大学院自然科学研究科「地震・地盤工学演習」の記録
2004年度前期(7月23日:金沢市大桑町の犀川河床)

 大桑町を流れる犀川中流域の河床で,3回目となる演習を野外実習として実施した.駐車場で学生たちに実習案内を配布し,その案内にしたがって行動するように指示する.それから全員で犀川河床へ降りてみたところ,晴天が続いたせいか犀川の水量はこれまでに見たこともないほどに少なかった.福井県が大水害に見舞われたのがうそのようだ.ただ,川水は泥で濁っていた.


 大部分の学生たちは配付資料の観察地点1(中新統犀川層)のある上流側へ歩いていった.一方,一部の学生たちが下流側へと向かうのが見えた.

 思わぬ低水位のため河床が広々と現れていた.学生たちは思い思いの場所で観察を開始する.

 川の中ほどには貝化石が一面に露出するところがあった.巣穴痕を中心とする生痕化石や白色軽石もその近くに散在する.

 わりと大きな炭化植物破片が密集するところがある.フナクイムシの食痕がびっしりと残る木片もある.

 そのやや下流側には奇妙な形をした石灰質ノジュールがあった.ノジュールの表面には貝化石が散在している.

 このあたりの犀川層は細粒から中粒の凝灰質砂岩で構成される.生痕化石の周囲はやや泥質となる.

 奇妙な形の生痕があった.どのような生物が残したものかはわからない.合弁の二枚貝化石もふつうに見うけられる.

 観察地点3となる犀川層と大桑層との不整合へ移動した.一部の学生たちが不整合探しを試みているところだった.

 川の中ほどまで入り込んでいる学生がいる.その一方で,不整合をまたぎながら不整合を探す一群もある.

 不整合面をすぎて振り返ると,不整合直上で大植が何やら説明をしているのが見えた.正しいことを言っているのかどうかは不明だ.

 更新統大桑層に入ると露頭面に節理が目立つようになる.巣穴状生痕がびっしりと発達する層準もある.

 低水位のおかげでふだんは水没している2枚の凝灰岩層も陸化していた.OP凝灰岩が細かくひび割れた独特の岩相を見せてくれる.

 貝殻橋直下の大桑層の砂質泥岩中にわりと大きな礫が層を成すのを発見した.円礫がほとんどだが角礫もまれに見つかる.

 大桑層の中部に入ると生痕化石が大型化する傾向にある.最初の貝化石層がここで出現する.

 そして観察地点4となる大桑層中部のO1凝灰岩層へ到着した.陰地章仁が凝灰岩についての説明をすでに終えたところだった.

 露頭が乾燥しているところでは白色を呈する凝灰岩がとくに目立つ.

 観察地点2では更新統大桑層の主岩相を何人かが観察しているところだった.はるか遠くに水中で遊びはじめた連中の姿も見えた.

 ここでいったん道路に上がり,ボート小屋横の階段を下りて河床にでた.


 水位の下がりきった河岸には貝化石層がよく見えていた.

 はるか遠くに地点2や4で観察を続ける学生たちの姿が見える.手前の露頭付近からは女子学生の一群が姿を現す.

 観察地点5となる貝化石密集層のあるあたりへ行ってみると,やや下流側の対岸に6人の学生がいた.水中に入っているのもいる.一般教養課程の地学実験からお忍びでついてきた3人の姿もある.

 連中は思い思いに飛び込みを楽しんでいた.

 水が濁っているのがやや残念なところか.

 こちら側の河岸では学生たちが露頭をまじめに観察している.

 飛び込み隊は上流側へ移動をはじめた.どこへ行くつもりなのかはわからない.

 この付近では大桑層を特徴づける貝化石層をよく見ることができる.長さ70センチにも達する長大な生痕化石もある.

 曲がりくねった形状はおそらくカニが残したものだろう.

 一部の学生たちが引き上げはじめるのを確認し,午後4時前に演習を終了して研究室へ戻った.

  • Camera: Casio G.Bros GV10 and Sony Handycam PC120 NTSC
  • Lens: Casio Lens 4.2mm f.2.8 and Carl Zeiss Vario-Sonnar 4.2-42mm f.1.8