金沢市医王山西麓田島地域

2006年12月8日(金) 担当:三宅 歩


 学生実験が始まる前にと,三宅歩が調査を行っている金沢市医王山西麓の田島地域へ指導に出かけた.冷たい小雨が降る中を午前8時半に共用車で角間キャンパスを出発.二俣をとおって田島へ.そして医王山へとのびる林道に入り,しばらく走ったところで最初の露頭(1)に到着した.


 ここには白色凝灰岩が露出していた.細粒ながらも医王山層にしては硬くない.

 1cmほどの白色軽石や安山岩とおぼしき小角礫が含まれる.砂子坂層だろうか?


 車を走らせて2番目の露頭へ向かう.林道が途中から砂利敷きになる.この露頭は大きくて見事なものだった.道路が曲がるあたりを境に左右に分かれている.

 露頭の左側には固結度の高い角礫凝灰岩が露出していた.角礫はおもに安山岩のようだ.淘汰はきわめて悪い.

 露頭面には直線的な構造が3方向に見うけられる.その2つはおそらく節理だ.しかし,残るひとつは層理面のようにも見える.

 道路が曲がるあたりの沢には硬い黒色細粒砂岩が露出していた.分布はここだけに限られるようだ.

 その細粒砂岩のすぐ近くには白色角礫凝灰岩が露出する.両者の層位関係はわからない.


 右側の露頭へ行ってみた.ここにも硬い白色角礫凝灰岩が露出する.

 林道をさらに奥へ歩くと角礫が卓越するところが見つかった.礫の淘汰は不良だ.

 そのさらに奥には角礫凝灰岩と緑色凝灰岩とが不規則に接する露頭が観察された.

 緑色凝灰岩にも角礫がやや含まれる.


 3番目の露頭をめざして林道をさらに奥へ向かった.その途中でみかけた大きな露頭でちょっと立ち止まる.セメントの吹きつけが崩れ落ちたところのようだ.

 この露頭には典型的な角礫や白色軽石に富む緑色凝灰岩が露出していた.

 標高が高くなるにつれて霧が深くなってくる.


 そして3番目の露頭に到着.ここに露出するのはやや緑色がかった白色凝灰岩だ.安山岩類の小さな角礫が多数含まれる.

 白色凝灰岩中に厚さ5ミリほどの褐色の砂岩層が挟在する.上下の境界はきわめて明瞭で直線的.層理面なのか断層面なのか判断に困る.

 田島南方の露頭へ移動するため林道を引き返した.その途中で見慣れた黄褐色砂岩が露出するのを見つけた(露頭4).平行葉理が発達する弱固結の細粒砂岩だ.大桑層上部のように思えるが,こんなところにまで分布するものだろうか?


 県道にいったん出て角間キャンパス方向へしばらく走る.田島集落を通り抜けたあたりに露頭があったのでそこで車をいったん停めた.ここに露出するのは角礫と白色軽石に富む細粒白色凝灰岩だった.固結度は医王山層にしては低い.砂子坂層だろうか.

 林道をさらに上ったところで5番目の露頭に到着した.三宅が「不思議な境界がある」と言う露頭だ.露頭中央をほぼ垂直に走るその境界が目にとまる.

 境界の右側は角礫や軽石を含む白色細粒凝灰岩だ.固結度が高い.一方,左側には青灰色の細〜中粒砂岩が露出している.この砂岩には細粒の軽石や黒雲母,そして緑色の鉱物が含まれる.両者の境界は明瞭だがかなり不規則に凹凸する.不整合関係にあるように判断される.医王山層と上位の中新統か鮮新統だろうか?

 細〜中粒砂岩のさらに左側には淡緑灰色の角礫を含む細粒凝灰岩が露出していた.両者の境界はよくわからない.午後に学生実験があったため,疑問を残したままこの露頭を離れて研究室へ戻った.


 午前11時すぎに角間キャンパスの研究室に到着.それにしても寒い日だった.


 学生実験後に最後の露頭で採取した砂を洗って顕微鏡で見てみた.火山岩の岩片や斜長石,そして石英,黒雲母が目立つ.緑色の鉱物も見うけられる.有孔虫などの化石はまったく含まれない.大桑層下部や高窪層とよく似ているように感じた.

  • Camera: Ricoh Caplio 500G wide
  • Lens: Ricoh Zoom Lens 508-17.4mm f.2.5-4.3