鶴来町北部曽谷地域(卯辰山層〜医王山層)
2003年12月3日(水),担当:陰地章仁

 鶴来町北部の曽谷へ陰地章仁のフィ−ルドを見に行った.かつて地学実験の初日に受講生たちと訪れたところだ.ゴルフ打ちっ放し場のよこに車をとめてネットぎわを露頭へ向かう.


 裏手の崖を登ったところが最初の露頭だ.よい天気のもと,金沢市街地がとおく見えていた.

 きわめて緻密な黒色の細粒砂岩があった.その下位にはやや脆弱な黒色砂岩がある.卯辰山層の基底だろうか.

 崖から林道へ降りて奥へと進む.

 カーブを曲がってすぐのところに緻密な灰白色の凝灰岩が露出していた.七曲層らしい.御峰層や朝ヶ屋層をとばしてのいきなりの出現には少々驚かされる.

 林道をさらに進むといかにも七曲層らしい平行葉理の発達する凝灰岩があった.

 奇妙な透明斑晶鉱物が含まれる凝灰岩もそのすぐ近くに露出する.

 林道をさらに進んで崖沿いの小径を登る.

 路沿いには大桑層らしい弱固結の黄褐色細粒砂岩があった.しかし,風化のためか粘土化がいちじるしく進んでいた.

 ゆるやかに曲がる林道をさらに奥へ進む.左手に硬い地層が現れる.

 砂子坂層の青灰色泥岩だった.すぐ近くに白色で極細粒の凝灰岩もある.

 林道沿いに同じような岩相が続く.そう思いながら林道横の小径に入ったとたん大桑層の砂岩が出現した.

 いかにも大桑層らしい黄褐色の細粒砂岩だった.生痕によって大きく乱されたらしい泥岩の薄層が挟在している.

 薄い白色凝灰岩らしいものも見つかる.そのすぐ上には細粒の灰色凝灰岩もある.

 緻密で生物擾乱が著しい白色凝灰岩も挟在している.

 この凝灰岩は道路面にも露出していた.これまで確認してきたどの凝灰岩に対比されるのだろうか.陰地の話ではこの付近で貝化石が見つかるらしい.

 林道に戻ってさらに奥へと足を進める.最近の金沢にしては珍しいほどの好天が続く.

 砂子坂層の下位に医王山層があった.典型的な緑色凝灰岩だ.

 これまでの堆積岩類とはうってかわって硬い.

 林道をさらに奥へ歩く.ふしぎな枝振りの木があった.

 林道が大きく曲がるあたりの沢へと入る.沢沿いに医王山層の緑色凝灰岩が露出する.

 ところが小さな滝の直上には砂子坂層の硬い泥岩があった.ここが医王山層と砂子坂層との直接境界のようだ.

 その露頭をあとにして林道へ戻る.そしてそこからちょっと進んだところで沢に降りることになった.

 竹林を下へ下へと降りていく.ここでカモシカの姿をちらりと見かける.その途中の沢の中にひとつの露頭があった.

 医王山層の硬い凝灰岩だった.きれいに成層している.この露頭を見落としていたらしい陰地が岩相を急いで記載する.

 沢をさらに下る.最初に試みた沢は川際が急崖になっていた.この沢を引き返して別の沢から川へ降りる.沢の中は崩壊した医王山層の凝灰岩で埋まっていた.それに加えて枯れた竹が散在していた.降りにくいことといったらはなはだしいものがある.

 ようやく川へと降り立った.あとから陰地と大植が降りてくる.

 川の水は流れこそ激しかったがわりと暖かだった.

 上流へちょっと歩いたところの右手の崖に医王山層が露出していた.

 鮮やかな緑色をした凝灰岩だ.細粒の礫がたくさん含まれている.

 さらに上流には大きな白色軽石を含む白色凝灰岩が露出する.

 左手には小さいながらもきれいな滝がかかっていた.

 川沿いに緻密な緑色凝灰岩がずっと露出していたが,円礫層がときおり挟在する.断層面らしい直線的な亀裂もある.

 川の曲流にはなんらかの規則性があるように思える.岩相の違いによるものだろうか.それとも断層面の影響か?

 斜交葉理が発達する中粒凝灰岩が挟在する.そこを過ぎたところでとおくに砂防ダムが見えてきた.

 砂防ダムの両側にも医王山層が広い範囲にわたって露出していた.下位に緻密な細粒凝灰岩があり,その直上に礫岩が位置する.

 細粒凝灰岩と礫岩の境界はきわめて不規則だ.断層境界のようにも見えるがそれにしてはあまりに不規則のような気もする.

 ここで川を引き返すことになった.凝灰岩でできた河床はとても滑りやすい.濡れた落ち葉があるところや苔むしたところはなおさらだった.

 川へ降りてきた沢を通り過ぎてしばらく歩いたところに小さな砂防ダムがあった.それをかわしてすぐの右手に硬い白色凝灰岩が現れる.医王山層にまちがいないだろう.

 その砂防ダムの下に降りるとその両側に露頭があった.まず右岸側の露頭へ向かう.

 そこにあったのは砂子坂層の軽石質凝灰岩だった.青灰色の硬い泥岩もある.すぐ上に下位の医王山層があるのに不思議だ.

 砂子坂層の泥岩は右岸沿いにずっと続いている.しかし,左岸には医王山層の凝灰岩がある.

 細かい節理の入った泥岩には二枚貝の化石も見つかる.

 川を少し下ったところの左岸側の高いところにいい露出が見えた.登ってみたら砂子坂層の黒色泥岩だった.泥岩の上位には砂岩もある.どうやらこの沢を境に左岸側が相対的に上昇しているようだ.

 すぐ近くの沢の出口付近にも砂子坂層があった.細礫を含む中粒砂岩にはホタテ貝らしい化石がたくさん含まれていた.

 ここで巡検は終わりになった.杉林の小径を上り林道を下っていく.

 県道を右に曲がって少し歩き,ゴルフ打ちっ放し場横の林道に入る.

 途中で一匹の犬が吠えついてきた.犬がきらいな陰地がいやそうな顔をしながら足を進める.

  • Camera: Fuji BigJob DS270-HD and Canon Autoboy D5
  • Lens: Super EBC Fujinon 6.2mm f.2.8 and Canon Lens 32mm f.3.5
  • Film: Fuji V-400
  • Scanner: Canon Canoscan FS-4000US