地学実験の記録
2019年度後期前半(その3:11月15日〜11月29日)

2019年11月15日:野外調査実習5(金沢市小二又町)

  大学のバスを使っての最後の野外実習の日だった.今学期のこの授業では初めての好天にめぐまれた.予定どおりに大学のバスで小二又にある実習ルートに向かった.


 きもちのいい青空がひろがっていた.戸室山がとおくにみえる.

 南砺市へと抜けるあたらしい道路を小二又へ移動する.

 小二又の分岐点に到着した.ここでバスを降りる.すぐ近くを金腐川が流れている.学生たちに現在地の位置をまず確認してもらう.


 バスを降りたところの対岸あたりにかつてはいい露頭があったが,いまは植生ですっかり覆いつくされている.

 今日は金腐川に沿って下流へ歩きながらの実習になる.露頭をみつけては記載しながら歩くという実践的な実習だ.移動の途中で地辷り地形についても説明しておく.

 道路から左手にあがる小道のルートへ向かった.入り口のあたりは深い植生で覆われていた.それをかきわけながら小道へ移動する.

 小道の中も植生が深かったがその奥に露頭をみつけることができた.ここで10分間の自由観察時間にした.


 ここには貝化石を含む青灰色の細粒砂岩が分布する.これまでの実習でみてきた地層のどれともっとも似ているかに留意してもらう.

 道路沿いをさらに歩いた.その途中に設置された動物用のわなをみかけた.

 金腐川の対岸にあるおおきな露頭で地層の傾きが南方向であることをみてもらう.

 その露頭の向かいあたりにある道路沿いの崖を2番目の観察地点にした.ここでも10分間の自由観察時間を学生たちにあたえた.

 ここには風化で黄褐色になった砂質泥岩が露出する.これまでに見てきた地層との類似性に着目してもらう.

 学生たちが露頭を観察しているときをねらってドローンをあげた.

 実習終了後のおさらいのため,これまでに歩いてきたルートをここで撮影しておいた.


 ドローンを回収したところで自由観察時間が終了.露頭の説明をここでやっておく.

 その露頭からわずかに20mほど離れたところでも露頭を観察してもらった.ここには白色軽石を多量に含む凝灰質砂岩が露出する.

 たったこれだけの距離で岩相がおおきくかわることに注意してもらう.岩相の境界面もここでみてもらった.

 道路沿いをさらに歩く.


 小二又の集落に入るあたりで足をとめ,対岸にみえる地層の傾斜が北向きに変わったことをみてもらったうえで,地層の褶曲構造について説明した.

 最後の観察地点は小二又のバス停近くの露頭にした.ここには白色軽石でできた凝灰岩の厚層が分布する.

 学生たちはやわらかくて自由に加工できるこの白色凝灰岩をおもしろがって観察していた.

  ここでもドローンをあげて周辺の地形を撮影しておいた.


  すぐ近くに軽石の採石場の第露頭がある.空からだと地質構造までよくみえる.

 凝灰岩層での観察がおわったところで凝灰岩の成因や火砕流噴火について説明しておいた.

 その露頭から少し歩いたところから採石場の第露頭を学生たちとながめた.積み重なっている地層を説明しながら,これまでにみてきた地層群の層位関係をおさらいしておいた.

 実習を終えて大学のバスにひきかえした.


 そのまま角間キャンパスへバスで移動した.

 戻る途中でバスを停めてもらい,背後にみえる戸室山の崩壊について説明しておく.

 角間キャンパスに戻ってきたのは午後4時前だった.

 実験室で手短におさらいをして実験終了とした.

2019年11月22日:野外調査実習6(金沢大学角間キャンパス)

 野外調査実習の最終回は角間キャンパスで実施した.学生実験室で角間キャンパスの立地条件や地下地質について説明し,それからキャンパスの北地区へ移動した.総合教育棟前の広場での地盤沈下の現状をまずみてもらう.それから地下通路へ移動して沈下対策について理解してもらった.


 地下通路の壁面には左右対称となったきれいな断層ができている.

 広場から角間中央のバス停へと向かう階段を降りた.広場からこの階段にかけての地盤がキャンパスの中ではもっともゆるいことを,金沢大学移転前の地形をふまえて説明する.

 それから県道にそって杜の里方向へ全員で歩いた.


 クマが出没するという立入禁止の看板が里山ゾーンの入り口にあry.そのすぐ近くの壁面に地層が露出している.

 ここには黄褐色の極細粒砂岩が露出する.地面のぬかるみがひどいため学生は歩道に待たせておいた.

 歩道をさらに杜の里方向へ歩く.

 コンビニエンスストアの向かい側あたりの沢に入った.金沢大学のポンプ室があるところだ.沢にはいるとすぐに露頭が連続するようになる.

 学生たちは足をすべらせながらも沢の中に入ってきた.この沢の中でしばらくの自由観察時間をとった.


 ここにも黄褐色の極細粒砂岩が露出する.学生たちにはこれまでの実習でみたどの地層ともっとも似ているかを考えてもらう.

 来たときよりもすべりやすくなっている沢沿いを歩道へ引き返した.

 県道沿いの歩道を引き返し,途中の交差点で右に曲がって自然科学研究科がある南地区へ歩いた.ここの里山ゾーンにもクマ注意の看板があった.

 角間キャンパス南地区の奥にある環境保全センターへ足をむけた.この裏手の林道にそって法面の工事が行われている.

 工事は先月に比べたらずいぶん進んでいた.工事関係者の方々に許可をもらってこの法面で地層を観察することにした.


 ここにも黄褐色の極細粒砂岩が露出するが,沢の中の同じ砂岩よりもずっとやわらかい.学生たちはそのちがいに気づいてくれたようだった.

 野外実習を終えて北地区へ引き返した.

 中地区のベンチが地盤の変状や植物の根張りのためにゆがんでいることに気づいてもらう.

 調整池の浚渫もさらにすすんでいた.


 北地区と中地区とをむすぶ連絡橋のゆがんだ手すりを確認しながら総合教育棟へ.

 学生実験室に戻ってこれまでの地質調査実習の結果を地形図にまとめてもらって授業終了.

 ついうっかりとパンフォーカスレンズをつけたカメラを持参してしまったが,そのぼけぼけ感がなんだか最終回っぽい雰囲気になってくれた.

2019年11月29日:古生物学実習(金沢大学総合教育2号館地学学生実験室)

 今学期の地学実験の最終回は学生実験室での古生物学実習だった.大桑層から学生たち自身で採集してきた貝化石の整形と鑑定の実習だ.すっかり乾燥した貝化石からまず千枚通しを使って砂をおおまかに取り去る.


 貝化石のもろいところの砂の除去には爪楊枝やブタ毛の歯ブラシをもちいる.

 砂をすっかりとりのぞいた貝化石.それからスケッチにとりかかる.

 スケッチが終わったら図鑑をもちいての鑑定の作業.


 学生たちのスケッチ.

 貝化石の特徴をなかなかよくつかんでいる.

 これで今学期の地学実験の予定すべてが無事に終わった.

  • Camera: Pentax WG-3 GPS, Pentax Q10 and DJI Spark
  • Lens: SMC Pentax 4.5-18.0mm f.2.0-4.9 and Pentax Mount Shield Lens 11.5mm f.9.0