能登半島北端部地質巡検
2003年6月18日(水)

 九十九湾での海洋調査実習を終えたのは午前11時半だった.時間にかなりのゆとりがあったため,予定していた能登半島西岸の見学をやめて,半島北端部を地層をみながら一周してみることにする.真脇遺跡に向かう田中とヴァンナとは臨海実験所で別れ,実験所から北東に車を走らせるとすぐに恋路海岸だった.まだ6月の海岸はなんとなく寂しげだ.その海岸の北端にふたつの露頭がそそり立っていた.


 もっとも左手にあったのは白色細粒凝灰岩だった.おおまかながらもきれいに成層している.細粒凝灰岩の基質中に安山岩らしい小さな岩片が散らばっているところもある.

 しかし,そのすぐ右手には巨礫を含む凝灰角礫岩の露頭が屹立していた.成層した白色凝灰岩との水平距離は10メートルほど.両者の層位関係はもちろんわからない.

 おもに火山岩からなる礫はやや円磨されているようだ.最大のものは直径70センチはあるだろう.密集する礫のすきまに平行葉理の発達する細粒凝灰岩がレンズ状に挟在する.

 凝灰角礫岩のさらに右手には不思議な形に浸食された白色凝灰岩があった.もっとも下位となる部分には火山岩の小角礫が多量に含まれている.細粒凝灰岩のみからなる部分には平行葉理や不規則な脱水構造も認められる.

 3つ目の露頭から前のふたつを改めて眺めてみる.奥にある白色凝灰岩と手前の凝灰角礫岩との不連続性が原因不明ながらもなんとも興味深い.

 海水浴のシーズンになればこの海岸も多くの客でにぎわうのだろうか.「恋路物語」の看板とすっかり色のあせたポスターが寂しげだった.

 続いて車を走らせて見附島へ到着した.「軍艦島」とも呼ばれる島だけあって海上にそそり立つ姿はまるで大型船のようだ.

 「えんむすびーち」と名付けられた海岸には「愛の鐘」らしきものがつり下げられていた.朝美と奈津美がすぐに駆け寄って紐を引っ張る・・・.われ鐘をたたき割ったような轟音が「えんむすびーち」に響き渡った.

 またも意味不明の行動が・・・.

 見附島へ向かって転石を並べただけの架け橋が作ってあった.

 さっそく全員でわたってみる.しかし,この架け橋は島まであとわずかというところで終わっていた.

 海岸まですごすごとひきかえす.腹いせのつもりなのか朝美がチャ−トの円礫を持ち帰っていた.

 見附島から飯田や平床をとおって能登半島北東端の狼煙に到着した.道ばたの小さな駐車場に車をとめておだやかな日本海をちょっと眺める.佐渡島はさすがに見えない.

 だんだん時間がなくなってきた.狼煙から輪島までは車をひといきに走らせる.海岸のあちこちでみられる波食地形や能登半島北端に特徴的な地辷り地形などは車の窓から眺めてもらう.そして観光地として有名な輪島市の千枚田に午後2時半に到着した.規模が思いのほか小さいのにまずとまどう.「この中にひとつだけハート形に草を植えたところがありまーす」と,たまたま居合わせたバスガイドの方が観光団体に説明していた.右の写真の中にあるはずなのだが・・・しばらくわからなかった.

 そのハート形をやっと発見して意気揚々と車に乗り込む.

 午後3時すぎに輪島の朝市で遅い昼食をとったあと,眠りこける4年生を乗せて県道を穴水へ.そこから能登有料道路をとおって角間に戻ってきたのは午後6時ちょうどだった.


  • Camera: Fuji BigJob DS-270HD and Pentax MZ-30
  • Lens: Super Fujinon 6.2mm f.2.8 and SMC Pentax-FA Zoom 28-70mm f.4 AL
  • Film: Fuji Superia 400
  • Scanner: Epson FS-1200WINS