地学実験の記録
2013年度前期(その4:6月14日〜)

2013年6月14日:野外調査実習(5:金沢市小二又)

 今学期の野外調査実習の総括として金沢市小二又の金腐川沿いへ出かけた.角間キャンパスのすぐ北に隣接する地域だ.午後1時に地学学生実験室を出発し,大学のマイクロバスに乗り換えて小二又よりもやや上流となる金腐川に向かった.天気はいいがこの時期にしては気温も湿気も高かった.


 整備された道路をバスは快調に走っていく.かつては砂取り場だった露頭が植生にすっかり被われている.

 10分ほどで目的地に到着した.バスを降りたらまず現在地の確認から.

 ここには大桑層の青灰色砂岩が南傾斜で露出する.露頭を直接見せたいのはやまやまだったが,植生が深くて足をとられそうなことや,マムシが出没するところでもあるので,対岸からの観察と説明とにとどめた.

 金腐川沿いの県道を下流方向へ歩いた.典型的な地滑り地形を途中で説明しておく.

 しばらく移動したところにある林道沿いにも大桑層の青灰色砂岩が露出する.ここでしばらくの自由観察時間.

 青灰色砂岩という岩相やたまに見つかる貝化石から,ここに分布するのがこれまでに見てきた大桑層と同じであることを学生たちに確認してもらう.

 県道をさらに下流方向へ歩いた.

 金腐川へ降りての露頭の観察.ここに露出するのはやはり大桑層ながらも青灰色の泥質砂岩.

 貝化石がめったに見つからないところだが,学生のひとりが二枚貝のきれいな印象化石を見つけだした.

 河床でのしばらくの観察ののちに県道へあがる.

 金腐川にかかる橋を渡った.この橋のあたりでは,大桑層と高窪層とのみごとな不整合をかつて見ることができたが,その半分はいつの間にか護岸のブロックで被われていた.

 橋をわたってすぐのところにある道路沿いの露頭に到着.ここでまたしばらくの自由観察時間.この露頭の上部には大桑層下部の青灰色泥質砂岩が分布する.

 一方,この露頭の下半部には黄褐色の軽石質粗粒凝灰岩がある.高窪層最上部となる上涌波凝灰岩だ.

 粗粒凝灰岩のもろい手ざわりを学生たちに確認してもらう.

 県道をさらに下流方向へ歩いた.

 対岸の遠くに見える地層から,このあたりを境として地層が北へ傾斜するようになることを学生たちに見てもらう.

 小二又の集落をすぎたところで砂取り場の大露頭が正面に見えてきた.

 バス停近くの道路沿いの露頭の観察.上涌波凝灰岩がもっとも厚くなるあたりになる.

 平行葉理が発達する軽石質凝灰岩がここに露出する.

 野外実習の最後は,巨大露頭をとおくから見ながらの金沢市の層序のおさらい.露頭がずいぶん後退していた.

 実習終了.小二又のバス停で待っていてくれたマイクロバスへひきかえした.

 マイクロバスは角間キャンパスへ向かって順調に走って行く.

 10分ほどで角間キャンパスの総合教育棟に到着した.

 総合教育棟の地学学生実験室で地質図をつかって層序をまとめ,これで今日の地学実験が終了した.

2013年6月21日:土質力学実習(1:地学学生実験室) ※世界遺産会議のためカンボジアに出張中

 環境デザイン学系の高原さんの担当による土質力学実習の一回目.角間キャンパスを歩きながらの地盤の変状観察の予定だったが,おりからの豪雨のため実験室内での座学に変更になったようだ.


2013年6月28日:土質力学実習(2:角間キャンパス,地学学生実験室) ※世界遺産会議のためカンボジアに出張中

 同じく高原さんの担当による土質力学実習の二回目.キャンパスを歩きながらの地盤と構造物の観察,そして実験室での液状化の実験など.


2013年7月5日:岩石学実習(1:人間社会3号館地学学生実験室)

 学校教育学類の酒寄さんの担当による岩石学実習の一回目.途中から授業を見学させてもらった.実習用試料は戸室山の安山岩.


 初回の授業内容は試料片面の研磨と鉱物の光学的性質についての解説だった.冷房の効いた実験室のせいか,授業中に瞑想にふけりはじめる学生もいる.

 方解石の大きな結晶をつかっての鉱物の光学的性質の説明.複屈折の説明などはさすがにわかりやすい.

 授業の最後は岩石試料をスライドグラスに貼り付ける作業だった.酒寄さんがまず実演してくれる.

 その後に学生たちは4つのグループに分かれてそれぞれの試料をガラスに貼り付けた.

 午後4時すぎに実験終了.そのまま解散.

2013年7月12日:岩石学実習(2:人間社会3号館地学学生実験室)

 学校教育学類の酒寄さんの担当による岩石学実習の2回目.前回の学生実験でスライドガラスに貼り付けた岩石薄片の反対側を磨いて完成させる作業だ.今回も途中から授業を見学させてもらった.


 まず回転研磨台でガラスに貼り付けた岩石試料を薄くする作業.

 回転する研磨板に恐怖感を覚えるのか,学生たちの指先に力がこもる.

 続いて鉄板の上で岩石薄片をさらに薄くする.

 この作業はわりとスムースだったようだ.

 作業の途中で酒寄さんに試料の厚さを確認してもらう.

 鉄板での作業が終わったらガラス板の上で表面をなめらかに仕上げる.

 ここまでくれば完成は間近だ.

 乾燥させた薄片試料の表面に保護用のオーバーコートを塗って試料の完成.

 

2013年7月19日:岩石学実習(3:人間社会3号館地学学生実験室)

 岩石学実習の最終回.これまでの2回で作った岩石薄片試料の顕微鏡観察.どんなようすか少しだけ見学させてもらった.


 学生たちは試料を顕微鏡で観察しながらそのスケッチをとっているところだった.


 今学期の岩石学実習がこれで終了.

2013年7月26日:古生物学実習(地学学生実験室)

 今学期の地学実験の最終回は,総合教育棟の学生実験室に戻ってきての古生物学実習.犀川の大桑層で採集した貝化石を材料に,貝化石の整形と鑑定実習を行った.


 砂岩の中に埋もれた貝化石を千枚通しを使って取りだし,それから歯ブラシで表面についた砂をていねいに取り除く.

 貝化石はすっかり乾燥しきっていたので作業は楽に進んでいた.

 整形がきれいに終わった貝化石.

 この作業を採集してきたすべての化石について行う.

 砂岩から分離するとすぐにこわれてしまうもろい化石はそのままにしておく.整形が終わった貝化石には図鑑を参照しながら学名をつける.

 作業が早く終了した学生たちには双眼実体顕微鏡で微化石を観察してもらった.これはおそらくカイメン動物の骨針だろう.

 ・・・・.

 成績の評価を最後に実施して今学期の予定がすべて終了した.

  • Camera: Pentax Optio W60, W90 and WG-1 GPS
  • Lens: SMC Pentax Zoom 5-25mm f.3.5-5.5