トンレサップ湖調査2000−02

2000年8月26日〜9月12日

(3:8月31日)


8月31日(木)シェムリアプ

 水文チームによる係留観測が今日から始まることになっていた.昨日のうちに船のドライバーとの契約も終わっている.ホテルのレストランで朝食を済ませ,係留用の機器やブイ,そして昨日買い込んであった錘などを積み込んで午前7時に出発する.箕田さんは地元水産関係者を訪問するためブンタ君ともどもの別行動となる.午前7時半に船着き場へ到着.奥村さんがすぐに係留機器の準備を始める.銀色に輝くステンレスの流速計やオレンジ色のブイが目立つせいか見物人がどんどん集まってくる.

 

 

 30分ほどで機器の準備が終わった.ロープの末端には昨日購入した鉄塊がしっかりとゆわえつけられる.生物チーム2名はここで分かれて陸域での採集に向かった.

 

 

 いよいよ出航.しかし,沖へ出てみたところ相変わらずうねりは高いし風も強い.これでは湖上での観測は不可能だ.大きく揺れる船上から機器を投入し,すぐに舳先を船着き場へ返した.

 

 

 振り返ると水面上にオレンジ色のブイが浮かんでいた.湖いっぱいに広がるうねりの中で小さなブイは頼りなげに見える.だが,これがトンレサップ湖における記念すべき最初の係留観測となる.機器は3日後に回収される予定になっていた.その期間に盗難にあわないよう船のドライバーたちが交代で見張りをしてくれる.2泊3日で130ドルの契約となった.

 

 

 船着き場へ戻る途中で観光養魚場へ立ち寄り,1週間の連続記録をとるため水温計を養魚場の奥に取り付けさせてもらった.お礼代わりに一本1ドルの缶ジュースを買う.午後9時半に船着き場へ到着.1時間ほど待ったところで生物チームが採集から帰ってきた.彼らのにこやかな表情は多くの収穫があったことを物語っていた.それに比べて水文・地質チームは荒れた湖のためほとんど仕事にならない.1月の調査とはまったく逆の立場になる.天候に逆らえないいらだちを押さえながらシェムリアプへ戻る.

 昼食まで間があったので,愛機LXをぶらさげてシェムリアプ川河畔を散策した.川の水かさも例年より高いような気がしたが市内にあふれ出すほどのことはなさそうだ.子供たちにはこれがいい遊び場になっていた.橋の上から次々と川に飛び込んでいる.道路がぬかるみに変わってしまったためか洗車場は満員だ.いくら洗ってもこのぬかるみではすぐにまた汚れてしまいそうなものだが・・・.

 

 

 市場へ足を向ける.バナナ,マンゴ,ジャックフルーツ,ドリアン,そしてドラゴンフルーツにランブータン.原色の果物が店先を飾る.

 

 昼食はホテル近くの屋台にした.焼きそばとビールでひとり2ドル.料理はうまいし確かに安いがあまり落ち着いて食事を楽しめるところではない.手早く食事を済ませ,となりの果物屋でドリアンをひとつ買ってホテルに戻った.中に持ち込むわけにはいかないため,ホテル前のカフェでドリアンを割って初めてカンボジアを訪れる奥村さんと大高さんに食べていただく.おふたりとも「これはうまい!」とのこと.かつての遠藤さんや箕田さんの拒絶反応とは大違いだ.ただ,このドリアンは1月のものより確かにうまかった.ぎっしりつまった実はよくしまっているし鼻につく異臭も少ない.片倉さんによればタイで品種改良されたものだろうとのことだった.

 収穫のあった生物チームや水産チームに比べ,湖にでることすらできない水文・地質チームにはいらだちが高まっていた.そこで,「水さえあれば何か調べられる!」ということになり,手近に水のあるアンコールワットの環壕へ出かけることにした.

 午後2時にホテルを出発しすぐに遺跡地区へ入場するゲートに到着.観光客はここでパスを購入することになる.一日パスが20ドル.三日パス,七日パスがそれぞれ40に60ドル.遺跡内への出入自由なわたしの調査パスをたてに,教授のおふたりには失礼ながらもアシスタントということで第一ゲートは無事通過.二番目の検査ゲートもなんとか通過することができたが,アンコールワット西参道入り口の検査だけはどうにもならなかった.麦わら帽子の警備員は慇懃ながらもがんとしてとおしてくれない.申し訳なくもおふたりにはそこで一日パスを購入してもらう.10分ほど待たされバイクで届いたパスでようやく中に入ることができた.

 午後のせいかアンコールワットにはたくさんの観光客がいた.彼らの好奇のまなざしをあびながら環壕に降りて水質を調べる.電気伝導度が13.2とやけに低い.

 

 

 続いて北側の聖池で水質測定.ここでも電気伝導度は27と低かった.この聖池のほとりからみるアンコールワットが美しい.

 

 

 水を調べるためにアンコールワットを訪れたわけだ.しかし,20ドルの参拝料を支払ったおふたりがいる.そこで観光もしてしまおうと測定機器をリュックにしまい込んでアンコールワットの中へ入った.奥村さんにとってはこれが初めてのアンコール参拝になる.

 中央祠堂へと続く急な石段を身軽な奥村さんはどんどんのぼっていく.高いところが苦手な遠藤さんはテラスに取り残される.ここで彼とはぐれてしまった.曇り空ではあったがれんじ格子の窓からさしこむやわらかい光が美しかった.

  

 

 中央祠堂近くのテラスには小さな水たまりがあった.雨水が残っているのだろう.試しに測定器をつっこんでみたら,pHがなんと9.9!酸性雨ならぬアルカリ性雨?高アルカリの原因はいまだに不明のまま.

 遠藤さんとはぐれたまま西参道を入り口へと引き返した.しかし,入り口近辺にも車のそばにもその姿はどこにも見あたらない.30分ほど待ったところでようやく西参道をてくてくと帰ってくるお姿が見える.午後6時にホテルへと戻った.

 

 

 午後7時からアルンレストランで夕食.その後,他の方々と別れて緑陰講座の打ち上げ会をやっているはずのアンコールレストランへ行く.しかし,到着したときにはちょうど閉会となったところだった.歓迎はされたものの閉会後とあってはどうしようもない.学生たちをゲストハウスまで見送りバイヨンホテルへの途中にあるビヤガーデンへ行こうとしたところ,二次会と称して四人の女子学生たちがついてきてくれた.雑音にも等しい歌声の響かないあたりに5人分の席をとり,ピッチャーに入った生ビールをジョッキに注いでまずは乾杯.みんな元気で陽気なお嬢さんたちだ.楽しいひとときをすごし,午後11時に彼女らを見送ってホテルへ戻る.シャワーを浴びてすぐに就寝.