日本海の概要

 日本海は日本列島,朝鮮半島およびユーラシア大陸によって囲まれた海で,オホーツク海や東シナ海,南シナ海などと同様にユーラシア大陸東縁に位置する縁海のひとつである.間宮,宗谷,津軽および朝鮮海峡によって同海は外洋と連結される.

 日本海最北部にあって同海とオホーツク海とを結ぶ間宮(タタール)海峡は,サハリンとロシア沿海州との間の海峡で,最狭部の水平距離は約10q,水深は約10mときわめて浅い.一方,日本海とオホーツク海とを結ぶ宗谷(ラ.ペールズ)海峡は,宗谷岬とサハリン最南端のクリリオン(西能登呂)岬との間の海峡で,両岬間の距離は約42q,最狭部の水深は30〜60mであるが凹凸に富む複雑な海底地形を呈する.日本海と太平洋とを連結する津軽海峡は,津軽半島北端の竜飛岬と渡島半島東端が西口,下北半島北東端の尻屋岬と渡島半島東端の恵山岬が東口とそれぞれ呼ばれ,西口と東口とを結ぶ海峡の長さは約100q,幅はもっとも狭い西口で約20qで,ここに位置する最浅部は約120mである.本海峡はきわめて複雑な海底地形を呈し,ほぼ中央部に水深200m以深の細長い凹地があるほか,西口付近には海底段丘や最深部が450mの水深に達する大規模な海釜群が認められる.日本海と東シナ海とを連結する対馬海峡は,北九州から山陰地方の西部と朝鮮半島とに挟まれた海域であり,中央部に位置する対馬によって南東側の東水道(狭義の対馬海峡:幅約50q)ならびに北西側の西水道(朝鮮海峡:幅約70q)に二分される.対馬海峡は陸域から発達する大陸棚が連続するため,ほとんどが水深120m程度の浅く平坦な海底からなるが,対馬北西方には最深部が水深228mに達する対馬舟状海盆が位置する.

 日本海は中央部を東北東〜西南西方向にはしる大和海嶺ならびに朝鮮海台によって南北に区分される.北部の日本海盆は深海盆で,全体に水深3600m前後の平坦な深海平原からなる.一方,日本海南部は東側の大和海盆ならびに西側の対馬海盆に区分され,比較的複雑な海底地形を呈する.日本列島沿いには本州弧とほぼ平行に二列に配列する堆や海嶺,島とそれらの間に位置する海盆群の発達が認められる.また,日本列島ならびに朝鮮半島の沿岸には多数の海底谷(深海長谷)が発達し,これらのなかで富山湾に端を発する富山深海長谷は富山舟状海盆から大和海盆をとおって日本海盆へと達する日本列島周辺では最大の海底谷である.富山深海長谷の中〜下流域に発達する富山深海扇状地は日本海最大の堆積体であり,同深海長谷が供給する堆積物によって更新世中期以降に比較的短期間で形成されたとされる.また,同深海長谷が供給する堆積物は,大和海盆ならびに日本海盆の鮮新世以降の乱泥流堆積物からなる上部約500mの大部分を形成したとも推定されている.

 日本海はユーラシア大陸東縁に並ぶ縁海のひとつではあるものの,他の縁海群がいずれも水深千m以上にも達する海峡で外洋と連結されるのに対し,日本海と外洋とを連結する海峡群はもっとも深い対馬・津軽海峡でも水深約120mときわめて浅い.これに加えてこれらの海峡群はもっとも広い対馬海峡でも約170qしかない.すなわち日本海は他の縁海群と比べてきわめて閉鎖性の高い海域といえ,これは日本海に棲息する生物群に純粋な深海群集を欠くことからも裏付けられる.