地学実験の記録
2014年度前期(その2:5月16日〜5月23日)

2014年5月16日:野外調査実習3(金沢市大桑)

 小雨がいまにも降ってきそうな天候だったが予定どおり犀川での野外実習に出かけることにした.学生実験室で今日の実習内容について簡単に説明し,大学の大型バスに乗り換えて角間キャンパスを出発した.  


 自然科学研究科のキャンパスをとおりぬけて田上方面へ.空がだんだんと明るくなってきた.

 山側環状道路から小立野の台地へバスは走る.

 涌波のトンネルをぬけて犀川大通りへ.

 涌波1丁目付近で大桑簡易野球場がある大桑町の犀川へ小径をおりる.

 犀川の水位は例年になく低かった.露頭がほとんど離水していて実習にはもってこいの状況だった.おんまかいがら橋付近でバスを降りたところで学生たちに現在位置を確認してもらい,それから上流の露頭へ向かって移動した.

 この付近には中新統犀川層が広範囲に分布する.学生たちには20分間の自由観察にまずとりかかってもらった.地層を構成する物質や,地層に含まれるものに注意をはらってもらう.ひとりの学生が小さなホタテガイの化石をすぐにみつけた.

 別の学生も二枚貝の化石をみつけだしていた.露頭一面に散在する白色軽石の存在にはほとんどの学生が気づいていたようだ.

 炭化した植物の化石も露頭でめだつ存在だ.

 学生たちは広々とした露頭一面にちらばって観察をつづけた.

 チューブ状の生痕が発達する植物化石もある.おおきなノジュールも露頭で目立つ存在だ.

 自由観察時間の終了後,中新統犀川層の岩相や,含まれる化石などから古環境を推定する方法を説明し,それから下流に向かって全員で移動した.

 おんまかいがら橋付近の河床には更新統大桑層の下部がやはり広範囲にわたって露出する.ここで大桑層の岩相について手短に説明し,犀川層と大桑層との年代の違いを説明したうえで,学生たちに両層の不整合を探してもらうことにした.

 大桑層下部には貝化石がほとんどふくまれない.細〜中粒凝灰質砂岩の犀川層と違って大桑層下部は極細粒の砂岩や泥質砂岩から構成される.

 学生たちは露頭を叩きながら上流へと移動していった.実習の内容があまり理解できていない学生も中にはいたようだ.

 学生たちは犀川の瀬をこえて上流側へ移動していった.

 両層の不整合面にて,岩相の違いや浸食の程度の違い,そして基底礫岩の存在などを学生たちに確認してもらう.

 さらに下流へ移動し,大桑層下部に挟在する火山灰層の観察も行った.これは白色細粒のOV凝灰岩.

 そして同じく白色細粒のOL凝灰岩.

 犀川の水位が低いおかげでふたつの凝灰岩をじっくりと観察してもらうことができた.大桑層下部に発達する生痕化石もきれいに見えていた.

 学生たちが河原でひろったいろいろな礫などのコレクション.

 学生たちには制限時間まで大桑層下部でのサメの歯の化石探しを楽しんでもらった.しかし,誰ひとりみつけることはできなかったようだ.

 午後3時半に大学の大型バスで角間キャンパスへ引き返した.きた道をそのままひきかえす.

 角間キャンパスの中を総合教育棟へ移動する.

 角間中央の交差点付近では路線バスが故障で立ち往生していた.午後4時前に総合教育棟に到着.

 実験室での簡単なまとめを終えて今日の実験が終わった.

2014年5月23日:野外調査実習4(金沢市小二又)

 大学のバスを使っての野外実習の最終回.これまでの野外実習の総括として角間キャンパスのすぐ北となる金沢市小二又に出かけた.学生実験室に午後1時に集合.実習内容の説明ののちに全員で大学のバスに乗り込んだ.


 空には雲がかかっていたが戸室山をかろうじて見ることができた.バスをいったん停めて戸室山の崩壊地形についてここで説明する.

 新しくなった県道をさらに走って小二又の実習地に向かう.

 大桑層のかつての大露頭は植生にすっかり被われていた.大学を出て5分ほどで最初の露頭に到着した.

 まずは現在地の確認から.その後,金腐川沿いの露頭を学生たちに川越しに見てもらい,地層の傾斜方向を確認してもらった.かつては大桑層が露出するいい露頭だが,いまは植生にすっかり被われている.地層が南へ傾斜するのが植生のムラで確認できる.

 地すべり地形を説明しながら金腐川沿いに北へ移動した.

 途中にある林道沿いの露頭を学生たちに観察してもらう.最初は自由観察の時間.

 ここに露出するのは貝化石を含む大桑層中部の青灰色細粒砂岩.この地層が犀川の大桑層とよく似ていることを確かめてもらう.

 県道をさらに北へと移動した.上涌波凝灰岩から洗い出された軽石の山の横を歩きすぎる.

 県道の途中で金腐川の河床に降りた.おっかなびっくりながらも学生たちは金網をつたいながら降りてくる.

 河床に露出する露頭の観察.ここには大桑層下部の青灰色泥質砂岩が露出する.岩相の変化を学生たちにここで確かめてもらう.

 学生たちは露頭よりも沢の光景に夢中になっていた.

 露頭を観察するはずが,いつのまにか水生昆虫の観察になっていた.

 県道にもどってさらに北へ歩く.

 このあたりの河岸では上位の大桑層と下位の高窪層の不整合が観察される.簡単には近づけない露頭のため対岸からの観察のみにとどめた.金腐川にはカモが二羽浮かんでいた.

 県道をわたって反対側にある道路際の露頭へ移動.

 植生ごしながらも,ここでも大桑層と高窪層との不整合を観察することができる.

 高窪層の最上部となる上涌波凝灰岩.白色軽石を多量に含む白色粗粒の凝灰岩だ.

 そのすぐ近くでは大桑層基底部の灰白色砂質泥岩をみることができる.

 県道をさらにあるいて小二又の集落に入った.

 山間にある静かな集落だ.

 集落を抜けて最後の露頭へ移動.女子たちはとても元気.

 カガライトの採石場をとおくから観察した.この大露頭でこれまでの層序を総括しながら確認する.

 近くの道路際にある露頭へ移動.

 ここにも上涌波凝灰岩の軽石質凝灰岩が露出する.さくさくの手ざわりやがさがさの軽石をここで観察してもらった.

 大学のバスに乗って角間キャンパスへ.

 新しい県道はやはり快適だった.

 小二又の露頭を出発して10分ほどでキャンパスに戻ってきた.

 学生実験室でまとめの説明を行って今日の地学実験も無事に終わった.

  • Camera: Pentax Optio WG-3 GPS
  • Lens: SMC Pentax Zoom 4.5-18mm f.2.0-4.9