地学実験の記録
2002年度前期(その2:5月31日〜6月14日)

5月31日:水系図と空中写真の判読(地学学生実験室)

 水系図と空中写真との判読実習を実施した.地形にさまざまな地質の情報が含まれていることを理解してもらうためだ.地学実験初めての試みになる.角間キャンパスを含む地域の空中写真,同じく地形図,そして空中写真判読器5台を準備しておいた.黒板を使って実習の意味やリニエーションの重要性についてまず説明する.


 最初に2万5千分の1地形図から水系図を作成してもらう.全員が初めてやることとあって地形の複雑なところでは谷と尾根との区別が難しかったようだ.

 全員がだまりこくって赤鉛筆を握っている.2時間ほどでおおまかながらも水系図ができあがってきた.

 引き続いて空中写真から地形として認められるリニエーションを読みとってもらう.器械を使っているだけに立体視は簡単にできたようだ.

 そして水系図と空中写真との判読結果にもとづいてリニエーションを赤鉛筆で記入してもらった.リニエーションの意味がわかってもらえたかどうか自信がないが,地形からさまざまな情報が得られることはわかったもらえたように思う.

6月7日:野外調査実習(金沢市小二又)

 前期最後の野外調査実習となるこの日は,実際の地質調査をちょっとだけ体験してもらうことを目的に小二又の金腐川で実施した.これまでの野外調査実習の総括にもなる.まず川沿いに露出する大桑層の露頭を観察してもらった.これまで見てきた地層のどれと類似点が多いのか,またどこが異なっているのかについてじっくりと観察してもらう.


 同行した研究室の学生たちが露頭登り大会を始めた.しかし誰も最上部にまではたどり着けない.露頭に無惨な傷跡だけが残った.

 続いて金腐川に入って河床を下流へ進む.川縁に露出する地層の岩相変化に注意してもらう.ついでに地辷りの説明も加えておく.

 さらに下流へと歩き,川沿いの崖に露出する高窪層の上涌波凝灰岩を観察してもらう.高窪層と大桑層との不整合関係について説明しておく.

 それからもう少し下流へと歩を進め,高窪層と大桑層とに発達するゆるい背斜構造を確認し,そして川を上流側へと引き返した.

 おしまいに鍵層になる凝灰岩を探しに小さな沢に入った.実習用の足場を作ってある沢だ.受講生たちは地層の観察などそっちのけでスリリングな崖登りを楽しんでいた.最後の滝だけはちょっと危険なため研究室の学生たちだけが登っていく.この上で目的の凝灰岩が見つかった.

 観察を終えて沢を下る.足場づたいにひとりずつ下流へと降ろしていく.手足の長い加藤君が半身をぬらしながら補助をつとめてくれた.

 そして道路を歩いてバスが待つ小二又のバス停に戻った.遠くに見える大露頭だが,ここに来るたびに小さくなっているのがなんとなくさびしい.

6月14日:貝化石の整形と鑑定実習(地学学生実験室)

 加藤さんの指導で貝化石の整形と鑑定とを行った.先月の野外実習で犀川河原の大桑層模式地から採集してきたものだ.

 
 
 
 まず,十分に乾いた貝化石から千枚通しを使って砂をおおまかに取り除く.
 
 
 
 それから歯ブラシをつかって細かい砂をていねいに取り除く.
 
 
 
 化石が割れたときには瞬間接着剤の出番となる.
 
 
 
 作業がすんだら図版を使っての鑑定作業.形を合わせてみたり放射肋を数えたり,受講生たちはちょっと苦労していたようだった.
 
 
 
 残った砂は底生有孔虫の実習材料となる.床に落ちた砂をきれいに掃除して今回の実験はおしまいとなった.そのあとは実験中に作っていた46センチケーキを賞味した