金沢大学自然計測応用研究センター「開所記念シンポジウム」パネル

2002年10月16日
 
環境動態解析分野
スタッフ 助教授 塚脇真二
●日本海における現在の堆積作用ならびに過去2万年間の海洋環境変遷史  代表的な縁海のひとつである日本海は,最深部が3千mをこえるにもかかわらず外洋とは対馬海峡や津軽海峡などの狭小な海峡で連絡するのみであり,このような閉鎖性の高さゆえ日本海は氾世界的海水準変動に対応してその海洋環境を著しく変えてきた。そこでおもに日本海東縁部海域での海洋地質学的調査にもとづき,氷河時代最盛期である約2万年前から約6千年前の海面高頂期をへて現在に至るまでの日本海の海洋環境ならびに堆積作用の変遷を解明する。 ●カンボジアならびにインドシナ半島における過去2万年間の環境変遷史  メコン河は流路長約4000qの大河であり,下流域には世界最大の熱帯湖トンレサップや広大なメコンデルタなどの特徴的な地形が発達する。また,この地域は古代から高度な文明が栄えたことでも知られる。トンレサップ湖やメコンデルタの堆積物の解析にもとづき同湖ならびにメコン河下流域における過去約2万年間の環境や地形の変化を復元し,環境変化と文明の盛衰との関係を探るとともに,将来の気候変動やさまざまな開発にともなう環境の変化を予測する。

●北陸地方における後期新生代地質構造発達史ならびに堆積盆発達史  北陸地方には我が国日本海側を代表する上部新生界の分布が知られる。代表的背弧海盆である日本海の形成過程が世界的に注目されるなか,これらの地層群は日本海ならびに周辺陸域の環境変遷史や地質構造発達史を解明するうえで重要な存在でありその層序や地質構造などの再検討は急務といえる。そこで精密な地質調査による高精度地質図の作成を北陸地方一円で展開し,これにもとづいて北陸地方の後期新生代地質構造発達史を解明するとともに応用地質学や土木工学など関連分野への寄与を目指す。

●東南アジアに分布するマングローブ生態系周辺海域における堆積作用  東南アジアの海岸地域に広く分布するマングローブ林は貴重な生物資源として,また環境保護の見地からその保全が訴えられている。さらに将来予測される海面変動がその立地環境に与える影響も懸念されている。しかし,マングローブ林周辺海域については不明な点が多くこれが立地変動予測や保全対策への障害となっている。そこで海底堆積物の解析にもとづいてマングローブ林周辺海域における堆積作用の詳細を解明し,現在の立地条件を明確化するとともに開発や海面変動による堆積作用の将来的変化の予測を試みる。