地学実験の記録
2004年度後期(その1:10月1日〜10月22日)

10月1日:ガイダンス(地学学生実験室)

 台風も過ぎ去って朝からすばらしい晴天だった.


 午前中から学生実験室の掃除にとりかかる.実験室の窓も蛍光灯が映るほどに磨き上げた.

 午後1時.受講希望者はたったの2名.後期にしても少ない数だ.ふだんどおりに実験の説明をし,地質調査の機材の配布,そして歩測実習とクリノメーターの使い方をTAたちと教えて解散した.

10月8日:地質図学実習1(地形図の読み方:地学学生実験室)

 最初の野外実習に行く予定だったが正午前から雨が降り始めた.台風22号の影響だろうか.しかたなく室内で地質図学実習をすることにした.黒板を使って地形図や等高線があらわす意味についてまず説明する.


 そして実習に入ってもらった.慣れない作業に受講生たちはとまどい気味だ.

 3人のTAたちがつきっきりで指導してくれる.

 TAたちが油粘土を使って地形模型を作ってくれた.

 その模型を手に眺めながら作業を進める.実験が終わるころにはさまざまな副産物もできていた.

10月15日:野外調査実習(1.金沢市大桑町の犀川河床)

 今学期最初の野外実習だったが.塚脇と技術員の陰地はともに午後に講演を頼まれていた.そのためポスドクの堂満とTAのふたりが受講生たちを犀川河床の犀川層と大桑層の分布地に案内した.秋晴れのいい天気だったようだ.犀川の水位も低くて地層が広く露出している.


 まず犀川層の観察.

 続いて大桑層に挟在する凝灰岩の観察.

 そして大桑層中部の青灰色砂岩からの貝化石の採集.無事に終わってくれたようで安心した.(以上,撮影は堂満華子)

10月22日:野外調査実習(2:金沢市野田山の林道)

 当初の予定では金沢市の上辰巳へ実習に行く予定だったが台風の影響による犀川の増水が懸念された.そこで予定を変更して野田山へ向かった.林道の入口にはもうすっかりおなじみになったクマ出没の貼り紙がある.ここで現在位置を受講生に確認してもらい実習を開始した.


 林道には小枝や木の葉が散らばっている.その林道をしばらく歩いた左手に露頭があった.

 この露頭は強い風化を被った弱固結の礫岩だった.おもに亜円礫から構成されるが亜角礫もふつうに含まれている.礫岩全体としての淘汰は悪い.

 新鮮に見える露頭も一部にはある.巨礫ともいえる円礫も混じっている.ここで礫岩の定義や観察の仕方などについて受講生に説明しておく.

 林道をしばらく下った右手にまたクマ出没の貼り紙があった.真新しいものだ.その反対側にいつも訪れる大桑層の露頭がある.露頭の直上にあった大きな木が横倒しになっていた.

 倒木の下に露頭は健在だった.ここには大桑層上部の弱固結黄褐色細粒砂岩がある.安全を確認したうえで受講生たちにそっと露頭を叩いてもらう.

 その左手には先ほど見たばかりの礫岩とこの砂岩との境界が見えていた.ここで両者の位置関係を確認してもらう.

 ここで雨が降ってきた.竹林の中に雨宿りをするが雨はだんだんと本降りになってきた.

 実習の中止を考えながら自動車を取りに林道を引き返す.しかし,車のところへ戻ったあたりで雨はあがってしまった.

 雨がいつ降り始めるかわからない空模様だったため,3番目の露頭へは車で移動した.烏骨鶏の養鶏場近くにある泥岩の露頭だ.ここには中部中新統の御峰層が露出している.

 ここで泥岩について説明する.足元では沢ガニが見つかっていた.

 青灰色の緻密な泥岩には黄褐色の凝灰岩が挟在する.

 あとから駆けつけてきた加藤さんと堂満とが受講生に有孔虫について説明する.わりと大きな底生有孔虫が泥岩に含まれていた.まだ午後4時前だったが,暗くて地層の観察ができなくなってきたため今日の実習はここまでにした.

 台風による増水のようすを見るため受講生たちともども犀川へ行ってみた.最初に訪れた大桑では火曜日の実習のときとは川のようすが大きく変わっていた.中州に生えていた植生が一掃されている.

 大桑貝殻橋の橋桁や基礎には流木がうずたかく堆積している.

 河床の露頭は汚れが洗い流されてとてもよく見えていた.川の中ほどには大きな岩塊があった.火曜日にはなかったものだ.犀川層との不整合あたりの地層の一部が削剥されてここまで流されたものらしい.

 橋の中ほどに行ってみると増水のようすがよくわかった.まず上流側.火曜日に工学部の学生たちが群れていたOP凝灰岩付近の河床はすっかり水の下だった.

 下流側も同じようなものだった.川幅の広い左岸側の流路に泥水が流れ下っている.右岸のO1凝灰岩もわずかに見えるだけだ.

 車を走らせて今日の予定地だった上辰巳へ行ってみた.ここでは川幅が狭いだけに増水がより著しいものに思えた.

 学生たちと崖渡り競争を繰り広げた露頭が半ばまで水没している.辰巳用水の取水口にも泥水が流れ込んでいる.

 犀川にかかる橋に移動してみることにした.

 砂子坂層を観察するはずだった上流側の露頭は半分以上が水没していた.河床の断層を観察できるあたりも泥水ですっかり被われている.

 下流側では泥水が激流となっていた.ここまで見届けたのちに大学へ戻った.

  • Camera: Pentax Optio S4, Fuji BigJob DS-270HD and Casio G.Bros GV10
  • Lens: SMC Pentax 5.8-17.4mm f.2.6-4.8, Super EBC Fujinon 6.2mm f.2.8 and Casio Lens 4.3mm f.2.8