金沢市角間および下涌波地域(野外調査実習,その5)

2007年6月8日(金) 担当:塚脇真二


 この日は4年生の崖登りの練習につきあうことになっていた.雷雨注意報が出ていたこともあって手近な角間キャンパス内の沢へ入ることにした.午前8時半に総合教育棟を公用車で出発.弓道場近くに車を置いて,馬術部馬場の裏手から東へのびる沢に入った.6月とあって植生が深い.


 沢を少しつめると正面に崖が見えてくる.ここしばらく好天が続いていたせいか滝の水量はわずかだ.

 この崖には上部更新統卯辰山層が露出する.4年生たちに含礫砂岩や堆積構造をよく見てもらう.

 中粒砂岩には緩やかな斜交層理が発達する.粗粒砂岩の基底には浸食構造もよく観察される.

 滝を左手に見ながら崖を登って尾根に出る.


 尾根から沢へ下りるルートがなかなか見つからない.植生が深くて沢に露頭の存在も期待できない.ここであきらめて沢を下りることにした.


角間キャンパスルート


 4年生からの要請に応えて彼らが実習作業を行っている下涌波の沢に移動した.これまで実習を行ってきた沢のひとつ北西に位置する沢だ.林道の入り口にはクマ出没注意の看板がある.


 林道の入り口あたりから左側に沿って,青灰色の泥質砂岩あるいは砂質泥岩の露頭がある.


 この岩相が林道沿いにずっと続く.砂質泥岩と泥質砂岩の区別はなかなか困難だ.

 林道の途中で左手にある沢に入る.白色軽石を含む粗粒凝灰岩がある.固結度がきわめて低くハンマーの先でさらさらと削り取れるほど.吉岡の下涌波凝灰岩に対比される.

 沢をさらに登ると白色細粒で比較的固い凝灰岩がある.平行葉理の発達が顕著だ.OL2a凝灰岩に間違いない.4年生たちはこの凝灰岩基底の白色極細粒凝灰岩をGMJ凝灰岩と呼んでいる.


 沢から下りたところの林道沿いにも下位の凝灰岩が露出している.発泡がきわめて良好の白色繊維状軽石を多量に含む.伊藤と浅井はこれを木の化石だと確信していたらしい.そう言われてみれば確かに似ている.

 林道左手にある別の沢に入る.ここにもOL2a凝灰岩が露出する.

 その上位には白色軽石や緑色鉱物を特徴的に含む青灰色の中粒砂岩が位置する.しかし,そのさらに上位にあるはずのOL3凝灰岩は見つからない.


 林道を引き返し,さらに北西にある沢へ移動した.移動する途中の水田沿いの林道にも青灰色の砂質泥岩が露出する.

 遠くに見える巨大な露頭をめざして沢に入る.青灰色砂質泥岩がまず位置する.ここが常滑になっていて登りにくい.


 慣れてきたのか4年生たちは滑りもせずによじ登ってくる.

 続いて下涌波凝灰岩でできた小さな崖が出現する.これをかわせば巨大露頭の下へ行けるはずだったが,午後の学生実験の準備があるためここで今日は時間切れ.

 道路端に止めた公用車へ引き返す.

 県道沿いにもクマ注意の看板がある.クマの顔がとても間抜けなのを発見する.

 牧で上涌波凝灰岩の露頭を観察し,正午前に角間キャンパスに到着.午後は地学実験の履修生たちとともに地質図学の実習.

下涌波ルート


今日の全体ルート


  • Camera: Ricoh Caplio 500G wide
  • Lens: Ricoh Zoom Lens 5.8-17.4mm f.2.5-4.3
  • GPS: Sony GPS-CS1K