地学実験の記録
2006年度後期(その2:11月10日〜12月1日)

2006年11月10日:野外調査実習(3:金沢市上辰巳)

 いい天気だったが肌寒くもあった.予定どおりに上辰巳での野外調査実習を行った.角間キャンパスから山側環状をとおって20分ほどで現場に到着. 犀川の水位はこの日も低かった.


 駐車場で簡単に説明したあとすぐに最初の露頭へ向かう.犀川の水位はこれまで見たこともないほどに低い.流れもまったくないといっていいほどだ.すべりやすいが藪のない川の中をゆっくりと歩いた.


 TAと受講生たちは藪をかきわけながら河岸を歩く.離水した河床に斜交層理が発達する砂子坂層の凝灰質砂岩が露出している.

 橋の下をくぐってさらに上流へ.円礫だらけの河原は歩きにくい.河原に礫がなくなるところで崖にとりつく.

 崖を伝いながらさらに上流へ.それにしても静かな犀川.

 犀川が大きく曲がるところで最初の観察を始めてもらった.ここには中新統砂子坂層の凝灰質砂岩が露出する.水位が低いしたったふたりなので観察スペースは十分だ.

 新しいカメラの接写モ−ドで砂岩に含まれる大型有孔虫を撮ってみた.なかなかいい感じに撮れたのでフラッシュをオンにしてみたら,光がレンズでさえぎられて失敗.このカメラでは接写でフラッシュが使えないことがわかった.

 観察を終えて対岸へ移動する.TAの三宅がまず渡渉ルートを探しに行く.残るふたりのTAと受講生がそれに続く.


 ちょっとは濡れたようだが無事に対岸へ移動した.

 観察したばかりの露頭を対岸から眺め,つづいて下流へと移動した.

 研究室のイベント崖の近くをとおり,辰巳用水の取水口をこえ,堰をわたって下流へ進む.

 取水口にほとんどの水が流れ込むせいか下流には水がほとんどない.礫だらけの河床を下流へさらに向かう.

 家ほどもある転石を乗り越え,ぬかるみの細い路を歩いてさらに下流へ.

 そして貫入岩が観察される崖にようやく到着した.玄武岩の柱状節理が見事だ.


 観察と説明が終わったあたりで小雨が落ちてきた.急いで駐車場へと引き返す.

 雨の中の渡渉にはなんだかもの悲しいものがある.雨に濡れた円礫はとてもすべりやすい.

 堰を渡り取水口を越えて駐車場へ戻る.

 雨が小降りになってきたので露頭ひとつを観察していくことにした.川を渉っていつもの崖にとりついた.受講生やTAたちもあとに続いてくる.

 ここで受講生たちに砂子坂層の凝灰質泥岩とそこに含まれる植物化石を観察してもらった.きれいな葉の化石がすぐに見つかる.

 やや上流へ移動し絶壁に露出する砂子坂層の斜交層理について説明する.これで今日の実習はおしまい.

 駐車場に戻り共用車に乗って角間キャンパスへ戻った.

 午後4時すぎに角間キャンパスの学生実験室に到着.まとめをやって解散.

2006年11月17日:地質図学実習(2:地質図の読み方) ※カンボジア出張中

 シェムリアプ川の河岸調査のためカンボジアに出張中.自然科学研究科の高原利幸さんの監督のもと,TA諸君に地質図学実習を実施してもらった.


2006年11月24日:地質図学実習(3:空中写真の読み方)

 この週末が寮祭だということで受講生は1名だけだった.そこで準備しておいた資料を使いながら空中写真や地形図から地質構造を読み取る方法について黒板で説明し,続きは次回以降への持ち越しとした.


2006年12月1日:野外調査実習(4:金沢市医王山)

 今日から12月.野外調査実習の最終回ということで研究室4年の川戸慎也が調査を担当する金沢市医王山のフィ−ルドを全員で見学に行った.冷たい雨の降る悪天候の中を共用車で出発したが,途中からなぜかいい天気になってきた.山側環状道路をとおり湯涌温泉をへて狭い林道へ入る.キャンパスから20分ほどで最初の露頭に到着した.


 ここには中新統医王山層の緑色凝灰岩が露出する.受講生2名にはさっそく自由に露頭を観察してもらう.

 濡れて足場の悪い中を彼らはあちこち叩いていた.

 そのハンマーの下から緑色凝灰岩の角礫が散在する白色凝灰岩が現れた.白色軽石に富む凝灰岩も見つかる.

 林道をさらに上って次の露頭へ移動した.

 最近の崖崩れで出現したばかりだという大きな露頭があった.受講生たちには露頭の観察にさっそく入ってもらった.

 ここに露出するのは淡褐色の細粒凝灰岩だった.露頭表面が象皮状なのが特徴的だ.安山岩の小さな角礫がときおりみうけられる.

 この大きな露頭の右手にはより新鮮な露頭もあった.

 林道をさらに上って3番目の露頭に到着した.車から降りて対岸をみたら,そこには成層した凝灰岩らしき露頭があった.おおざっぱに東西走向で南に25度程度傾斜している.三宅と川戸,そしてTAの神納がそれを観察するため沢に降りていった.

 受講生たちにはここに露出する礫岩を観察してもらう.医王山層には珍しい円礫岩だ.礫の淘汰は不良ながらも個々の礫の円磨度は高い.礫種はおもに安山岩.露頭全体が個々の礫を含めてじつに硬い.

 TAの村Pが受講生の安全確保に残ってくれた.

 この露頭からやや上流へ行くとそこには淡褐色の細粒凝灰岩が分布していた.沢へ降りていった3人が戻ってきたところで雪交じりの雨が降ってきた.

 急いで車に乗って角間キャンパスへ引き返す.午後3時30分に研究室に到着.

  • Camera: Ricoh Caplio 500G wide
  • Lens: Ricoh Zoom Lens 508-17.4mm f.2.5-4.3