自然科学研究科講義「堆積環境学」の記録(3)
2004年度後期(11月20日:手取川流域の地質見学)

 第3回目の講義は手取川に沿って下流から上流へと地質の名所を巡ることにした.角間キャンパスを午前8時半に出発し鶴来をとおって鳥越へ.ここで弘法大師が発見したと伝えられる弘法池を訪れた.


 日本の名水百選にも数えられるきれいな水だ.この池の成因はポットホールだと言われているがそれにしてはあまりにも深すぎる.せっかくなのでみんなで一口ずつこの水を味わう.ただの水,とは陰地の感想.

 続いて弘法池近くの手取渓谷を橋の上から眺めた.こっちは火山岩が分布する上流側.

 そして下流側.凝灰岩が分布する.エメラルドグリーンの水が美しい.

 国道をさらに走って手取渓谷半ばにある綿ケ滝を訪れる.コンクリートの階段を川へ下りていくと滝が見えてきた.

 滝の下流側では浸食された火山岩が複雑な地形を呈している.

 渓谷の左右からもいくつかの滝が流れ込む.


 火山岩には石英で満たされた節理が走る.

 ここでいいものを見つけた.川へ流れ込む水流が形成した小さな扇状地だ.これを使って手取扇状地の形状や扇状地の形成過程などを説明した.

 滝直下の水もエメラルドグリーンだった.

 紅葉がまだ残る木々がある.好天の下に稲が刈り取られた田が広がる.

 手取川沿いに車を走らせ濁川橋で左折し,さらにこの橋の下をくぐって尾口村瀬戸野のキャンプ場に着いた.

 手取川の右岸に手取層群桑島層の砂岩泥岩互層が分布する.

 リップルマークの発達で知られる左岸側の露頭は礫と植生とですっかり覆いつくされていた.

 不明瞭ながらもリップリマークが観察されるところが右岸側で見つかった.

 右岸側の露頭は上流に向かって連続する.

 極細粒の砂岩が卓越し黒色頁岩の薄層が挟在する.

 ここで化石探しを始めた.陰地がじきに貝化石のかたまりを見つけ出した.


 キャンプ場付近の紅葉が見事だった.

 続いて手取川ダムを訪れた.

 足元にいくつもの礫岩が転がる.手取層群五味島層の礫岩だ.

 ロックフィルダムらしい景観が広がる.


 昼食後,恐竜化石の発見で有名な「化石壁」を対岸から観察した.

 このあたりからだんだんと空模様が怪しくなってきた.

 市ノ瀬へ向かう途中の河原にある「百万貫の岩」を最後に訪れた.河原にはこの岩を説明する石碑がいつの間にか建っていた.

 高さ15メートルほどの大岩は対岸の道路からもよく目立つ.この岩が礫岩でできていることが遠目にもよくわかる.雨が落ち始めたので巡検はここでおしまいにした.

 鳥越村まで国道を引き返すと天気はふたたびよくなってきた.そのまま車を走らせて午後4時前に角間キャンパスへ戻った.

  • Camera: Pentax Optio S4
  • Lens: SMC Pentax Zoom 5.8-17.4mm f.2.6-4.8