地学実験の記録
2012年度前期(その1:4月13日〜5月2日)

2012年4月13日:ガイダンス(地学学生実験室)

 午前中のうちに実験室をあらためて掃除し,学生たちへの配布物の数を再確認しておいた.昨年度は定員を上回る数がきてしまったため配布物も30セットを用意しておいた.


 ガイダンスに出席していた学生は幸いにも定員を下回る20名だった.実験室内でまず実験の概要を説明し,2度目のガイダンスへの出席者がゼロだったため,そのまま実験室内でハンマーなどの配付と実験内容や日程などの説明を行った.その後は総合教育2号館前で歩測の実習を手短に行う.実験室に戻って次回の野田山での野外実習について簡単に説明し午後2時半に解散.ただし,その後に理工学域の教職科目とかんちがいしていた学生が4名いたため,履修予定者は4名減って16名となった.

2012年4月17日:野外調査実習地の下見(金沢市野田山)

 第一回目の野外実習にそなえて野田山の露頭状況を確認にでかけた.桜がちょうど満開だった.平栗へと向かう林道に車を乗り入れる.


 林道沿いに露出する礫岩はまずまずの状況だった.誰が掘ったのか露頭には大きな穴があいていた.

 2番目は竹林の奥にある砂岩の露頭.例年になく竹が元気な気がする.

 細粒砂岩がいつもどおりに露出しているが,露頭の周囲がやや崩れやすくなっているようだ.反対側の頭上には礫岩がみえていた.

 3番目は林道沿いに露出する黄褐色の細粒砂岩.二枚貝の印象化石がすぐにみつかった.

 そして4番目は林道をさらにくだったところにある黄灰色泥岩の露頭.冬が例年以上に寒かったせいか植生が少ないような気がする.

 林道をずっとくだっていくと青灰色で硬い泥岩の露頭がいつもどおりそこにあった.これが5番目の露頭になる.

 植生がほとんどなくていい露頭状況だ.

 林道をくだりきったところには,いつのまにか道案内の看板が設置されていた.

 林道沿いには凝灰岩の露頭がある.露出状況はとてもいい.

 そのやや上位には白色軽石にとむ層準もきれいにみえていた.

 ただ・・・実際の学生実習でここまでやってくることができるかどうか・・・.

2012年4月20日:野外調査実習(1:金沢市野田山)

 朝から曇り空だった.午後から雨との予報もあったが予定どおり第一回目の野外調査実習に出かけることにした.総合教育棟を大学の大型バスで出発し,角間キャンパス南地区をとおって山側環状道路へ.


 大乗寺のあたりで左折して野田山に入った.平栗林道の入口でバスから降りる.ここでまずは現在位置の確認の作業.地形図をみなれていない学生たちは位置の確認に苦労していた.

 今年度のTAはタイのRakと中国のHuiのふたり.彼女らとのやりとりは英語になる.

 林道を歩いて最初の露頭へ向かった.林道沿いに段丘礫が露出する露頭だ.

 現在位置を学生たちにまた確認してもらい,それから約20分間の自由観察にした.学生たちはふなれなハンマーを使いながら露頭を掘り始めた.

 中礫を割ったり砂質の部分を掘ってみたり.土壌の中から出現した昆虫に悲鳴があがったりもする.自由観察時間のあとはそれぞれの観察結果をみんなでとりまとめ,それを再確認して次の露頭へ移動した.

 2番目の露頭は竹林の中にある大桑層の細粒砂岩.林道での位置確認ののちに全員で竹林に中に入った.斜面をよじのぼってそこに露出する砂岩を観察してもらう.

 最初の露頭でみたばかりの礫層が高い位置にあることも確認してもらう.

 林道をさらにくだって3番目の露頭へ.大人数なのでここでは砂岩と礫層との位置関係を視認するだけにした.

 さらに林道をくだって4番目の露頭に到着.ここにも大桑層の黄褐色細粒砂岩が露出する.

 貝の印象化石がみつかる露頭でもある.

