地学実験の記録
2007年度前期(その1:4月13日〜4月27日)

2007年4月13日:ガイダンス(地学学生実験室)

 受講生はわずかに3名.前期にしては例年になく少ない.学生実験室でガイダンスをまず行う.そして受講票を受け取ったあとで野外に出た.総合教育棟前でまず歩測の練習から.50mの距離を静かに往復して自分の一歩の長さを測ってもらう.


 天気がもちそうだったので散歩がてら角間キャンパス北側の尾根へと上ってみた.プール前の桜はもう散り始めていた.

 尾根から角間キャンパス全景を一望する.自然科学研究科のビル群が遠く見える.

 尾根の林道に沿って真新しい標識が立ち並んでいた.真新しく見えるわりにはなぜか「文部省」と彫り込まれている.

 赤い標識が林道沿いにずっと続く.下ばえが刈り取られてとても歩きやすくなっている.天気はいいが風は強い.

 角間キャンパスを見下ろしながら林道を西へ.竹林のあたりで一休み.そしてここから沢へ降りることにした.

 沢沿いには苔むした大桑層の露頭が続く.巻貝の印象化石が砂岩からみつかる.

 こんなところにも赤い標識は立っている.その近くの露頭には生痕化石が一面に広がっている.

 沢沿いの小径をとおって角間キャンパスへ通じる主要道路へ向かう.

 そして道路をぶらぶらと歩いて総合教育棟へ戻る.

 来週の実習予定などを受講生たちに伝えて午後4時半に解散.

2007年4月20日:野外調査実習(1:金沢市野田山)

 朝からいい天気に恵まれた.予定どおりに第一回目の野外調査実習が実施できる.官用車に受講生たちとTAの神納を乗せて角間キャンパスを午後1時すぎに出発.野田山の実習地に到着後,今日の実習目的や実習での注意点などを説明し林道を南へ歩き始める.そして,道路際の露頭でさっそく地層の観察を始めてもらった.


 この露頭には典型的な淘汰不良の礫岩が露出している.円礫が多いが角礫も混じっている.基質は粗粒砂.露頭全体に風化が著しい.

 受講生たちは慣れない手つきで礫をたたき割ろうと長いこと苦労していた.火山岩の礫が多い.

 林道をさらに南へ向かい,道路際の竹林の中にある砂岩の露頭を見てもらう.ここに露出するのは大桑層上部の黄褐色細粒砂岩だ.それから近くの露頭をちょっと上ってこの砂岩の上に先ほどの礫岩が載っていることを確認してもらう.

 林道をさらに南へ下り,竹林の中をまた上ってここにも礫岩と砂岩の境界があるのを見てもらう.この礫岩がほぼ水平に広がっていることを理解してもらえたはずだ.TAの神納は受講生が落っこちたときに備えて下で待機.

 林道をさらに歩く.砂岩がだんだんと泥質を帯びてくる.二枚貝や巻貝の印象化石が見つかる.

 さらに足を進めると道路沿いに泥岩が露出するようになる.風化のため内部まで黄白色になったこの泥岩はきわめてもろい.

 比較的新鮮な露頭で泥岩の観察.

 そして烏骨鶏の里近くの大きな露頭でこの泥岩をしっかりと観察してもらう.泥岩中に観察できる火山灰層や地層の傾斜についてもここで説明を加えておく.

 川がだんだんと近づいてきた.このあたりまでくると道路際には白色軽石を含む粗粒凝灰岩の露頭が続くようになる.そしてその下位にはまた泥岩が位置する.

 川におりて凝灰岩をさらに観察してもらい,ここで今日の実習はおしまいにした.

 車を止めたところまで歩いて引き返し,そのまま角間キャンパスへ.午後5時前に実験室に到着.

2007年4月27日:野外調査実習(2:金沢市上辰巳)

 今日も朝からいい天気だった.第二回目の野外調査実習のため犀川上流の上辰巳へ受講生たちとTAと乗せて角間キャンパスを午後1時すぎに出発する.現地に到着後はまず現在地の確認を受講生にやってもらう.地図を読むのはまだ不慣れなようだ.それから河原へ降りて最初の露頭の観察のため上流へ歩いた.犀川の水がとても少ない.植生はまだそれほど繁茂していない.


 川沿いの最初の露頭に到着.ここには中新統砂子坂層の凝灰質砂岩が露出する.受講生たちにまず自分なりの観察を行ってもらう.

 ノートをつけたり,足下の珪化木を叩いたり.小さなホタテガイの化石が見つかっていた.

 砂子坂層の説明と日本海のでき方についての説明を行い,それから川沿いの崖をつたってさらに上流の露頭をめざした.

 川が大きく曲がるあたりが2番目の観察地だ.ここでもまず自分たちでの観察につとめてもらう.

 この露頭では大型有孔虫やウニ,そして貝の化石などがたくさん見つかる.

 小さな円礫や植物遺骸化石も砂岩に含まれている.それをルーペを使って観察する.

 砂子坂層の成因や当時の日本海の古環境について説明し,それから川を対岸へ渉った.TAの神納が渡渉ルートを案内する.

 そのルートを受講生たちが次々に渉ってくる.最後はTAの小河原の番.落ちそうで落ちない.

 調べたばかりの露頭を対岸から眺め,地層の傾斜やノジュールの配列などを確認する.それから河床を歩いて下流へ.

 河床に露出する砂子坂層には生痕化石の発達が著しい.正断層も規則的に確認できる.

 さらに下流へ向かい,対岸の崖で観察される大きな斜交層理を見てもらう.地層から過去の海流の早さや水深がわかることも理解してもらう.河原に崩落している七曲層の角礫凝灰岩を観察し,それからまた下流へ川沿いに移動する.

 最後の露頭は研究室の崖渡りトライアルを例年やる崖だ.この日は新4年生がまだいないのでトライアルはなし.水位が下がりきった川を全員で渉る.川の水はまだまだ冷たい.

 この露頭は砂子坂層の凝灰質泥岩でできている.植物化石がたくさんみつかるところだ.葉脈がはっきりみえる葉っぱの化石がいくつか見つかっていた.

 川をふたたび渉って対岸へ戻り,辰巳用水の取水口をちょっと眺めて車へ戻った.

 午後5時前に角間キャンパスの総合教育棟に到着.その後,学生実験室で今日の地層についてのおさらいなど.

 午後6時前に終了.


  • Camera: Pentax Optio WPi, Pentax *ist DS2 and Ricoh Caplio 500G wide
  • Lens: SMC Pentax Zoom 6.3-18.9mm f.2.6-4.8, SMC Pentax-DA Zoom 18-55mm f.3.5-5.6 and Ricoh Zoom Lens 5.8-17.4mm f.2.5-4.3
  • GPS: Sony GPS-CS1K