金沢市上涌波地域(野外調査実習,その4)

2008年7月1日(火) 担当:塚脇真二


 今日は4年生に課していた地質調査実習の総括の日.金沢市上涌波の3ルートでの岩相対比が不明なところをいっしょに見て回った.午後1時すぎに角間キャンパスを公用車で出発.距離の短いルート1は省略してルート2へまず車を入れた.これまでの実習でいっしょに歩いた林道だ.道路脇に車をとめて,このルートでもっともよい鍵層となるOL2凝灰岩(清水ほか,1998)の露頭まで引き返す.


 深い植生の下からこの凝灰岩基底部の岩相やその下位に砂質泥岩があることをまず確認.

 それからルートを歩きつつ凝灰岩の垂直変化を追跡する.白色細粒で緻密な岩相がルート沿いに続く.


 凝灰岩の全層厚は2メートル半ほど.上位の暗灰色砂質泥岩へ漸移的に移行する.


 砂質泥岩の上位には緑色鉱物にとむ青灰色の中〜粗粒砂岩がある.


 そのさらに上位には大きな白色軽石を多量に含む黄褐色砂岩が位置する.

 この上位にあるはずの鍵層OL3凝灰岩(清水ほか,1998)を植生をかき分けながらみんなで捜索.


 朝美が発見.層厚1センチほどの薄い白色凝灰岩だ.この凝灰岩より上位が大桑層中部となる.


 層厚を測りにいった大隅がダッシュで戻ってくる.大桑層中部は同下部に比べて泥質分に乏しくなり,極細粒から細粒の砂岩になる.貝化石がちらほらと観察されるようになる.

 大桑層中部を上位に追いかけていくと,林道が右へ大きく曲がるやや手前に円礫や軽石をふくむ中〜粗粒砂岩がみつかった.吉岡のOM4凝灰岩だが,何度みても凝灰岩にはみえない.

 ここでちょっと林道を離れて小さな滝を訪れた.ここには大桑層中部の典型的な岩相となる青灰色細粒砂岩が露出する.二枚貝の化石もふつうにみつかる.


 公用車へ引き返し,大桑層のもっとも重要な鍵層であるOM3凝灰岩(清水ほか,1998)をみるため車で林道の奥へ移動.どこもかしこも深い植生に被われている.

 OM3凝灰岩を発見.層厚約33センチの緻密な凝灰岩だ.


 吉岡の有名なマヌケステップは植生に被われつくしてわずかな痕跡がのこるだけ.

 調査地域もっとも西となるルート3へ車で移動した.あぜ道に咲くダリアがなんともいい風情だ.クマ出没の注意が目立つ.


 クマ出没の注意があちこちに置いてある.その横をすりぬけてルート3の林道へ入った.

 林道の入り口からずっと大桑層下部の灰白色あるいは暗灰色の砂質泥岩が露出する.薄層凝灰岩らしい淡黄色の層がときおり挟在する.


 林道をさらに歩くと軽石にとむ粗粒堆積物がみつかった.風化した古い崖錐かもしれない.

 林道沿いには狭小ながらも水田が広がる.

 水田地帯を抜けたところで層理面の発達が著しい露頭をみつけた.OL2凝灰岩だ.


 凝灰岩基底の白色軽石をともない暗灰色となる粗粒部がとてもよく観察される.


 林道をさらに奥へ歩く.露頭がありそうな水路に糀が下りる.

 ルート2で確認された緑色鉱物にとむ粗粒砂岩をここで発見.

 その上位には軽石を多量に含む粗粒砂岩も位置する.愛嬌のある顔立ちの毛虫もここで発見.


 この上位にOL3凝灰岩があるはずだがここで露頭がとぎれた.地形図の範囲外にもなってしまうためここで実習終了.

 昨年度の合同フィ−ルドの沢をちょっとのぞいて車へ引き返した.


 午後5時前に角間キャンパスに到着.研究室でのミーティングののちに解散.

今日のルート


  • Camera: Fuji BigJob DS-270HD
  • Lens: Super EBC Fujinon 6.2mm f.2.8
  • GPS: Sony GPS CS-1K