地学実験の記録
2010年度後期(その1:10月1日〜10月15日)

2010年10月1日:ガイダンス(地学学生実験室)

 ガイダンスに先立ってTAたちと地学学生実験室の掃除をやっておく.総合教育2号館が壁面貼り替え工事中のため,窓をふさぐ防塵ネットで実験室の中はなんとなく暗い.


 掃除が終わったらハンマーやヘルメットなどの実習道具を確認して準備完了.

  午後1時に1回目のガイダンスを始めた.ガイダンス週間の初日だったが履修予定者は14名と例年なみだった.理工系や医薬保健系の学生が多いのは珍しい.地学実験の主題や内容,実習予定などについて説明し,2回目のガイダンス後にハンマーなどの実習道具一式を配布して使い方などを説明する.

 実験室での説明後,全員で外へ出て歩測の練習.秋晴れのいい天気だった.地学実験初日にこの練習ができるのはひさしぶりのような気がする.

 実験室に戻って解散.

2010年10月8日:野外調査実習(1:金沢市野田山)

 夕方から天気がくずれるとの予報だったが,学生実験室を出発したときはまだいい天気だった.総合教育1号館前で大学のバスに全員で乗り,自然科学研究科前をとおって田上へ.


 山側環状道路のトンネルをまずひとつくぐり,

 犀川をわたってふたつめのトンネルを抜ける.

 15分ほどで野田山の実習地に到着.最初の作業は現在地(地図のP)の確認から.地形図上に現在地をピンポイントで記入してもらう.

 野田山には今日もサックスの音色がひびきわたっていた.林道を南へくだっていく.

 まず林道沿いにある最初の露頭(1)に到着.これまでどおり,露頭の説明はごく簡単にすませて学生たちには自由に観察してもらった.

 この露頭は淘汰不良の円礫でできている.基質は砂だったり泥だったりとさまざまだ.

 学生たちは露頭を叩いたり掘り出した礫をハンマーで割ったりと好きに観察をつづけていた.

 約20分間の観察終了後,礫岩とはどのようなものかを説明しておく.

 林道をくだって2番目の露頭(2)へ.林道で場所を確認したあと順番に竹林に入った.

 大人数のため中でふたてにわかれてもらう.右手の露頭にはTAの三宅君,左手の露頭には同じくTAの大畑さんがついてくれる.

 この露頭には褐色で淘汰のいい細粒砂岩が露出する.砂岩の上位にはさっき見たばかりの礫岩が位置する.この礫岩をみるために全員で竹林をのぼる.

 礫岩を確認したら竹林の中をゆっくりと林道へ戻る.

 林道をちょっとだけ歩いて3番目の露頭(3)へ.ここでは頭上高くに竹林の中で見たばかりの細粒砂岩とその上位の礫岩を見ることができる.ここは下から見るだけにとどめたが,礫岩がほぼ一定の高さに分布すること,その下に砂岩があることをここで確認してもらう.

 さらに林道を歩いて4番目の露頭(4)へ.ここにも淘汰良好の赤褐色細粒砂岩が分布する.大桑層の中部から上部に相当する層準だ.感査察を開始してすぐにひとりの学生が二枚貝の印象化石を発見した.

 ほかの学生たちも化石を探しはじめた.きれいな巻貝の化石も見つかった.

 林道をさらにくだって5番目の露頭へ向かう.「不法投棄禁止」の立看板が林道沿いにやたらと目立つ.

 5番目の露頭は林道の曲がり際にあった.ここには朝ヶ屋層とおぼしき風化の進んだ灰色の泥岩が露出する.学生たちには泥岩をちょっとつまみとってもらい,指先で粒子の細かさを実感してもらう.

 時間に余裕があったため,前期ではみるのをあきらめた最後の露頭へ向かった.10分ほどで烏骨鶏の里近くの露頭6に到着.

 苔に覆われた黒々とした露頭だが,ハンマーで叩くとその下から新鮮な青灰色の泥岩が顔を出す.中新統御峰層の泥岩だ.

 泥岩の表層数センチは風化のため赤褐色になっている.ここで10分ほど泥岩を観察してもらい,これで本日の露頭観察のすべてが終了.

 最後の露頭前をスタートラインに,みんなで公園までの歩測を開始.

 傾斜がきつい林道を歩きつづける.みんな無言・・・.最後の坂では足取りは重くなっていたようだ.

 公園で待っていたバスに乗車して角間キャンパスへ.

 山側環状道路を抜けて午後4時前に総合教育棟に到着.

 学生実験室で簡単なまとめをやって今日の実習終了.

10月8日の観察ルートと観察地


2010年10月15日:野外調査実習(2:金沢市大桑)

 午前中は激しい雨がときおり降る最悪の天候だったがお昼前にはそれもあがってくれた.当初の予定どおり第二回目の野外調査実習にでかけることにした.角間キャンパスを午後1時すぎに大学の大型バスで出発.


 若松をとおって山側環状道路を西へ.

 小立野台地にあがり,そこから大桑簡易野球場のグラウンドへくだる.ここでバスを降りる.

 いつものとおり,最初は現在地を地形図上で確認する作業から.

 確認が終わったところで犀川の河原へと降りた.川の水位は雨上がりにしては低かった.

 河岸に露頭がむきだしになったところでは新しい崩落の痕があった.すぐにも崩れそうな亀裂も河岸にある.

 大桑層の地質学的な意義やここで採集できる化石について,そして化石の採集方法について説明し,すぐに採集作業にとりかかってもらった.

 たがねとハンマーで露頭を切り崩し,そこから貝化石を掘り出す作業だ.

 犀川の水は静かに流れていた.これならば転落しても事故になる可能性はなさそうだ.

 学生たちは川沿いに散らばって採集作業を続ける.TAの三宅君はひとりたそがれながらも欠席した学生のための試料を掘りつづける.

 小さいながらもホタテガイやサイシュウキリガイダマシなどの化石がみつかっていた.

 三宅君がなかなかきれいな貝化石を掘り出してきた.彼は化石には好かれるたちのようだ.

 男子たちは川沿いの崖を掘っていた.切り崩した断面から貝化石が姿をあらわす.

 作業を開始して1時間もたつとかなりの数の化石がみつかった.

 1時間半後には全員がくたびれてきたようだった.ハンマーをもつ手が重そうだ.

 午後3時すぎに採集作業を終えて貝化石の梱包作業に入った.ひとつひとつの化石を新聞紙でていねいにつつみこむ.

 採集地をあとに川沿いを駐車場へ.

 駐車場で待っていてくれた大学のバスにみんなで乗車.

 山側環状道路をとおって角間キャンパスへ戻った.

 実験室では掘り出した化石を新聞紙につつんだまま乾燥させる.

 午後4時すぎに実験終了.

  • Camera: Pentax Optio WPi, W60 and W90
  • Lens: SMC Pentax Zoom 6.3-18.9mm f.3.3-4.0 and 5-25mm f.3.5-5.5
  • GPS: Nokia E72