地学実験の記録
2015年度後期(その2:10月30日〜11月13日)

2015年10月30日:野外調査実習4(金沢市小二又)

 朝から雨模様の日だった.野外へ行くかどうか迷うところだったが,午後から曇りという予報をたよりに予定どおり小二又への野外実習に出かけることにした.学生実験室で今日の予定と注意点などを学生たちへ伝え,それから大学の大型バスに乗って小二又手前の三叉路へ移動した.ここでバスを降りて今日の実習を開始した.学生たちにまず現在地を確認するように伝える.


 最初の露頭は金腐川対岸にある.露頭ができた当初はここでじつにきれいな大桑層の砂岩をみることができたが,いまは植生にすっかり覆われてしまっている.学生たちにはここで地層の傾きにのみ留意してもらった.これまでに観察した地層はいずれも北傾斜だったが,ここでは地層が南へ傾斜していることが植生でおおまかに判断できる.

 金腐川沿いの道路を北へ歩く.その途中で典型的な地すべり地形について説明しておく.

 2番目の露頭はこの林道沿い.ここにも大桑層の砂岩が露出する.

 学生たちに10分ほどの時間をあたえてこの露頭を観察してもらった.これまでの実習で観察した地層のどれに相当するかも考えてもらった.

 白い貝化石が散在する細粒砂岩がここに露出する.この岩相で学生たちはすぐに犀川の大桑層を思いだしてくれたようだった.

 道路を北へさらに歩く.

 3番目の露頭は金腐川の河岸となる.護岸を伝い降りる必要があるところなので,学生たちの希望者のみを露頭へ案内した.

 4名の男子学生がついてきた.彼らとともに護岸にそって露頭へ移動した.

 ここには大桑層下部の砂質泥岩が露出する.化石などはまったく含まれていない.この岩相が,犀川で観察した不整合直上のものと似ていることを学生たちに確認してもらった.

 道路で待っている学生たちへひとかかえの泥質砂岩を持ち帰った.

 4番目の露頭はこの道路のカーブに沿った崖になる.

 ここでも学生たちに10分ほどの自由観察時間をあたえた.

 この露頭の右のほうにも青灰色の砂質泥岩が露出する.

 地層が南へ傾斜していることがこの露頭でも観察される.

 砂質泥岩の直下には小さな白色軽石を多量に含む黄褐色凝灰岩が位置する.ここで凝灰岩の成因について学生たちに説明する.

 道路を小二又の集落方向へ歩いた.その途中で地層の傾きについて解説しておいた.

 小二又の集落を通り抜ける.

 バス停付近からは採石場の大露頭群がとおくに見える.

 道路沿いの露頭が5番目の観察地点となる.ここには高窪層最上部の上涌波凝灰岩が露出する.

 比較的大きな白色が多量に含まれる弱固結凝灰岩.学生たちは凝灰岩の手ざわりや軽石のもろさを実感してくれた.

 実習の最後は採石場の大露頭をとおくみながらの層序のまとめ.

 この露頭で今日のルート沿いの地層をひととおりながめ層序を理解してもらった.

 午後3時半に大学のバスに乗車して角間キャンパスへ引き返した.

 午後3時45分にキャンパス着.学生実験室でまとめとやって今日の実験が終了した.

2015年11月6日:野外調査実習5(金沢市釣部の石川ライト工業事業所内の露頭群)

 大学のバスを使っての野外実習は今日で最終回になる.今回の実習では石川ライト工業のご厚意で同事業所の露頭を観察させていただくことになった.学生実験室での実習内容の説明のち,午後1時過ぎに角間キャンパスを出発した.前回の実習地だった金腐川に沿って移動ののち,午後1時半に同社の事業所に到着した.


 担当の小村さんのご案内でバスのまま事業所の中を露頭へ移動した.移動中にも凝灰岩のみごとな露頭をみることができた.

 採石が進められている事業所東部の大露頭前でバスを降りた.

 上涌波凝灰岩のみごとな露頭が連続している.

 小村さんの案内で凝灰岩の露頭とは反対側となる斜面をのぼった.はじめての現場とあって学生たちは足をとられながらもあとから斜面をのぼってきた.

 この斜面の最上部には大桑層最上部の黄褐色砂岩から同中部の青灰色細粒砂岩にかけての層序が観察される.

 青灰色細粒砂岩には白い貝化石が散在する.共役断層も露頭面でみつかる.

 液状化のため変形した凝灰岩層や逆断層の存在もこの露頭で確認できる.

 学生たちは新鮮な露頭面や逆断層をしばらく観察していた.

 この露頭から北にやや離れたところにもみごとな露頭があった.

 青灰色細粒砂岩に発達する生痕化石と散在する白い貝化石.

 ここでは逆に傾斜する低角度の逆断層が観察された.最上部には凝灰岩層もある.

