地学実験の記録
2020年度第3クォーター(その3:11月13日〜11月27日)

2020年11月13日:地質調査実習3(金沢市大桑町)

 今年度の地学実験はじめてのいい天気だった.学生実験室での説明ののちに,大学の大型バスで金沢市大桑町の犀川中流へ学生たちと移動した.角間キャンパスの紅葉はそろそろ終わりに近づいていた.


 田上を通過し山側環状道路をとおって小立野台地へ.

 大桑町にある簡易野球場あたりでバスを降りる.ここで学生たちには現在地をまず確認してもらう.

 それから犀川中流河床の野外調査実習地へ移動した.

 犀川の水位はまれにみるほどに低かった.河床の露頭が広々と離水していた.そこにはすでに到着していたGS科目地学の田中君の姿もあった.

 ここに露出するのは中新統犀川層だ.学生たちにはこの地層をまず自由に観察してもらうことにした.

 犀川層は凝灰質の砂岩から構成されている.

 白色軽石や炭化した植物遺骸などが含まれる.

 おおきく離水した露頭を学生たちは自由に動き回っていた.生痕化石が発達する植物遺骸もあちこちでみつかる.

 二枚貝やツノガイなどの化石もふつうにみつかる.20分ほどの自由観察時間ののちに犀川層について解説し,岩相や含まれる化石から犀川層堆積当時の自然環境を考えてもらった.

 全員で下流側へ移動した.このあたりには大桑層下部の泥質砂岩が分布する.

 ここでも10分ほどの自由観察時間を学生たちにあたえた.みたばかりの犀川層との岩相や含有化石のちがいに気をつけてもらった.

 炭化植物遺骸はここにも含まれているがサイズがずっと小さくなる.含有量も少ない.表面の黄色い部分にも留意してもらう.

 観察後に地層の整合と不整合について説明したうえで,犀川層と大桑層との不整合を学生たちにさがしてもらうことにした.

 河床を上流側に引き返していった学生たちは,しばらくのあいだは右往左往していたが,ほぼ全員が不整合付近にあつまっていた.

 授業の後半は田中君の指導による犀川での砂金採集実習だった.彼が採集方法についてまず説明してくれる.

 TAの黄さんによる実技指導もやってもらう.

 その後,学生たちは数人のグループにわかれて砂金の採集実習に取り組んだ.

 砂金が残っていそうな河床のへこみの粗粒堆積物をスコップで掘りあげる.

 掘り出した堆積物を砂金採集用の椀に入れて水洗いする.

 露頭でみつかる断層面を埋積した堆積物を掘ったりもする.

 学生たちはこの作業をおおいに楽しんでいたようだった.

 おさらい教材用の写真を撮っておくためここでドローンをあげた.

 砂金採集をつづける学生たちの姿が河床にみえる.

 犀川層の露頭に刻まれた水路の形状がよくわかる.

 犀川層と大桑層との不整合あたり.

 上空からみると岩相や地形のちがいがよくわかる.

 上流側からみた両者の不整合あたり.

 学生たちは砂金の採集をずっとつづけていた.

 グループごとに思い思いの場所で作業にとりくんでいる.

 手前の流路グループと奥の断層面グループとに分かれているのがよくわかる.

 掘って,洗って,拾い出して,の作業の繰り返し.

 砂金の採集に集中しすぎたのか・・・ここでふたりがこけた.

 広々と離水した露頭にはノジュールにかりかかった炭化食物の密集層もみつかった.

 1時間ほどの作業ののちに砂金採集が終わった.それぞれにいくらかの砂金を採集できたようだった.

 駐車場で待っていてくれた大学のバスにひきかえす.

 そのまま角間キャンパスへ.

 学生実験室に到着したのは午後4時20分だった.今日のまとめを手短にすませて実験終了.

2020年11月20日:地質調査実習4(金沢市小二又町)

 昨日までの好天がうそのような大雨になった.野外調査実習ができるような天候ではなかったが,今学期最後の野外実習ということもあり,バスの車窓から見学してもらうつもりで角間キャンパスを出発した.


 戸室山の崩壊地形もみてもらうつもりだったが,低くて厚い雲のために山体はまったくみえない.

 キャンパスを出て10分ほどで金腐川上流の最初の露頭に到着した.強い雨のため車内で露頭があるあたりを示しながら化石を含む細粒砂岩が分布することを説明するにとどめた.3つ目の露頭ではバスから降りてここに露出する軽石凝灰岩を採集して学生たちにみせておいた.

 小二又のバス停近くの4つ目の露頭では学生たちにもバスを降りてもらい軽石凝灰岩の岩相をみてもらった.

 雨はやや小降りになったが傘をさしての観察は公立がわるい.

 このあたりにはやや不気味なかかしが多い.学生たちはむしろかかしに気を取られていたようだった.

 軽石凝灰岩の上に細粒砂岩がのっている巨大露頭を遠目ながらも学生たちにみてもらい,それから小二又をあとにした.

 角間キャンパスへひきかえす途中にあるD駐車場からキャンパスの眺めをみてもらった.その後,総合教育2号館の地学学生実験室で地質図について解説し,学生たちにはこれまでにみた露頭すべてを自分なりに地質図としてまとめてもらった.

 学生たちに送ったおさらい画像.昨日のうちに写真はとってあった.

 戸室山の崩壊地形がわかる画像.写真は同じく昨日のもの.


2020年11月27日:古生物学実習(総合教育2号館地学学生実験室)

 今学期の最終回となる今日のの地学実験は,犀川の大桑層で学生たちが採集した貝化石の整形と鑑定の実習を行った.貝化石の成型方法を実物映写機などを使って説明し,それからすぐに作業にとりかかってもらった.基本的な道具は千枚通しと豚毛の歯ブラシだけだ.


 学生たちはそれぞれの実験台で作業を開始した.最終回のせいなのか今日は全員が出席していた.

 すっかり乾燥した貝化石から千枚通しを使って化石まわりの砂岩をまずかきとる.

 その後に豚毛の歯ブラシを使って化石についた砂を取り去る.

 きれいにした貝化石のスケッチをとり,図鑑とてらしあわせながら化石を鑑定する.今年はなぜかツノガイがたくさんとれていた.

 これで今学期の地学実験の予定すべてが終了.第2クォーターにしてもこの学期にしても,とにかく天気にめぐまれない学年だった.

  • Camera: Ricoh WG-5 GPS, Casion EX-F1, Pentax Optio WG-2, DJI Mavic Mini, DJI Mavic Pro
  • Lens: SMC Pentax 4.5-18mm f.2.0-4.9, Casio Zoom Lenx