地学実験の記録
2011年度前期(その2:5月6日〜5月20日)

2011年5月6日:野外調査実習3(金沢市大桑)

 前回の実習が雨で中断となったため,今回も同じ犀川の河原で化石採集を行った.ほどほどにいい天気のなかを午後1時に角間キャンパスをマイクロバスと公用車で出発.到着後はすぐに採集地へ移動した.犀川の水位は今日もやや高めだった.河岸の化石層が白く洗い出されていた.


 貝化石がよく採れる付近も一部が水に浸っていた.

 学生たちには化石採集にすぐにとりかかってもらった.雨が落ちてくる気配はない.むしろ蒸し暑いほどの気温だった.

 ここしばらくいい天気がつづいたにもかかわらず砂岩の表面はほどよくしめっていた.白い貝化石や生痕化石が表面に浮き出てみえるほどだ.

 前回の経験を活かして学生たちは慣れた手つきで砂岩を掘り始めた.

 あちこちから貝化石が掘り上げられる.

 下流側のグループにくらべると,上流側にいるグループは収穫が少ないようすだった.

 小さなホタテガイの化石がつぎつぎと見つかっていた.

 おおきなホタテガイの化石も見つかった.

 こわれやすいものはその周囲を手でそっと掘っていく.

 採集を初めて約2時間.学生たちはかなりくたびれてきたようすだった.

 貝化石をかたまりで掘りあげる学生たちもいた.午後3時半に実習終了.マイクロバスと公用車で角間キャンパスに戻った.

 持ってきた貝化石が乾燥するように実験室で運搬箱に広げて今日の実験終了.

2011年5月13日:野外調査実習4(金沢市大桑)

 朝方の雨もお昼前にはあがって日もさしてきた.予定どおり午後1時に学生実験室を出発.マイクロバスと自家用車2台で大桑町を流れる犀川の実習地に到着した.しかし,河床におりてみたところ,ここしばらくの降雨のため犀川の水位はかなり高かった.河床の露頭がいつもの2割くらいしか離水していない.


 狭い露頭の上で今日の実習内容を説明し,留意してもらいたいことを伝え,そのままの場所で約30分の自由観察時間にした.

 学生たちは狭いながらもいい露頭の上で観察を開始した.ハンマーとタガネを使って砂岩を掘り始める.この露頭は中新統犀川層の凝灰質砂岩.植物や貝などの化石がみつかることで知られる地層だ.

 水で洗われた露頭面には生痕化石が発達する植物化石がきれいに見えていた.

 学生たちはおしあいへしあいの状態だった.白い貝化石もあちこちで見ることができた.

 白色軽石もある.

 学生たちにとっては場所を自由にかえることすらままならないほどだった.自由観察時間を15分ほど延長する.

 観察終了後に犀川層の層位学的位置や層序,この地層でみつかる化石などから推定される当時の自然環境などについて概説しておく.

 全員で下流側への移動した.

 下流側に露出するのは下部更新統大桑層の下部.泥質の青灰色細粒砂岩には貝化石こそないが生痕化石が発達する.大きな植物化石もよくみつかる.

 ここで犀川層と大桑層を例に整合と不整合の意味について説明し,両層の不整合面の発見を学生たちにやってもらう.

 学生たちは不整合の意味がよくつかめていないようだった.いくらうながしても最初の位置から動こうとしない.

 そのうち何人かが犀川層が分布する上流へ向かって移動し始めた.

 足下の露頭をときおり掘りながら岩相の変化を確認する.

 何名かは不整合面をこえてさらに上流側に移動していく.

 大桑層の分布域でぐずぐずしている学生たちもまだまだ多い.

 学生たちを集めて不整合面の位置を説明し,岩相の違いや不整合の意味などをあらためて解説しておく.

 その後しばらくは大桑層側で自由観察時間.サメの歯の化石が見つかっていた.地学実験では初の発見だ.

 午後3時半に現地を出発して角間キャンパスに戻った.

2011年5月20日:野外調査実習5(金沢大学角間キャンパス)

 今回は角間キャンパスの中での地質調査実習.朝からとてもいい天気だった.午後1時すぎに地学学生実験室を全員で出発する.


 バス通りにそった歩道を若松方面へ歩いてくだる.

 コンビニエンスストアをやや過ぎた右手にある沢へ入った.まだ5月ながら緑がすでに濃い.

 この沢には下部更新統大桑層の細粒砂岩が連続して露出する.もっとも露出のいい部分でまず自由観察時間.

 学生たちは沢を飛び越えて露頭にとりついた.露頭の表面に発達する生痕化石について簡単に説明しておく.

 やや下流側で観察していた学生たちが二枚貝の印象化石をみつけた.この露頭でははじめての発見だ.

 小さな二枚貝の印象化石やウニの印象化石も見つかっていた.

 最初の露頭を離れて次の露頭へ移動した.沢沿いのちいさな崖をよじのぼっての移動.

 ここにも同じ大桑層の細粒砂岩が露出する.風化がいちじるしいため黄褐色になっている.

 ここでも二枚貝の印象化石がつぎつぎと見つかっていた.

 ここでバス通りに引き返す予定だったが,何人かの希望もあって沢をつめてキャンパスへ戻ることにした.

 この沢へ入るのは3年ぶりくらいになるだろうか.かつての踏み分け道は完全になくなっていた.ときおり学生を待たせて安全なルート探しに専念することになった.

 ずぶずぶの湿地帯を踏み越え・・・

 狭い倒木の下をくぐり抜け・・・

 沢沿いの急な斜面をはいあがる.

 息を切らしながらも学生たちはちゃんとついてきた.笹藪の中をはいあがってくる.うしろのほうにいる学生たちは最後尾の高原さんにまかせることにした.

 竹林の中をさらにのぼっていく.ふかふかの落ち葉が歩きにくくて意外とやっかいだ.

 竹林の中をさらにさらに歩いていく・・・.

 角間キャンパスを見おろす尾根にやっと到着した.

 笹藪の中をこぎわけながらテニスコートへくだっていく.

 残りの学生たちもつぎつぎと斜面をおりてきた.全員がここで無事に集合.

 総合教育2号館の地学学生実験室へ引き返して今日の実験終了.

  • Camera: Pentax Km, Pentax Optio W60 and Pentax Optio W30
  • Lens: SMC Pentax DA-L 18-55mm f.3.5-5.6, SMC Pentax Zoom 5-25mm f.3.5-5.5 and SMC Pentax Zoom 6.3-18.9mm f.3.3-4