金沢市北東部竹又地域(大桑層下部〜中部?)
2002年12月10日(火):担当 加藤晃義

 東京への出張から戻ってみると金沢は思った以上にいい天気だった.まぶしいくらいに日光がさしている.しかし荷物をほどいてフィ−ルドの準備を始めたとたんに雲行きがあやしくなってきた.空がだんだんと暗くなり雪も舞ってくる.暗い車庫で官用車のタイヤをスタッドレスに交換し,おそるおそるシャッターを開けてみると外は真っ白になっていた.そんな天候だったが加藤晃義が担当する金沢市北東部に出かけることにした.


 角間キャンパスから二俣をとおって国道304号に入る.福光町方面へしばらく走ってから「金沢国際ゴルフ倶楽部」の看板で左折する.主要道路では路面の雪はほとんど溶けていたが,ゴルフ倶楽部へ向かう小径は5センチほどの雪でおおわれていた.その小径を少し下ったところに車をとめる.雪は激しさを増したようだった.遠くの尾根が白くかすんでいる.

 車を置いたすぐそばの用水路沿いが最初の露頭だった.沢の入り口の左岸側になる.露頭に近づいても降りしきる雪で地層が見えているのかどうかわからない.写真を撮っても雪の軌跡の向こうに地層らしきものがぼんやりと見えているだけだ.その用水路を越えてはじめて凝灰岩がそこにあるのがわかった.やや黄色味を帯びてはいるが白色といってもいい細粒の凝灰岩だ.きれいに成層している.この露頭では上限も下限もわからないが厚さ2メートル以上はあるだろう.層理面は北西−南東走向で南西に緩く傾斜していた.

 この凝灰岩は全体に細粒ながらも白色の軽石をかなり含んでいる.直径数ミリの軽石が層理面に沿ってならぶ.細粒砂岩とよんでもいいほどの暗灰色の層が挟在している.この岩相は西川のOL2a凝灰岩に間違いない.

 最初の露頭をあとにして沢の中へ入ることになった.オレンジ色の柿の実がモノクロ世界の唯一のアクセントになる.
 
 
 学生たちはもう次の露頭にはり付いていた.降りしきる雪のため露頭があることすら遠目にはわからない.細田の白いウインドブレーカーがなければ人がいることすらわからない.
 

 この露頭には中粒から粗粒といってもいいほどに粗い砂岩が露出していた.わりとやわらかくてハンマーの先で簡単に削り込むことができる.位置から判断してさっきの白色凝灰岩より上位にくるはずだ.この砂岩の上位には粗粒砂を多量に含む青灰色の泥岩がある.泥質を帯びた粗粒砂岩とよんだほうがいいかもしれない.ふたつの層の境界はかなり不規則だ.

 下位の砂岩には多量の礫が含まれている.淘汰も円磨もほとんど受けていない礫ばかりがみつかる.この砂岩は右手にずっと延びていた.

 露頭の右手も同じような岩相だったが礫の量は増減するようだ.ここではホタテガイなどの二枚貝の化石がみつかった.破片ばかりだが中にはきれいな形をしたものもある.

 直径が1センチをこえる礫はやや円磨されているようだ.ストロボライトの閃光に貝化石が奇妙な色を発する.

 沢に設置された砂防ダムをめざして足を進めた.林道があるおかげでいつものダム越えをしなくてすむのがありがたい.積雪がだんだんと厚みを増してくる.

 さっきの含礫中粒砂岩の延長が道路に沿ってときおり露出する.岩相に大きな変化はない.
 
 砂防ダムを右手に見下ろしながら先へ進む.手足がだんだんとかじかんでくる.

 直径2センチほどの青灰色泥岩の偽礫や,同じくらいの大きさの白色軽石がこの含礫中粒砂岩中にみつかった.これらは直線上にならんでいるようだ.
 
 砂防ダムをかわしたところで左手の沢に入ることになった.雪の沢に入るのはあまり気分がいいものではない.

 積雪のため足場がみえない.雪の積もったクマザサはよく滑る.雪に埋もれたササのつるが足首にからみつく.しかも指先の感覚がだんだんなくなってくる.

 沢の奥でわりと大きな露頭がみつかった.露頭面は段差のある滝になっている.陰地を先頭に3人が上の段に登っていく.

 この段の直下の地層には不規則ながらも層理面がみえていた.しかし植生の下から現れたのは同じ含礫中粒砂岩だった.

 段の上にも同じものがあるという.この中粒砂岩の厚さは4メートルをこえることになる.

 段を登った3人が滑り落ちるように降りてきた.そのままの勢いでこの支沢の入り口へと引き返す.

 そして本流の沢を奥へ向かってさらに進んだ.右手の斜面にまた露頭がみつかった.

 ここにも同じ中粒砂岩があった.沢の延びと地層の走向がほぼ一致しているため,この沢ではどこまで行っても同じ層準をみることになるようだ.このやわらかい砂岩の部分が選択的に浸食されたためにこの沢ができあがったのかもしれない.

 流れの幅は2メートルくらいあった.最初は飛び越えたり転石づたいに渡ったりをくりかえしていた学生たちだったが,このあたりでとうとう観念したらしく水に入っていった.

 右岸側の雪の下から白い凝灰岩がみつかった.最初にみたものと同じものだ.
 
 その延長は露頭の高い部分にあった.
 
 
 そして左岸ではこの凝灰岩を間近にみることができた.白色細粒で全体をとおしてきわめて緻密といっていいだろう.ゆるやかな凹凸をくりかえしてはいるが層理面はきわめてはっきりしている.OL2a凝灰岩と確実に対比される岩相だ.凝灰岩の直下には青灰色の泥質岩がある.

 凝灰岩の基底には厚さ2センチほどにわたって白色軽石が密集している.凝灰岩の本体にも白色軽石の密集層がある.直下の泥質岩には小さな礫が含まれている.

 沢をちょっと進んだところで右手の高いところに大きな露頭があるのがわかった.

 雪で滑る斜面を登って露頭にとりつく.

 この露頭を構成していたのも先ほどから見つづけている含礫中粒砂岩だった.白色軽石がかなり含まれている.これで白色凝灰岩の上位にこの中粒砂岩があることが確実になった.

 その上位には礫をたくさん含む泥質岩がある.大桑層の下部と中部とを区分する西川のOL3凝灰岩が,この地域にもし分布するのならばこの層準あたりにくることになる.しかし露頭面にはそれらしきものはみあたらない.

 OL3凝灰岩捜しが始まった.しかしハンマーの下から現れるのは青灰色の泥質岩ばかりだ.

 雪は小降りになったが沢の中はだんだん暗くなってきた.露頭のようすがよくみえなくなってくる.しかも指先の感覚がなくなっていて砂か泥かの判別もつかなくなってきた.

 遠くから雷鳴が響くようになり雪がアラレに変わった.ここで巡検をやめて車へ引き返すことにした.

 やってきた沢を引き返す.足先の感覚がなくなっているのか学生たちは水の中を平気で歩いていく.

 学生たちは沢を足早に下っていく.寒さを紛らわすためなのかときおり駆け出している.

 遠くに車がみえてきた.学生たちはすでに到着している.砂防ダム横の林道を下る.

 そして最後の坂を上ってやっと車に到着する.車のまわりには3つの雪だるまができていた.それにしても寒いフィ−ルドだった.

  • Camera: Casio G.Bros GV-10 and Fuji 工事用カメラK-28
  • Lens: Casio Lens 4.6mm f.2.8 and Fujinon 28mm f.3.9
  • Film: Fujicolour Reala Ace
  • Scanner: Epson FP-1200WINS