地学実験の記録
2006年度後期(その1:10月6日〜11月3日)

2006年10月6日:ガイダンス(地学学生実験室)

 後期TAの3名と学生実験室の掃除をしておく.すべての実験台をきれいにしたのに,受講生は理学部の男子が2名と少なかった.しかも外は強い雨で軽い野外実習すらできない.屋内で実験の概要をまず説明し,実習道具や連絡方法などの確認をしておしまいにした.



2006年10月13日:野外調査実習(1:金沢市野田山)

 今日は朝からいい天気だった.当初の予定どおりに野外調査実習を実施する.午後1時すぎに共用車で角間キャンパスを出発して野田山へ.昨日,クマが出たばかりだという野田山墓地をとおって平栗へ向かう林道の入り口あたりに車を停めた.そして実習目的や注意点などを受講生に説明し林道を平栗方面へ歩き始めた.林道を200メートルほど歩いたところの露頭が最初の観察地点だ.


 この露頭には弱固結の礫岩が露出している.受講生たちにはまず自分たちで好きに観察してもらい,礫岩とはどういうものかを肌で感じてもらうことにした.礫の大きさや形状,配列などに注意を払うよう指導する.いつもは大型トラックが頻繁にとおるこの林道だが,今日はなぜか交通量が少ない.


 それから林道をさらに下って途中の露頭に立ち寄った.秋もなかばだが植生はまだまだ深い.身長のあるTAの村Pがクモの巣をはらいながらまず藪に入ってくれる.

 竹藪をちょっと入ったあたりに露頭がある.頭をかがめなければ入れない.

 ここには弱く固結した黄褐色で無層理の細粒砂岩が露出している.ここで受講生たちに砂岩とはどんなものかを理解してもらう.

 斜面をやや登ったところで最初にみた礫岩とこの砂岩の境界を見ることができる.この露頭で砂岩の上位に礫岩があることが理解できる.

 さらに林道を下っていく.それにしてもいい天気だ.

 林道の途中でさらに竹林のある斜面を登る.ここでも砂岩と礫岩の境界をみることができる.

 この砂岩・礫岩境界が先の露頭でみた境界とほぼ同じ標高であることを認識してもらい,両者の境界がほぼ水平に広がっていることを理解してもらう.

 林道沿いに同じ黄褐色細粒砂岩がしばらく連続する.崖登りの練習にうってつけのセメント壁もある.

 セメント壁を過ぎたあたりで道路沿いの露頭は淡褐色の泥岩に変わる.両者の境界は不明だ.このあたりでは流水のせいか泥岩の風化が著しい.

 さらに林道を下って「烏骨鶏の里」にさしかかったあたりに泥岩の新鮮な露頭がある.

 ここでは硬くて緻密な青灰色の泥岩を見ることができる.受講生たちに泥岩をしっかりとみてもらった.泥岩に挟在する白色凝灰岩もこの露頭でみることができるが風化した泥岩と見分けにくい.

 林道をさらに下っていく.

 道路沿いに白色軽石に富む凝灰岩が現れる.一部では斜交層理の発達が著しい.

 林道が下りきったあたりでこの凝灰岩を観察してもらった.

 そして林道から降りて付近の沢へ.ここには凝灰岩の大きな露頭がある.人工的に削りこまれたものなのか,露頭には大きな穴が穿たれている.村Pとともに対岸へ渉った.

 下位には泥岩といってもいいほどに緻密な青灰色細粒凝灰岩が,一方上位には粗粒で軽石に富む凝灰岩が位置する.

 暗くなった沢を村Pが足をすべらせながら対岸へ戻っていった.日が落ちてきたため午後4時で野外実習終了.角間キャンパスへ戻った.


2006年10月20日:地質図学実習(1:地形図の読み方) ※タイ出張中

 メコン河会議に出席するためタイに出張中.自然科学研究科の高原利幸さんの監督のもと,TA諸君に地形図学実習を実施してもらった.