 斜面最上部での観察をおえて,下位の地層群をみるため斜面をくだった.

 斜面の途中には貝化石の密集層があった.

 他の地域ではあまりみられないような細礫の層がここには挟在する.巣穴の痕を主体とする生痕化石も露頭面でめだつ.

 この直下には下涌波凝灰岩が位置していた.淘汰が比較的わるい白色軽石から構成される厚層凝灰岩だ.含まれる白色軽石の円磨も不良である.その直下には大桑層下部となる砂質泥岩があった.

 出発地点だった大露頭前まで引き返した.

 それから上涌波凝灰岩がきれいに露出する露頭群の中を歩いた.

 ぬかるんだ地面に学生たちは足を取られているようだった.

 通路の左右にみごとな露頭が連続する.

 通路の末端あたりに上涌波凝灰岩の下位となる高窪層の青灰色砂質泥岩があった.白色凝灰岩の薄層が2枚挟在する.

 急な斜面を沢までくだった.沢の中からはとおくに斜面最上部の大桑層をみることができた.

 ここで小村さんにこの事業所での作業について,採掘した軽石の利用方法や出荷先などについて解説していただいた.

 斜面をひきかえして上涌波凝灰岩の露頭へ移動した.

 切られたばかりの露頭面はほんとうにきれいだった.火砕流堆積物と想定されるこの凝灰岩の内部構造がよくわかる.

 低角度の斜交層理やハンモック構造とおぼしき堆積構造が発達する.

 上涌波凝灰岩の観察を終えてバスの待つ駐車場にひきかえした.

 ここでバスに乗車して事業所の工場へ移動した.

 工場では,採掘した軽石の洗浄や分級,その後の袋詰めの作業について担当の方に解説いただきながら見学し,午後3時すぎに事業所をあとにした.その後は角間キャンパスの実験室にて,今日のおさらいとまとめの作業.午後4時に実験終了.

2015年11月13日:野外調査実習6(金沢大学角間キャンパス)

 野外での地質調査実習の最終回は角間キャンパスで実施した.学生実験室での説明ののち,学生たちと角間キャンパスの坂を若松方面へ歩いて移動した.


 すぐ右手の法面に露頭がある.しかし,ここ数日の雨のため地面がぬかるんで接近できなかったため,学生たちにはこの場所のみを記録しておくように指示した.

 角間坂をさらに歩いてくだっていく.サークルKが左手にみえてくる.

 そのすぐ先にあるポンプ室のところで沢に入った.

 11月も半ばとあって沢の植生はほとんど枯れていた.

 沢沿いの小径を学生たちと奥へはいっていく.

 たまたまあった倒木が学生たちにはいいアトラクションの場を提供してくれている.

 この沢では右手に露頭が連続する.

 ここに露出するのは大桑層中部の青灰色細粒砂岩だ.巣穴痕などの生痕化石が露頭面に発達する.

 ここでしばらくの自由観察時間とした.半分ほどの学生たちは沢をこえて露頭面にとりついていた.そんな学生たちには露出するのがこれまであちこちでみてきた大桑層中部であることを確認してもらった.

 沢をさらに奥へ移動した.ちょっとした段差を越えたところに次の露頭がある.

 ここにも大桑層中部の細粒砂岩が露出するが,露頭前面が強い風華のため黄褐色になっている.

 ここでも自由観察時間をもうけた.学生たちは貝の印象化石をすぐにみつけだしていた.

 露頭面にのぼったり転石を叩いたりと学生たちの観察がしばらくつづく.

 前期に訪れたときとはことなり,植生がほとんどなくなっているおかげで観察にはいい条件だった.

 きれいな二枚貝の印象化石がみつかったりもする.

 観察終了後はやってきた沢をそのままひきかえすことになる.途中にある段差ではTAの山本君が補助をつとめてくれる.

 沢沿いの植生の中を歩いてポンプ小屋へ引き返した.

 学生たちは足早に歩いて行く.

 ようやくたどりついたポンプ小屋でひと休み.

 それから角間の坂をのぼって総合教育棟へ引き返した.

 角間キャンパスの紅葉はほぼ終わりをつげていた.

 斜面に作られた階段をのぼって総合教育棟へ.

 実験室に戻ってきたのは午後2時半すぎだった.その後はこれまでの6階の地質調査実習の結果を地形図と野帳にまとめてこの日の地学実験が終了した.午後4時になっていた.

  • Camera: Pentax WG-3 GPS, Pentax Optio WPi and Pentax K-7
  • Lens: SMC Pentax Zoom 4.5-18mm f.2.0-4.9, SMC Pentax Zoom 6.3-18.9mm f.3.3-4.0 and SMC Pentax DA 18-55mm f.3.5-5.6 AL