露頭をあとに林道を先へ進む.

 林道の左手には泥岩がずっと続いているようだ.青灰色の部分も見つかった.これが風化前の新鮮な色だろう.

 尾根に近づくと林道の傾斜がだんだんと緩くなる.ふたりの足取りがなんとなく重たげに見える.

 尾根のあたりで林道は4つに分かれる.その右手の林道をさらに進む.

 林道の右手にやけに堅い凝灰岩が露出していた.七曲層の最上部だろう.

 さらに進んだところで林道の左側が大きく開けた.

 林道の左側に深い谷が続くようになる.

 そして右手に凝灰岩のいい露頭が見つかった(地図の8).

 灰白色中粒の凝灰岩と白色細粒の凝灰岩がおおまかに互層している.液状化の痕跡があちこちに見受けられる.

 林道が右に曲がるあたりに大きな露頭があった.

 露頭全体が細粒から粗粒の凝灰岩でできている.七曲層の主部に相当する層準だろう.小さな正断層も見つかる.

 全体におおまかに成層する凝灰岩には大きな白色軽石がときおり含まれる.露頭に鼻を近づけていた大植が「食べ物の匂いがする!」と意味のつかめないことを口走る.たしかに昼食の時間はとうに過ぎていた.

 ここで実習をおしまいにして林道を引き返した.来るときとは違って引き返すのはやけに早い.

 林道の交差路をすぎてあの大露頭にさしかかった.

 陰地が,奈津美が,そして大植が競って登り始める.動画1 動画2

 そして意気揚々と車へ戻った.

  • Camera: Fuji BigJob DS-270HD and Pentx A3-date
  • Lens: SuperFujinon 6.2mm f.2.8 and SMC Pentax-A 24-50mm f.4
  • Film: Fuji Superia 400 and Super 100
  • Scanner: Epson FS-1200WINS