2006年10月27日:野外調査実習(2:大桑の犀川河床)

 朝方は雨模様だったがお昼前には秋晴れの好天となった.自然科学研究科の加藤さんに来てもらえたため,予定を変更して第二回目の野外調査実習を大桑町の犀川河床で行った.午後1時に角間キャンパスを共用車で出発.山側環状を通って10分ほどで現地に到着した.受講生たちにはすぐに現在地を確認してもらう.


 犀川の河原に全員で降りる.これほどまでに水位の低い犀川は13年目にして初めてだ.露頭が河原いっぱいに広がっている.

 河床の浸食地形もその形状がよくわかる.

 上流側の犀川層の露頭から実習に入ることにした.受講生たちにはまず20分間の自主観察を行ってもらう.地層の構成物にとくに留意するように伝えておく.

 もっとも上流に露出する犀川層の上位層準を見に行ってみた.下位よりも明らかに細粒となる.貝化石などもほとんど含まれなくなる.

 水位が低くて露頭面積がとても広いため,ぶらぶらと歩いているだけでいろいろなものが見つかる.これは貝化石とまん丸い石灰質ノジュール.

 合弁の二枚貝化石,そして炭化した植物の破片.

 木片化石内に密集する生痕化石.

 比較的大きな生痕化石もある.小さな白色軽石が多産する層準もある.犀川層についての説明を受講生に加えてから下流側へ移動した.

 100mほど下流側へ行ったところで足下に露出する大桑層下部について説明した.そして,犀川層と大桑層とに大きな時代差があることを話し,受講生たちに両者の不整合をさがしてもらうことにした.

 下位の犀川層は凝灰質の灰色中粒砂岩から構成される.一方,上位の大桑層下部は細粒で泥質の暗灰色砂岩からなる.両者の違いはよく理解できるようだがその境界をさがすとなるとなかなか難しいようだった.

 水位が低いおかげで河床の段差がよくわかる.不整合面には中円礫からなる基底礫岩がよく見えていた.

 大桑層下部についてここで説明しておく.植物化石や露頭表面の黄鉄鉱がよく見えていた.

 さらに下流へ歩くと2枚の凝灰岩層がじつに見事に見えていた.これは下位のOV凝灰岩.

 その上位にOP凝灰岩が位置する.

 ここで受講生たちを共同担当者の加藤さんにあずけ,化石採集用のビニール袋をとりに戻ることにした.河原を引き返すと不法投棄された大きなソファが河原にあった.廃棄物法が厳しくなって以来,河原に不法投棄されたさまざまな廃棄物が目立つようになったように思う.しかし,テレビや冷蔵庫はよく見かけるがソファを見るのはは初めてだ.

 ビニール袋を自宅で手に入れて現地へ戻った.駐車場のイチョウの木が黄色く染まりかけていた.カヌー小屋近くの会談からさらに下流となる河原へ降りる.

 そこには小さな虫の柱が立っていた.それを払いのけながら河原へ向かった.

 このあたりの水位も珍しいほどに低かった.昨年崩落した河岸の一部がほぼ完全に離水している.

 さらに下流へ行くとそこでは化石採集がすでに始まっていた.午後3時ちょうどだというのに日がすっかり傾いている.

 ふだんはかなり急な流れとなるところだが,今日はゆったりと水が流れていた.ポットホールが発達する左岸もほぼ完全に離水していた.

 受講生たちは貝化石の採集に熱心に取り組んでいた.その奥ではTAたちが大きなホタテガイを掘っていた.

 露出状況がいいわりには目立っていい化石は見あたらない.

 離水した部分が奇妙な形状をさらしていた.

 午後3時50分に実習終了.角間キャンパスへ戻った.

2006年11月3日:大学祭&文化の日のため休講


  • Camera: Pentax Optio S4 and WPi
  • Lens: SMC Pentax Zoom 5.8-17.4mm f.2.6-4.8 and SMC Pentax Zoom 6.3-18.9mm f.2.6-4.8