土木建設工学科講義「地質学概論」の記録(4)
2004年度後期(11月9日:金沢市大桑町の犀川河床)

 第4回目の実習「地質柱状図の作成」も大桑町の犀川で実施した.駐車場で今日の実習内容について説明し,それから全員で歩測の練習をやってから実習開始.大桑貝殻橋から見下ろすと犀川の水は前回とはうってかわって低かった.上流側では地層が河床に広々と露出している.


 一方下流側の露頭は礫に覆われつくしていた.

 まず上流側の河原へ降りる.上流の不整合あたりから削られ流されてきたらしい岩塊がある.不整合のあたりにはすでに学生たちが群がっていた.

 不整合があるあたりの河床地形もかなり変化していた.瀬が以前よりも急傾斜になったようだ.

 河床の露頭面には川の流れに平行な溝が幾筋も認められる.台風による増水で運搬された巨礫の痕だろうか.

 犀川層となる不整合やや上流側の露頭のあちこちには石灰質ノジュールが白く浮き上がっていた.その中に樹幹化石を含むノジュールを陰地が見つけ出した.

 河床の犀川層はこれまでに見たことがないほどに広々と露出していた.河床ではこれまで未確認だった泥岩の層準まで見ることができる.

 そのやや上位となる凝灰質砂岩の層準には貝化石が一面に散在する.奇妙な形をした石灰質ノジュールも見つかる.

 河床地形が変わっていたおかげで犀川層と大桑層下部との不整合がよく観察されるようになっていた.

 不整合面に沿って分布する基底礫がこれほどよく見えるのは珍しい.

 犀川層の観察を終え柱状図をここまで書き終えた学生たちは不整合を次々と越えていった.

 大桑層下部となる砂質泥岩には植物化石がたくさん含まれている.

 見事に層をなす植物化石層もあちこちに挟在する.そこから貝殻橋をくぐってさらに下流へ移動した.

 これまでO1凝灰岩がよく観察された露頭はいくらか削られたうえに半分くらいが礫に埋もれていた.しかし,対岸側では以前にもましてよく観察できる露頭が出現していた.

 さらに下流へ足を進める.一面の礫に覆われているものの,川の中央付近には大桑層中部の露頭が健在だった.

 O2凝灰岩の露頭もちゃんと見つかった.しかし,その周辺には一面の礫層が広がっていた.

 河原にあがる.台風の増水で植生はすっかりなぎ倒されていた.一本の立木に女性の下着が器用にひっかかっていた.O3凝灰岩を越えてさらに下流へ行く.

 水で磨き上げられた貝化石層はじつにきれいだった.露頭にはごく小規模の逆断層がいくつか発見される.

 学生たちの半数くらいはもうこの露頭にまで到達していた.

 前回の実習で発見した逆断層はだいぶ見にくくなってはいたがまだ健在だった.大桑層中部の細粒砂岩にも表面に削られた痕が残されていた.キリガイダマシの断面をきれいにみることができる.

 今日の実習のゴールとなるこのあたりにもすでに何人かの学生がいた.

 遠くに新しく建設されている橋が見える.水中には小魚の姿もある.

 ここでしばらく待っていると最後の学生たちもやってきた.

 それにしても磨き上げられた露頭は見事だ.これならば右岸と左岸とで貝化石層が連続することがよく理解できるだろう.教科書に使いたくなるほどの露頭状況だ.

 最後の何名かが実習を終えるのを見届けて今日は終了.研究室へ戻った.

  • Camera: Fuji BigJob DS-270HD
  • Lens: Supe EBC Fujinon 6.2mm f.2.8