 学生たちはおおよろこびで砂岩をたたき始めた.

 ちいさな二枚貝の印象化石がつぎつぎとみつかっていた.

 やはりちいさな巻貝の印象化石もみつかる.学生たちはこの露頭からなかなか離れようとしない.

 帰りの時間もせまっていたので林道をややくだったところにある最後の露頭に移動した.ここでは風化の進んだ軟弱な白色泥岩をみることができる.

 この泥岩の観察を手早くすませてバスへ引き返した.バスが待つ駐車場までは歩測の練習.

 全員がもくもくと歩きつづける.

 駐車場でバスに乗り込み,山側環状道路をとおって角間キャンパスの総合教育棟へ.実験室で歩測の結果を確認して解散.

 

2012年4月27日:野外調査実習(2.金沢市大桑)

  2回目の野外調査実習は大桑町を流れる犀川中流の河原での実施.昨日までの雨の影響が気がかりだったため早朝のうちに現場を見に行った.犀川の水量は予想どおり多かった.雨の影響というよりはダムの放水でもあったかのようだ.


 かいがら橋の上流側では凝灰岩の露頭が完全に水没していた.河岸の露頭もほとんど水没していたが,化石の採集ならば実施できそうではあった.

 午後1時に学生たちが実験室に集合した.大学のマイクロバスで大桑町の実習地へ向かう.簡易野球場の駐車場でバスを降り,まずは現在地の確認を学生たちにやってもらう.

 位置の確認後に採集地となる河原へ移動.昨日の雨がうそのようないい天気になった.

 犀川の水量は朝と同じで多かった.おしよせる水が露頭をこえていきそうな勢いだ.

 大桑層の地質学的な位置やここで見つかる化石について,そして化石の採集方法などについて現地で説明し,それから学生たちに化石採集にとりかかってもらった.

 犀川の水位が高いために化石が採集できる範囲がとても狭くなっていた.長靴をはいている学生は川に入って露頭をたたく.

 化石床のあたりが水没しているため学生たちは平坦面を掘っていた.あまりいい露頭条件ではないが,それでも化石発見の声がときおりあがっていた.

 化石床の離水したところからはおおきなホタテガイの化石が見つかる.

 それにしても今日の水量は多い.いつもならば見えるポットホール群がすっかり水没している.

 崩壊した河岸の崖からひとりの学生がたくさんのホタテガイ化石をみつけてきた.保存状況のいいきれいな化石だった.

 午後3時半に現地実習終了.掘り出した化石をフル新聞紙できれいにつつみこんで現場を離れる.

 駐車場でマイクロバスに乗り込んで角間キャンパスへ.

2012年5月2日:野外調査実習(3.金沢大学角間キャンパス)

  当初は角間キャンパスでの地質調査実習を予定していたが,昼過ぎからいまにも降り出しそうな空模様になってきた.降ってきたらいつでも屋内に逃げ込むことを考えて今日は総合教育棟周辺での岩石の観察実習にした.岩石の種類やそれらの特徴,成因について実験室でまず講義する.そして実際の岩石標本をみてもらったうえで実験室の外にでた.


 ひとつのグループはカコウ岩でできた記念碑をさっそくみつけていた.枯山水の中には別のグループがいる.

 斑晶が目立つ安山岩をみつけていた.

 枯山水の中に学生たちの姿がちらばっている.

 たくさんの岩石の中にまさに教科書的な礫岩があった.

 人間社会3号館(旧教育学部棟)前のベンチは斑糲岩でできている.

 3限の時間帯が終わるころになって雨が降り出してきた.全員でとりあえずの雨やどり.

 30分ほどそこで待ってみたが雨がやむ気配はなかった.午後3時にあきらめて実験室へ引き返した.

 実験室で簡単なまとめをやって今日の実験が終了した.

  • Camera: Pentax Optio W90, WG-1 GPS and W60
  • Lens: SMC Pentax Zoom 5-25mm f.3.5-5.5