トンレサップ湖調査2000−02

2000年8月26日〜9月12日

(7:9月5日)


9月5日(火)シェムリアプ

 昨夜早く寝たせいか午前5時に目が覚めた.レストランがまだ開いていない時間なので調査機材をそろえておく.朝食を済ませ午前7時にホテルを出発した.同行するのは奥村さんと緑くん.生物チームはソーティングにかかりきりだし箕田さんは今日も聞き取り調査ということ.遠藤さんは昨日採集してきた水を分析するとのことだったのでクバル・スピエンから持ち帰った水の分析もお願いした.

 椰子の葉がだらりとたれ下がっている.風はほとんどない.途中の市場で水を買い込み30分後には船着き場に到着.すぐに出航する.今日のトンレサップはうねりもほとんどない.なめらかな湖面を船は走っていく.

 

 

 今日は測線1の継続観測を行うことにした.土曜日に燃料切れで引き返した測線だ.うねりがおさまったせいか湖のあちこちに漁船の姿が見える.午前8時37分に最初の測点15に到着し左舷からさっそく採泥を開始した.貝殻混じりの暗灰色泥が回収される.反対側の舷から奥村さんがCTDを投入し,緑くんは水深・水質測定にとりかかっている.最初の測点ですぐに見事なチームワークが完成した.

 

 

 さらに沖へと向かう.途中で何隻もの漁船とすれちがう.ほとんどの船はエビ漁をしているようだった.昨日見かけたような籠式漁法があるかと思えば,この船のように沈めた枝にくっついたエビを網に落とす漁法もある.測点20では表層部に赤褐色泥層が確認された.貝殻破片や炭化した植物破片もたくさん混じっている.

 

 

 だんだん対岸が近づいてくる.浸水林が目の前に大きく広がる測点23では小枝やツタがたくさん回収された.ここは乾季には陸化するところに間違いない.そこでこの測点を測線1の最終測点とし,船をチョンクニ村の船着き場へと戻すことにした.船のガソリンもなくなってきたという.まだ午前11時前だったが,ここから船着き場までは1時間はかかるし午後にはまた風が吹いてくる.ちょうどいい切り上げ時でもあった.

 

 

 充実した観測作業におふたりともお疲れのようす.心地よく揺れる線上での居眠りは心地よいことだろう.乗り物で眠るのが苦手なのでおふたりの穏やかな寝顔が少々うらやましくなる.1時間10分後に船着き場のある側の浸水林域へ入った.

 

 

 今日も観光養魚場へ立ち寄った.店の子供たちやご婦人たちともすっかり顔なじみになる.ここでまた例のジュース「?(イバラ)の道」を一本買い求めた.すると缶の反対側の面に英語で「Green Road」と書いてあるのを緑くんが発見した.「緑の道」だ.謎が解けた!

 

 

このテナガザルともなじみになったつもりだが・・・.

 

 シェムリアプに戻ったのは午後1時すぎだった.「この国はパンがうまいからピザもうまいに違いない!」.ホテルへ向かう車の中で奥村さんが提案される.卓見だった.何件かあるピザ屋の中で市場近くの道路際にあるコンチネンタル・カフェに入ってみた.欧風の調度品で統一された店内はカンボジアらしからぬシックな雰囲気がある.一枚が6ドル前後のピザ4種類とビールを頼み,待つこと30分で直径30センチほどの大きなピザが現れた.表面にたっぷりのチーズ.焦げ目からはほんのりとした湯気と香ばしい香りがあがっている.どれもうまい.味が濃いためたくさんは食べられないが間違いなくうまい.たった4枚ながら5人では食べきれないほどの量もある.残りはホテルに残っている遠藤さんへのおみやげに包んでもらう.

 食後にまずPITトラベルを訪れる.カンボジアでの親友谷川茂さんの経営するこの旅行社には,今回の調査で借用している車などの手配を頼んでいる.いい車と信頼できるドライバーを手配してくれるところだ.そこで車の手配状況や追加料金の支払いなどを確認し,ついでに緑くんの帰りの航空券のリコンファームもお願いしておく.

 夕方には緑くんのたって要望で市場に出かけた.カンボジアのドレスを作りたいという.そこでアセイさんら3姉妹が経営するいつものお土産屋へと案内した.店頭には美しい生地がならんでいる.その中からオレンジ色の生地を選ぶとすぐに寸法採りとなった.このときばかりは店内から追い出される.明日にはクメール風のドレスができあがるということ.その後もこの店には大高さんや片倉さんらをご案内しすっかり常連となった.

 

 

 部屋へ戻ってシャワーを浴び,午後7時に夕食のためロビーへと降りた.他の方々はすでにロビーに集合済み.しかし,最後に姿を現した遠藤さんが「フィ〜バ〜」と力のない声で一言.今日は水質検査がてらホテルで休んでいらしたのだが,それでも体調がよろしくないらしい.心なしか痩せたような気もする.「鼻筋が通ってきた!」との意見まであった.そこでこの日の夕食はバイヨンホテル内のレストランで済ませることにした.他の方々が明朝の便でプノンペンへ出発されるためこれが全員そろっての最後の夕食となった.

 

 

 夕食の途中でドライバーのチュアンがやってきた.奥方が無事に元気な女の子を出産したとのこと.ちょっと気がかりだっただけにわざわざ知らせてくれる彼の心配りがうれしい.夕食を終えたのが午後9時.部屋に戻ってサンプルを整理しかけたが,今朝が早かったためか午後10時には就寝.