地学実験の記録
2012年度前期(その2:5月11日〜5月18日)

2012年5月11日:野外調査実習(3:金沢市大桑)

 3回目の野外調査実習も大桑町の犀川中流で実施した.朝から小雨がぱらつく肌寒い日だった.角間キャンパスを大学のバスで出発し15分ほどで現地に到着.まず現在地の確認から始める.すぐ近くに大桑貝殻橋があるため今回は全員がこの作業をすぐに終えた.


 ここしばらくの雨のせいか犀川の水位は高かった.露頭は河岸にはりつくようにわずかに露出するのみ.

 離水した河床を歩いて上流側へ向かった.ここには中新統犀川層の凝灰質細〜中粒砂岩が分布する.学生たちには説明なしでまず地層の観察にとりかかってもらった.

 狭い露頭で16名が観察を開始した.雨こそ落ちてこないものの肌寒い.

 観察中の学生たちをTAのふたりにまかせて下流側の露頭状況を確認に行った.

 大桑層下部は離水した部分はかぎられていたが観察できる状態だった.しかし,挟在する火山灰層のあたりはすっかり水没していた.

 学生たちのところへひきかえしがてら犀川層に特徴的な岩相をおさえておく.炭化木に貝化石.

 炭化木の破片をともなう白色軽石の層.火山岩片は残念ながら見つからない.

 学生たちはそれぞれにまだ観察の最中だった.

 方解石が内部に析出した二枚貝の化石が見つかっていた.観察を終えた学生たちに,ここで見ることができる地層や化石などについて説明し,それにもとづく当時の古環境についての理解をもとめておく.

 下流側へ移動する途中で石灰質ノジュールについて説明しておく.

 わずかに離水した露頭の上を歩いて下流へと移動した.

 大桑貝殻橋近くの露頭に到着.下部更新統の大桑層下部が露出する.ここでも学生たちに自主的な観察を始めてもらった.

 狭いながらも流水に洗われて露頭条件は悪くない.学生たちはあっちこっちを掘り返している.

 このあたりには泥質砂岩や極細粒の砂岩が分布する.多量の植物破片をともなう層準もある.

 学生たちを見守るTAのふたりはかなり寒そうだった.

 炭化木の大きな破片が掘りあげられていた.

 中新統犀川層と下部更新統大桑層下部の岩相をしっかり確認したうえで,両者の不整合/整合関係の探索開始.学生たちは露頭を叩きながら上流側へと引き返していく.

 上流に向かって掘っては歩き,掘ってはまた歩きの繰り返し.

 岩相の違いにもとづく不整合面の発見.この不整合が河床地形にも現れていることを確認してもらう.

 あまりの寒さに予定を切り上げて簡易グラウンドの駐車場へひきあげた.

 迎えにきてくれた大学のバスで角間キャンパスへ.

 学生実験室で今日のまとめをやって実験終了.

2012年5月18日:野外調査実習(4:金沢市小二又)

 大学のバスを使っての野外実習の最終回.角間キャンパスの裏手となる小二又の金腐川での実習だった.午後1時すぎに学生実験室を全員で出発し,大学の大型バスに乗って10分足らずで実習地に到着.すぐに現在地の確認作業に入ってもらう.


 春の到来が遅かったせいか露頭の植生は少なかった.遠くから観察するだけのつもりだったがせっかくの状況なので露頭の観察に行くことにした.

 対岸へ移動し植生が比較的少ない斜面から金腐川沿いに降りた.

 学生たちはちょっとしたサバイバルゲーム気分を味わっていたようだ.

 河岸のやぶをくぐり抜けて露頭に到着.

 ここで10分間の自由観察時間をとった.地層の特徴や含有物,地層の傾斜方向などにとくに気を配ってもらう.

 ここに露出するのは下部更新統大桑層の中部.表面こそ風化で黄褐色になっているが新鮮な部分は青灰色になる.

 風化が進んではいるものの白い貝化石がときおりみつかる.

 この露頭での観察結果をこれまでの野外実習での結果と比べたうえで大桑層の空間的な広がりの理解をもとめる.ここでは地層が南へ傾斜することにも気づいてもらう.その後に移動.

 露頭の反対側となる斜面をよじのぼって河岸の道路へ.

 次の露頭への移動の途中,対岸でみることのできる地すべり地形について説明しておく.

 ふたつめの露頭はちいさな林道沿い.ここでも10分間の自由観察時間を設定した.

 川沿いでみたばかりの大桑層の青灰色細粒砂岩がここにも分布する.

 貝化石もときおりみつかる.トノサマガエルもみつかった.

 県道を北の小二又の方向へと歩く.

 女子学生たちは例年どおりとても元気.

 3番目の露頭は道路から河岸へ降りたあたりにある.護岸のブロックを河床へつたい降りる.

 ここに分布するのは大桑層下部の青灰色泥質極細粒砂岩.

 中部と似たような岩相ながらも細粒で泥質となることや,貝化石をまったく含まないことに気づいてもらう.

 ちょっとばかりの水遊びののちにブロックをのぼって道路へ移動.

 4番目の露頭は道路に沿って北へさらに移動したところにある.河床の露頭には近づきがたかったため,道路の反対側にある露頭へ移動した.

 この露頭で観察されるのは白色の軽石質凝灰岩.高窪層最上部の上涌波凝灰岩だ.地層はほぼ水平になっている.

 道路の分岐点では小二又の集落へ向かって歩く.

 採石場の大露頭を観察し,それからバス停近くの道路の切り割りで凝灰岩をじっくりと観察する.

 白色軽石には粒径が1センチをこえるものもある.

 バスに乗って角間キャンパスへ.その後に学生実験室で今日のまとめをやって午後4時すぎに終了.

今日の実習ルート


  • Camera: Pentax Optio W90 and WG-1 GPS
  • Lens: SMC Pentax Zoom 5-25mm f.3.5-5.5