地学実験の記録
2003年度前期(その3:5月23日〜6月20日)

5月13日:野外調査実習(その4:金沢市小二又)

 前期最後の野外調査実習で小二又へ行った.大学の裏手から抜ける直通道路が工事中だったため,新設の卯辰山トンネルをくぐって20分後に現地に到着する.初夏の植生に覆われながらも露頭は健在だった.


 道路を迂回しのり面を下って露頭へ向かう.

 受講生たちには露頭の観察をまず始めてもらった.これまでの3回の実習でみてきた地層群との比較に注意をうながす.その近くでは昨年に続いて露頭登り大会が始まっていた.

 受講生たちも露頭をたたきながらだんだんと登っていく.この露頭が第2回目の実習でみた犀川の大桑層であることを説明したうえで,犀川でのこの地層が北に傾斜するにもかかわらず,ここでは南へ傾いていることを確認してもらった.

 いったん道路にあがったのちに金腐川に降りて河床を下流へ進んだ.川の水位は思ったよりも高く水も茶色に濁っていた.小さな堰堤を飛び越えてさらに下流へと向かう.

 地層が露出しているところではその岩相に注意を払ってもらう.貝化石の入った青灰色の細粒砂岩がずっと露出していた.

 川をさらに下っていく.


 青灰色の細粒砂岩はまだ続いていた.貝化石がまばらながらも入っている.

 金腐川を橋がまたぐあたりになって岩相が泥岩に変わった.そのすぐ近くには粗粒の凝灰岩も見つかった.河床には橋から捨てられたらしいテレビが3台も転がっている.

 橋をくぐってさらに下流へと歩き,川沿いの崖に露出する高窪層の上涌波凝灰岩を観察してもらう.ここで高窪層と大桑層との不整合関係について説明しておく.このあたりには何台ものテレビが転がっていた.橋から投棄されたものが流れ着いたのだろう.

 その先は高窪層の泥岩がずっと続くようになる.小さな堰堤をこえてさらに下流へ進んでいく.ここでひとりの受講生の姿が水中に一瞬かき消えた.思わぬ深みにはまったようだ.

 高窪層の青灰色泥質砂岩には白色の凝灰岩が挟在している.高窪層の傾斜が南方向ながらも大桑層よりは緩いことをこの凝灰岩で理解してもらう.

 この付近にゆるやかな褶曲構造があることを説明してから上流側へ引き返した.つい先ほど飛び降りたばかりの堰堤をよじ登る.


 そして護岸のセメント壁をよじ登って道路へ出た.昨年度,4年の細田が登れなかった壁だ.

 道路を渡って小さな沢に入った.実習用の足場を作ってある沢だから転落の危険はない.受講生たちはこの崖登りを楽しんでいたようだ.ようやくの思いで到着した露頭を観察してもらう.

 最後の観察を終えて沢を下る.技術員の陰地章仁が受講生たちを崖からひとりづつ降ろしていく.

 狭いV字型になった沢を下って平坦面に出た.

 全員がつぎつぎと沢を降りてくる.うち捨てられぬかるみになった畑をとおってふたたび道路に出る.

 そして道路を歩いて大学のバスが待つ小二又のバス停に戻った.

 

5月30日:野外調査実習(その5:金沢市卯辰山)

 好天に恵まれたため室内実験の予定を野外実習に変更し卯辰山へ出かけた.受講生にあまり見せたことのない「礫岩」の観察が目的だったが,予定していた露頭はセメントですっかり覆われている.そこで近隣にあった小さな露頭いくつかを観察したあと,奥卯辰山フィ−ルドアスレチックに全員で挑戦することになった.


 ネットにぶらさがってくぼ地を飛び越えるというもの.これは簡単.

 丸太にだきつくだけ,というもっとも簡単なもの.しかし最大の難関だった.

 「金沢城入城」.これも簡単.

 丸太の上をすべりくだるもの.これはかなり怖かった.すべてを終えて大学に戻ってきたとき,受講生たちはこれまでの野外実習ではみられなかったほどくたびれ果てていた.

6月6日:顕微鏡観察用岩石薄片の製作(その1:地学学生実験室)  

 プリントを使って岩石薄片の意味や作業手順を説明したあと,さっそく製作にとりかかってもらう.試料となる岩石は例年どおりに宝達山のカコウ岩だ.この試料を回転板上での粗擦りから初めてもらう.正規の受講生はたったの5人ながらも,研究室の新人たちや研究員たち,それにTAのふたりなどが加わって思わぬ大人数になった.


 ガラス板上での中擦りになっても混雑は続く.

 試料の片面を研磨し終えたらレークサイドセメントでスライドグラスに貼り付ける.

 引き続いて反対側の面の研磨に入る.混雑は回転板上でもやはり続いている.

 偏光顕微鏡で試料の厚さを整えながら研磨を続ける.ひとり,またひとりと作業を終えて帰宅していった.残るは3名のみ.

 そして最後のひとり.時計は午後10時をさしていた.全員が試料を作り終えて実験終了.

6月13日:顕微鏡観察用岩石薄片の製作(その2:地学学生実験室)

 前回に続いて岩石薄片試料の作成をやってもらう.実験材料は能登半島の琴ヶ浜で採集してきた玄武岩. 基質の色が黒っぽいことやカコウ岩よりも柔らかいことなどに注意をうながしてから製作にとりかかってもらった.その結果,受講生の一名が一度は失敗したものの,4時間後には全員の試料がそろった.


6月20日:顕微鏡観察用岩石薄片の鏡下観察(地学学生実験室)

 これまでの2回の実験で作成したカコウ岩と玄武岩の岩石薄片試料の鏡下観察をやってもらった.


  • Camera: Casio G.Bros GV-10, Canon PowerShot S20 and Fuji BigJob DS-270HD
  • Lens: Casio Lens 4.6mm f.2.8, Canon Lens 6.5-13.0mm f.2.9-4.0 and Super Fujinon 6.7mm f.2.8