金沢市上涌波地域(野外調査実習,その2)

2007年5月26日(土) 担当:塚脇真二


 2回目の地質調査実習を金沢市北東部の上涌波で実施した.午前8時に研究室集合.簡単な打合せと歩測の練習のあと公用車で現場へ向かう.上涌波から南へ入る林道の途中に車を止め林道の入り口まで歩いて引き返す.そこにある大きな露頭(070526-01)が1番目の観察対象だ.地図上での位置の確認や柱状図の書き方,データの取り方などの説明後に露頭にとりつく.


 この露頭に露出するのは下部更新統大桑層の最下部だ.層理面が不明瞭ながらも確認される暗灰色あるいは青灰色の砂質泥岩からなり,吉岡が発見した凝灰岩が幾層か挟在する.露頭表面にはイオウが黄色く析出している.

 層理面をハンマーで切り出して走向・傾斜を測る練習.傾斜が緩いため正確な走向はとりにくい.


 厚さ数ミリの黄白色泥岩が3枚挟在する.その泥岩を使って走向傾斜を測定する.

 2番目の露頭(070526-02)は最初の露頭のちょうど向かい側となる.両露頭の位置関係,とくに上下関係の確認をクリノメーターと歩測,そして地形図で正確にやってもらう.

 ここに露出するのも青灰色の砂質泥岩だ.微細な白色軽石や黒色植物片がまれに認められる.風化が進んで黄白色となった層準が挟在する.


 林道を奥へ歩いて3番目の露頭(070526-03)へ.それにしてもいい天気だ.

 この露頭でも青灰色の砂質泥岩が確認される.また,同じ青灰色ながらも細粒凝灰岩が挟在する.吉岡ほか(1999)のOB3凝灰岩.淘汰がきわめていい凝灰岩だ.

 3番目の露頭末端から東側の沢(070526-04)に入った.目線で高さを確認しながら枯れた竹で覆われた斜面をよじ登る.途中に黄白色の砂質泥岩が露出する.


 さらに登ると青灰色の砂質泥岩あるいは泥質砂岩が露出するようになる.これまでのものに比べてやや軟弱となる.

 沢の途中にあるちょっとした崖に到着.この崖の基底には粗粒から極粗粒で脆弱な黄白色凝灰岩がある.吉岡ほかの下涌波凝灰岩だ.

 この凝灰岩は上位に向かって細粒化する.それとともに構成粒子の淘汰が良好となる.


 崖によじ登った長田がさらに上位にある凝灰岩を確認する.4年生は崖下で下涌波凝灰岩の垂直変化やその上位となる青灰色泥質砂岩の岩相などを記載する.このあたりになると泥質砂岩に緑色岩片が認められるようになる.

 沢はまだまだ上へ続いているが,ルートの取り方を練習するためここでいったん林道へ降りる.

 林道をやや奥へ歩いたところで露頭をいくつか確認する(070526-05〜06).ここに露出する下涌波凝灰岩には白色軽石が層理面に沿って配列する.


 上位に向かって細粒化するのは沢沿いの露頭と同じだ.微細な白色軽石が多量に含まれる.

 さらに奥の露頭(070526-07)では長田が確認した凝灰岩が手の届く位置まで降りてくる.清水ほかのOL2a凝灰岩だ.4年生たちが崖を登って観察に行く.

 上下の砂質泥岩が塊状なのに対し,この凝灰岩は層理面の発達で特異な印象を与える.


 そしてさらに奥へ移動.林道沿いにずっと露頭が続く(070526-08〜09).

 ここではOL2a凝灰岩が道路の高さにある.下位の泥質砂岩との境界が確認される.白色緻密で固結度が高いのが特徴だ.露頭表面では層理面が目立つがハンマーで削るとそれが見えなくなる.

 この露頭での観察を終えたあと公用車で角間キャンパスへ戻った.


 帰り道には林道をさらに奥へつめて神谷内をとおるルートにした.往路に比べて距離がずいぶん長くなる.GPSの電池が途中で切れてしまったのが残念.午後2時前に研究室に到着.データのまとめ方や今後の予定などについてのミーティングののちに解散.



  • Camera: Ricoh Caplio 500G wide
  • Lens: Ricoh Zoom Lens 5.8-17.4mm f.2.5-4.3
  • GPS: Sony GPS-CS1K